フェイスブックの友達申請は「ハラスメント」になり得る?

セカンダー・カーマニ、BBCニュース(パキスタン)

Sharmeen Obaid-Chinoy

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フェイスブックでの友達リクエストはハラスメントになり得るのか。パキスタンの映画監督の発言が議論を呼んだ。

パキスタン人のアカデミー賞受賞監督シャルミーン・オベイド=チノイ氏の妹が病院で診療を受けたことが、論争のきっかけだった。担当医師が診察後、監督の妹に、フェイスブックの友達申請を送ったのだ。

オベイド=チノイ監督はこれに強く反発し、ツイッターで怒りのツイートを連投した。すると、ハラスメント(嫌がらせ)の定義についてソーシャルメディアで激しい議論が沸き起こった。

Tweet by Sharmeen Obaid: "There are zero boundaries in Pakistan! Lat night my sister went to AKU emergency and the doctor who tended to her tried to add her on Facebook."

画像提供, Sharmeen Obaid / Twitter

オベイド=チノイ氏はツイッターで、「パキスタンには、越えてはならない一線などない! 妹が昨夜、急患でアガ・カーン大学病院に行ったら、診察した医者が妹をフェイスブックの友達にしようとした。いったいどうしたら救急患者を診る医者が、女性患者の情報を基にそフェイスブックの友達に追加しても良いと思えるのか、よく理解できない。倫理観がない」と投稿した。

Tweet by Sharmeen Obaid: "I don't quite understand how doctor tending tow emergency patients thinks it's OK to take a female patient info and add her on Facebook! Unethical.

画像提供, Sharmeen Obaid / Twitter

「この医者にとっては不幸なことに、相手にした女たちと家族が悪かった。絶対に報告する。ハラスメントを止めないと!」とツイートした。

Tweet by Sharmeen Obaid: "Unfortunately the doctor messed with the wrong women in the wrong family and I will definitely report him. Harassment has to stop!"

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パキスタンの女性蔑視を暴く作品も非難され

オベイド=チノイ監督は、フェイスブックの友達リクエストを「ハラスメント」だと呼んだ。これに対して多くのパキスタン人は、監督が過剰反応していると強く反発した。一方で、監督を擁護する人たちは、監督批判に使われる激しい罵倒表現は、批判する側の女性蔑視をあらわにするものだと主張した。

オベイド=チノイ氏を特に強く批判した1人は、ジャーナリストのアリ・モイーン ・ナワジシュ氏だった。同氏はフェイスブックで、ソーシャルメディアの友達申請とハラスメントを同一視するのは「ばかげている」と投稿した。さらに、「次は何だ。ペンを借りるのもハラスメントで、誰かを3秒以上見たら、ハラスメントになるのか???」とも書いた。

ナワジシュ氏はまた、監督のせいで「ハラスメントの本当の被害者が軽んじられている」とも述べ、オベイド=チノイ氏が「パキスタンの名を汚している」と批判した。

ナワジシュ氏はその後、この医師がチノイ氏のツイートのせいで解雇されたと主張したが、複数情報によると、カラチのアガ・カーン大学病院が内部調査を行う間、同医師は停職処分になった。

オベイド=チノイ監督は、「名誉殺人」や酸攻撃の被害者についてのドキュメンタリーで高く評価されてきた。その一方で、過去にも同じように「パキスタンの恥をさらす」などと非難もされてきた。パキスタン社会の一部に広がる、女性をおとしめる暴力的な風習を暴く作品をめぐり、パキスタンの「裏切者」と非難されたこともある。

監督のツイートを機にこうした批判が再燃し、チノイ氏はパキスタンの国際的なイメージを傷つけていると繰り返し非難された。

一部の人たちは、「相手にした女たちと家族が悪かった」という監督の表現が、まさに彼女のエリート主義を表していると批判した。これに対して監督はその後、「うちの家族の女性たちは強い」という意味であって、「特権意識や権力意識を示そう」としたのではないと説明した。

しかしそれでも、ツイッターでの監督攻撃は収まらなかった。監督が他の男性と写った写真を投稿する人たちもいた。ハラスメントを批判しながらこうした写真を撮るチノイ氏は偽善者だというのが、その言い分のようだった。

「@SaithAbdullah99」さんは、「シャルミーン・オベイドの体の半分がこのハリウッド俳優の体に触れているのに、はげの医者が友達申請を送ってくると、嫌がらせされたと感じるんだ」と書いた。

Tweet - a photo of the filmmaker with Hollywood star Matt Damon and the text: "Half of Sharmeen Obaid's body is touching this Hollywood actor but if a bald doctor sends her a friend request she feels harassed."

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オベイド=チノイ氏に友達リクエストを送るようみんなに促す、フェイスブックのページも立ち上がった。他にも男女を問わず大勢が、友達リクエストが嫌がらせになるのかと疑問視した。

俳優のハムザ・アリ・アバシ氏は、「有名になる前から、たくさんの女性がフェイスブックで友達リクエストをしてきた。たまたま知り合ったから。でもそれを『嫌がらせ』だと言って責めたことはない」とツイートした。

Tweet from Hamza Ali Abbasi: "Even before fame, had lots of women who added me on FAcebook because they randomly met me, didn't go around pursuing "harassment" charges against them.

画像提供, Hamza Ali Abbasi / Twitter

それに対して、別の人が「お願いだから理解して。患者は、医者の守秘義務尊重を信用している。医者はその信頼を裏切ってはいけない」と反論したところ、アバシ氏は「お願いだから理解して。それはハラスメントじゃない。大騒ぎに仕立てて、この男性をクビにするほどのことでは決してない」と返した。

しかし新聞のコラムやソーシャルメディアで、オベイド=チノイ氏を擁護する人たちもいた。たとえば作家ビナ・シャー氏はBBCに対して、監督に投げつけられた「暴言や罵倒」の激しさは決して意外ではないと話した。

「(父権主義と)戦おうとするればいつでも、ただちに反発される」と、シャー氏は述べた。

監督はその後、「今回の議論は残念ながら、女性の安全や抑制の利かない非道徳的な行い、それにハラスメントから大きくそれてしまった」とコメントした。

また、渦中の医師が妹に対して「とてもプライベートな部分の検査」を行った後、フェイスブックで妹の写真にコメントをし、友達リクエストを送ったと明らかにした。

オベイド=チノイ監督も日常的に「知らない人から友達リクエストを送り付けられている」ものの、今回の出来事は「患者と医師の関係を著しく侵害した」と考えたと説明した。

パキスタン医科歯科協議会はBBCに対して、医師の倫理ガイドラインにはソーシャルメディアについて明確な規定はないものの、「専門家としての立場を利用して、患者やその配偶者や近親者との間に、感情的あるいは性的な関係を追求することは、決して許されない。強要するのに利用されてはならない。患者やその配偶者、近親者がその対象だ」と述べた。

問題の医師の名前は公表されていない。しかしカラチの別の病院から仕事のオファーがあったという情報もある。

この病院はフェイスブックで、「くだんの医師は先日、フェイスブック上で元患者に友達リクエストを送り、ハラスメントという理由で解雇されたました。我々にとって、これは性的嫌がらせに当たりません。医師の連絡先を知らないため、もしどなたがご存知ならこのメッセージを本人に転送してください。この病院の経営陣は、これまでと同じような仕事内容と賃金水準で、当院の救急病棟で常勤医師として採用したい考えです」と声明を出した。

Facebook post from Hashmanis hospital offering the doctor a job

画像提供, Hashmanis Hospital / Facebook