英下院、マンデルソン卿資料の公開を支持 与党議員たちが政権に怒り

白い壁に白黒のタイル貼りの床、オレンジ色の大理石の柱が並ぶ広い廊下に、ダークスーツ姿で並ぶ両氏

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画像説明, マンデルソン卿(左)とスターマー英首相(2025年2月、米首都ワシントンのイギリス大使公邸)
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ジョシュア・ネヴェット政治記者、ハリー・ファーリー政治担当編集委員

イギリス下院は4日、労働党の重鎮だったピーター・マンデルソン前駐米大使の大使任命に関する政府資料の公開を求める動議を、採決なしの満場一致で可決した。キア・スターマー首相(労働党)は当初、国家安全保障や外交関係を損なう可能性のある資料の公開に消極的だったが、労働党の多くの下院議員がこれに怒り、強く反発した。

スターマー首相は下院で、マンデルソン卿の駐米大使任命をめぐる政府資料を自分は公開したいが、国家安全保障や外交関係を損なう恐れのある内容は公開しないと主張していた。当該の政府資料には、アメリカで性犯罪で有罪とされた富豪ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)とマンデルソン卿の関係について、スターマー政権がどの程度把握していたのかが示されている可能性がある。

首相のこの姿勢に対し、アンジェラ・レイナー前副党首を含む労働党の有力議員らが強く反発し、政府に方針転換を迫った。その結果、資料公開には超党派の議会委員会が関与するという案に、政権は同意するに至った。

マンデルソン卿については、エプスティーン元被告の関連資料公開を通じ、閣僚在任中の不正行為疑惑が浮上したため、ロンドン警視庁が捜査を開始。この状況で、首相には文書公開の圧力が高まっていた。

下院で文書公開が議論されている間、警視庁は声明を発表し、捜査を損なう恐れのある「特定の文書」を公開しないよう政府に求めたと明らかにした。

マンデルソン卿は2024年12月にスターマー政権の駐米大使に任命されたが、昨年9月、エプスティーン元被告との関係の詳細が判明したことで解任された。今月1日には、40年にわたり重要な役割を担ってきた労働党から離党した

マンデルソン卿はトニー・ブレア元首相とゴードン・ブラウン元首相の労働党内閣で複数の閣僚ポストを務めた。2008年に叙勲されて一代貴族の「マンデルソン卿」となり、上院議員となった。

米司法省が公開した元被告関連の資料に含まれたメールには、2008年に未成年者への売春勧誘で収監されるエプスティーン元被告に対し、マンデルソン卿が支援的なメッセージを送っていたことが示されている。

スターマー首相は4日の下院審議で、マンデルソン卿とエプスティーン元被告との関係の「とてつもない深さと幅広さ」について、誤解させられていたと述べた。

「彼は、大使就任前も在任中も、エプスティーンとの関係について尋ねた私のチームに、何度もうそを繰り返した。任命したことを後悔している」と首相は述べた。

「自分が今知っていることを、当時の私が知っていたら、彼を政府の近くに置くなど決してしなかっただろう」とも、首相は述べた。

首相はまた、有罪判決を受けたエプスティーン元被告とマンデルソン卿の友人関係が続いていたことを認識したうえで、昨年彼を任命したのだと述べた。

エプスティーン元被告は2008年、未成年者に対する売春の勧誘で有罪判決を受け、性犯罪者として登録された。2019年には、性的人身取引の罪で訴追され、裁判を迎える前に同年、拘置施設で死亡した

動画説明, エプスティーン元被告と親しい人をなぜ駐米大使に……揺れるスターマー英首相と与党・労働党

与党議員の反発に政府方針転換

4日の下院審議で最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首は、政府が公開プロセスを「妨害」しようとしていると非難し、「これは国家安全保障ではなく、首相自身の職の安全の問題だ」と述べた。

激しい議論を経て、議員らは採決なしで、マンデルソン文書を公開する提案を支持した。

スターマー首相は、マンデルソン卿の任命および首相官邸が事前に行った「デュー・ディリジェンス」に関する一部の文書を公開するという保守党の要求を受け入れた。

しかし、国家安全保障上の理由からいくつかの文書が非公開とされる可能性に、多くの議員が激怒し、政府による隠蔽(いんぺい)を疑う声も上がった。

審議の終盤になると、レイナー前副党首や複数の労働党議員の介入を受け、安全保障などに関する機密性の高い文書は議会の情報安全保障委員会(ISC)に回付することで、政府は同意した。

