ノーベル生理学・医学賞、坂口志文氏ら3人に 免疫反応抑える「制御性T細胞」を発見

スウェーデン・ストックホルムのカロリンスカ研究所のスクリーンに、2025年のノーベル生理学・医学賞が授与されることが決まった3人の顔写真が並んでいる

画像提供, CLAUDIO BRESCIANI/TT/EPA/Shutterstock

画像説明, 2025年のノーベル生理学・医学賞が、免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見した大阪大学の坂口志文特任教授(右)、米システム生物学研究所のメアリー・ブランコウ氏(左)、米ソノマ・バイオセラピューティクスのフレッド・ラムズデル氏(中央)に贈られると、スウェーデン・ストックホルムのカロリンスカ研究所が6日、発表した

ジェイムズ・ギャラガー保健・科学担当編集委員

スウェーデンのカロリンスカ研究所は6日、2025年のノーベル生理学・医学賞を、大阪大学の坂口志文特任教授、米システム生物学研究所のメアリー・ブランコウ氏、米ソノマ・バイオセラピューティクスのフレッド・ラムズデル氏に授与すると発表した。3人は、免疫が細胞を区別し、外敵の病原体だけを攻撃する仕組みを解明した。

3人が発見した「制御性T細胞」は、免疫反応の暴走を抑える「警備役」ともいわれ、がん細胞の増殖や自己免疫疾患に関係している。これらの疾患の新たな治療法の開発に、3人の研究が活用されている。

授賞式は12月10日にストックホルムで開かれる。賞金の1100万スウェーデンクローナ(約1億7000万円)は3人で分け合う。

ノーベル委員会のオール・カンペ氏は、「彼らの発見は、免疫がどのように機能するのか、そしてなぜ私たち全員が深刻な自己免疫疾患を発症しないのかを理解する上で決定的なものだった」と述べた。

免疫は体内に侵入しようとする何千もの感染症の病原体から私たちを守る一方で、体の組織は傷つけない。そうした免疫機能を理解するうえで、3人の研究は極めて重要だ。

免疫は、感染の兆候を察知する白血球により、これまで遭遇したことのないウイルスや細菌をも見つけ出す。

こうした細胞には「受容体」と呼ばれるセンサーがあり、約1兆通りの組み合わせが無作為に作られる。

この特性が、多様な侵入者を攻撃できる能力につながっている。しかし、その無作為な特性ゆえに、自分の体をつくる細胞を攻撃する白血球が作られることもある。

こうした問題のある白血球の一部が、白血球が成熟する胸腺で破壊されることは、科学者の間ですでに知られている。

今年のノーベル生理学・医学賞が贈られる3人は、免疫の「警備役」ともいわれる制御性T細胞を発見したことが評価された。制御性T細胞には、体を攻撃するほかの免疫細胞を無力化する働きがある。

これが機能しなくなると、1型糖尿病や多発性硬化症、関節リウマチといった自己免疫疾患を発症する。

ノーベル委員会は、「これらの発見は新たな研究分野の基盤を築き、がんや自己免疫疾患などの新たな治療法の開発を促進した」と評価した。

がんの場合は、制御性T細胞が腫瘍に対する免疫反応を抑えてしまうため、制御性T細胞の数を減らすことに焦点を当てた研究が行われている。

自己免疫疾患については、制御性T細胞を増やすことで、自分の体が攻撃されないようにする臨床試験が進められている。臓器移植での拒絶反応のリスクを低減する手段としても応用が期待されている。

「目を見張るような」研究

日本の大阪大学の坂口特任教授は、マウスから胸腺を取り除いて自己免疫疾患を発症させ、ほかのマウスの免疫細胞を注入することで、この疾患を防げることを実証した。これは、免疫細胞が自分の体を攻撃するのを防ぐ仕組みが存在することを示している。

米シアトルのシステム生物学研究所のブランコウ氏と、サンフランシスコのソノマ・バイオセラピューティクスのラムズデル氏は、マウスと人間にみられる遺伝性自己免疫疾患について研究。これが、制御性T細胞の機能に重要な役割を果たす遺伝子の発見につながった。

英生理学会の会長を務めるアネット・ドルフィン教授は、「彼らの先駆的な研究は、制御性T細胞が免疫を制御し、誤って自分の体の組織を攻撃しないようにする仕組みを明らかにした」と述べた。

「これは、基礎的な生理学研究が人類の健康に広範な影響を与え得ることを示す、目を見張るような例だ」