米ミネソタ州、FBIが捜査を妨害と 移民当局職員による射殺事件

たくさんの花束が道路脇に積もった雪の上に置かれている。オレンジ色のシャツとジーンズを身に着けた人が花を置いている。近くでは人々が並んで写真を撮るなどしている

画像提供, Eloise Alanna/BBC

画像説明, 発砲があった現場付近では、死亡した女性を追悼して人々が花束がささげている(米ミネアポリス)

マデリン・ハルパート(ミネアポリス)

米ミネソタ州ミネアポリスで移民税関捜査局(ICE)職員が女性を射殺した事件で、同州当局は8日、連邦捜査局(FBI)によって同州の捜査が妨害されたと主張した。一方、J・D・ヴァンス副大統領は、この事件の捜査は連邦当局の担当だと述べた。

この事件をめぐっては、ICE職員の発砲は正当防衛だったとするドナルド・トランプ政権と、女性はまったく危険を感じさせなかったとする地元当局との間で、主張が食い違っている。

ミネソタ州の犯罪捜査局(BCA)によると、FBIは当初、州当局との共同捜査に同意していた。その後、方針を転換し、州側が資料や証拠にアクセスするのを認めなくなったという。

BCAトップのドリュー・エヴァンス氏は声明で、必要な資料や証拠すべてにアクセスできないため、BCAは捜査から「不本意ながら撤退した」とした。

同州のティム・ウォルズ知事も、州当局の捜査への関与をドナルド・トランプ政権が妨害していると非難。8日の記者会見では、連邦政府には公正な捜査は無理だと懸念を示し、「捜査からミネソタが外されたように感じている」、「公正な結果を得るのは極めて難しいように思える」と述べた。

一方、ヴァンス副大統領は同日、今回の事件の捜査は連邦当局の担当で、地元当局が訴追に関わるのは前例に反すると記者団に話した。

FBIは、この事件を捜査すると発表している。

アリゾナ州立大学のエドワード・マグワイア教授(犯罪学)は、グッドさん殺害事件の捜査から州当局を排除することは、市民の信頼を損なう可能性が高いと指摘する。

「犯罪学的な見地から言えば、今回のような事件で管轄権を主張するのは、法的要件よりも、捜査をコントロールし、その結果の形を作ろうとする政治的努力という面が強い」

ウィスコンシン大学法科大学院「ステート・デモクラシー・リサーチ・イニシアティブ」の法律家、ブライナ・ゴダーさんによると、州当局が捜査から外されたとしても、女性を射殺した連邦職員を州当局が刑事訴追することは可能だという。

映像からわかること

動画説明, 【検証】米移民当局職員による射殺事件、目撃者の動画からわかること

国土安全保障省のクリスティ・ノーム長官は、ICE職員が車を運転していたルネー・ニコール・グッドさん(37)を複数回撃ったことについて、彼女が車で職員をひこうとしたからだと主張している。

この事件の映像では、ICE職員らが道路中央で停まっていた車に近づき、運転者に車外に出るよう告げている。職員の1人は運転席側ドアのハンドルを引っ張っている。

車が職員から離れて走り去ろうとした時、職員の1人が運転者に銃を向け、数発の銃声が聞こえる。

車はその後、その職員から離れて進み、道路脇で衝突している。

現場などでデモ

事件現場では8日も、積もった雪に血痕が残っていた。人々はグッドさんを悼み、ろうそくやバラの花を並べた。

何百人もが1日中、デモを繰り広げ、ICEを罵倒するなどした。

ミネアポリス銃撃事件の現場近くで抱き合う男女

画像提供, Eloise Alanna/BBC

画像説明, 現場付近では地域住民らがグッドさんを追悼した

ミネアポリスの連邦ビルにもこの日朝、数十人の抗議者らが集まった。武装した当局者らが警戒するなか、抗議行動は全体的に平和だったが、参加した住民らはグッドさんが殺されたことへの怒りを口にした。

連邦ビルの前にいたギャヴィンさんは、「人を殺しておいて逃げることなど許されない。行動には結果が伴わなければならない」と話した。

詩人でギタリスト

グッドさんを知る人によると、彼女は詩人でギタリストで、ミネアポリスに引っ越してきたばかりだったという。

母親ドナ・ギャンガーさんは現地紙ミネソタ・スター・トリビューンに対し、グッドさんはICE職員らと向き合っていた間、「おそらくおびえていた」はずだと話した。

「彼女はすごく思いやりがあった」、「ずっと人々のことを世話してきた。優しく、寛容で、愛情深かった。素晴らしい人間だった」とも述べた。

グッドさんを知らなかった人も、彼女の死に心を揺さぶられたとしている。

事件現場のすぐ近くで育ったソマリア移民のニムコ・アフマドさんは、「ルネーは、私たちのコミュニティーの良いところすべてを表していた」と話した。そして、グッドさんのために正義がしっかりなされるよう、みんなで集まっていると述べた。

事件現場のそばの路上に立つアフマドさん。黒っぽい帽子、コートを身に着け、ポケットに両手を入れてカメラに向かっている。近くにはたくさんの人がいる

画像提供, Eloise Alanna/BBC

画像説明, ニムコ・アフマドさんは、今回の事件がミネアポリスの温かいコミュニティーを揺さぶったと話した

アリゾナ州立大学のエドワード・マグワイア教授(犯罪学)は、グッドさん殺害事件の捜査から州当局を排除することは、市民の信頼を損なう可能性が高いと指摘する。

「犯罪学的な見地から言えば、今回のような事件で管轄権を主張するのは、法的要件よりも、捜査をコントロールし、その結果の形を作ろうとする政治的努力という面が強い」

ウィスコンシン大学法科大学院「ステート・デモクラシー・リサーチ・イニシアティブ」の法律家、ブライナ・ゴダーさんによると、州当局が捜査から外されたとしても、女性を射殺した連邦職員を州当局が刑事訴追することは可能だという。

(追加取材:グレイス・グッドウィン)