内閣府のクリス・ウォード閣外相は、マンデルソン卿の任命経緯に関する文書を政府はできるだけ早く公開したいと述べ、具体的な期限は示さず、手続きは内閣官房長官が主導すると説明した。

また、何を公開できるかについては、ロンドン警視庁と協議する必要があるとも述べた。

文書公開を求めるこの日の動議は保守党が提出した。マンデルソン卿の問題を通じて労働党に最大限の打撃を与えようとする保守党は、マンデルソン卿が閣僚やスターマー氏のモーガン・マクスウィーニー首席補佐官に送ったとされるメールやメッセージを含め、幅広い資料の公開を要求した。

保守党のベイドノック党首は、保守党が「首相官邸に真実を明らかにさせた」、「この任命は首相が承認したもので、偶然ではなく選択だった」と述べた。

「隠蔽に加担したくない」

労働党議員たちの怒りの大きさに、政府は不意を突かれた様子で、公開手続きに議会委員会への関与を認めざるを得なくなった。その結果、スターマー首相の権威は大きく弱まることになった。

大使任命の時点で首相がすでに、マンデルソン卿とエプスティーン元被告の交友関係の一端を知っていたことは、これまでもうかがわれていたが、この日の審議で首相がそれを自ら認めたことで、労働党内の怒りはさらに強まった。保守党のベイドノック党首による攻撃も、労働党議員たちの怒りを形にした。

「自分は隠蔽に加担したくない」という労働党議員の発言が、多くの議員の心情を代弁した。

労働党のベテラン議員クライヴ・エフォード氏は、「議員たちは、マンデルソン卿の行動に憤り、怒っている」と述べ、「すべてを公開することが唯一の対処法だ」という議員たちの認識が、審議を通じて明らかになったと説明した。

エフォード議員は、マンデルソン卿を駐米大使に任命した「本当にお粗末な判断」については、スターマー首相の側近たちに責任があると述べた。

労働党のナタリー・フリート議員は、「警察捜査の結果」がマンデルソン卿にもたらされる必要があると述べ、現在判明している元被告との関係を首相が当時知っていたなら、「任命しなかっただろう」と付け加えた。

野党・自由民主党のリサ・スマート議員は、マンデルソン問題への対応をめぐる「首相の判断には重大な疑問がある」と述べた。

「なぜ複数の労働党議員が、首相の答弁に青ざめ、完全にぼうぜんとしていたのか理解できる」とスマート氏は述べた。

警察の捜査

マンデルソン卿は、労働党のブラウン政権で閣僚を務めていた際、市場に影響を与える政府情報をエプスティーン元被告に送ったとの疑惑をめぐり、公職在任中の不正行為を捜査されている。

アメリカ司法省が1月30日に公開したメールは、イギリス政府資産の売却可能性を議論する首相官邸内部のメモをマンデルソン卿が2009年にエプスティーン元被告へ転送していた可能性を示している。

マンデルソン卿はコメント依頼の取材に応じていないが、BBCが得た情報によると、犯罪行為や金銭的利益を目的とした行為を否定しているという。

米司法省が公開した資料に含まれたメールには、2010年に欧州連合(EU)がユーロ救済のために5000億ユーロの支援を行うとする情報を、マンデルソン卿が事前にエプスティーン元被告に知らせていたように見えるものもある。

また、他のメールでは、エプスティーン元被告が2003年と2004年に、それぞれ2万5000ドルの3回の取引を通じて計7万5000ドルをマンデルソン卿に支払ったとされている。マンデルソン卿は、支払いについて記録も記憶もないとしている。

マンデルソン卿は、元被告が2008年に有罪判決を受けた後も交友関係を続けたことを謝罪し、「彼が私や多くの人々に語ったうそを信じてしまった」と述べた。

一代貴族として上院議員だったマンデルソン卿は、上院からも辞任した。

政府は、マンデルソン卿から男爵の爵位を正式に剥奪するための法案を準備している。スターマー首相はさらに、元閣僚としてマンデルソン卿が持つ枢密院終身会員の資格剥奪についても、手続きを進めると明らかにした。