中国の習主席、チベットをサプライズ訪問 団結と発展をアピール

青系のスーツを着て紫系のネクタイを締めた習氏が、首から長い白い布をかけて、右手を上げて笑顔を見せている。背後では多くの人たちが、白い布を両手で持って体の前に掲げている

画像提供, Chinese government handout

画像説明, チベット・ラサを訪れた中国の習近平国家主席

ギャヴィン・バトラー記者、ローラ・ビッカー中国特派員

中国の習近平国家主席は20日、チベット・ラサをサプライズ訪問した。21日には、中国がチベットを併合し自治区にしてから60年になるのを記念する式典に出席し、2万人を前に団結を呼びかけた。

厳しく統制されているチベットを習氏が訪れるのは2度目。習氏は現地の政府を、「分離主義との徹底的な闘いに取り組んでいる」とたたえた。これは、チベットで何十年も続く中国政府への抵抗に言及したものだ。

高地ラサへの訪問は、72歳の習氏にとっては健康問題につながりかねない。それだけに、この地域に対する自らの権威を明確にすることに対する、習氏の強い思いを示すものとなった。

公式発表された習氏のコメントは、チベットの精神的指導者で、1959年以来インドで亡命生活を送っているダライ・ラマ14世(90)については触れていない。

演説の公式要約によると、習氏は「チベットを統治し、安定させ、発展させるには、まず政治の安定、社会の安定、民族の団結、宗教の調和の維持が大事だ」と呼びかけた。

ダライ・ラマ14世は2カ月前、自らの後継者選びについて、中国ではなく自分の信託財団が行うと発表した。これに対し中国の指導者らは、選定をめぐって決定権をもつのは自分たちだけだと主張している。

ダライ・ラマ14世は、チベットの地位の問題の解決に向け、「中道」のアプローチを提唱している。中国の中で真の自治を行うというものだが、中国政府は彼を分離主義者とみなしている。

中国は長年、チベット人が信仰を実践するのは自由だとしてきた。しかし、その信仰こそ、チベットの何世紀にもわたるアイデンティティーの源になっている。人権団体は、中国政府がこのアイデンティティーを徐々に侵害しているとしている。

BBCが6月に四川省のチベット僧院を訪れた際には、僧侶らはチベット人が人権を否定され、中国共産党(CCP)による「抑圧と迫害」を受け続けていると話した。

中国政府は、チベットの人々の生活水準は同政府の下で大きく向上したと主張。同政府による人権や表現の自由の抑圧はないとしている。

中国共産党は、チベット自治区(中国語では「西蔵」)を1965年に成立させた。チベットによる中国支配に対する蜂起が失敗に終わった6年後だった。

習氏のサプライズ訪問は21日、すべての国営メディアがトップのニュースとして伝えた。習氏のラサ訪問は、祝賀行事として描かれた。

各紙の一面に掲載された写真には、チベットのダンサーや歓声に迎えられる習氏の姿が写っていた。

習氏は20日、チベット当局者らと会談し、双方の間での経済・文化・人的な交流や、共通の言語・文字の普及を奨励した。会談には中国共産党幹部らも出席した。

中国国営メディアによると、習氏は会談で、中国共産党のチベットに対するビジョンを説明。4課題(安定の確保、発展の促進、環境の保護、国境の強化)を重要視していると述べたという。

チベットの民族衣装を着た人たちが縦横に並び、白い布を両手でもち頭上に掲げている

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画像説明, チベットのダンサーらが習氏を迎えた

中国共産党の政策には、チベットの子どもたちの教育を規定する新たな法律も含まれている。子どもたちは現在、国営の中国の学校に通い、標準語(マンダリン)を学ぶことが義務付けられている。

習氏はまた、「宗教問題」の規制強化を求め、「チベット仏教が社会主義社会に適応できるよう導く」必要があると主張した。

チベットでは1カ月前に、中国共産党が世界最大のダムの建設を開始した。墨脱水力発電所とも呼ばれるこのダムは、チベット高原を流れるヤルツァンポ川につくられる。

完成すれば、三峡ダムを抜いて世界最大となり、発電量は同ダムの3倍となる。

中国政府によると、推定1兆2000億元(約24兆円)を要するこの計画は、生態系の保護を優先し、地域の繁栄を促進するものだという。

しかし専門家らは、この新しいダムが、国境を越えてインドのアルナーチャル・プラデーシュ州やアッサム州、バングラデシュへと流れ込むヤルツァンポ川について、管理や迂回(うかい)の権限を中国に与えることになるとの懸念を指摘している。ヤルツァンポ川は、シアン川、ブラマプトラ川、ヤムナ川へと注ぎ込む。