英警察、マンデルソン卿の不正行為疑惑の報告を調査 閣僚時代に政府情報をエプスティーン元被告に渡していたと

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ベッキー・モートン政治記者、ジャック・フェンウィック政治担当編集委員
イギリスの警察は2日、性犯罪で有罪とされた米富豪ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)に、労働党重鎮だったマンデルソン卿が政府の機密情報を渡したと指摘されていることを受け、公職中の不正行為疑惑について報告を精査していると発表した。
野党のスコットランド国民党(SNP)とリフォームUKはこの日、マンデルソン卿を警察に通報したと発表した。野党の自由民主党、ウェールズ党(プライド・カムリ)、さらには同卿が所属していた労働党の一部議員も、警察による捜査を求めている。
米司法省が1月末に追加公開した電子メールのやり取りには、マンデルソン卿が労働党のゴードン・ブラウン政権下でビジネス相を務めていた2009年、エプスティーン元被告に情報を転送していたことを示す内容が含まれていた。
マンデルソン卿は、こうした疑惑についてコメントを求める取材に応じていない。
ロンドン警視庁のエラ・マリオット警視長は、「合衆国の司法省がジェフリー・エプスティーン元被告について、数百万件の裁判資料を追加公開したことを把握している」と述べた。
「この公開とそれに続く報道を受け、ロンドン警視庁は公職中の不正行為の疑いに関し、複数の報告を受け取った。そうした報告が刑事捜査の要件を満たすかどうか、すべて精査する方針だ」、「他の事案と同様、関連性のある新情報を私たちが把握すれば、我々はそれを評価し、必要に応じて捜査する」と警視長は述べた。
イギリス政府の報道官は「捜査するかどうか判断するのは、当然ながら警察だ。政府は、警察が必要とするあらゆる支援を提供する用意がある」と述べた。
これに先立ち英首相官邸は、マンデルソン卿は上院議員であるべきではない、また一代貴族の爵位を使用すべきではないと、キア・スターマー首相が考えていることを明らかにしていた。
首相報道官は一方で、スターマー首相自身には、同卿の爵位を剝奪する権限がないと述べた。
現行制度では、貴族の爵位を剝奪するには新しい法律が必要となる。
英政府は、マンデルソン卿が閣僚だった時期にエプスティーン元被告と接触していた事実について、緊急調査を開始している。
マンデルソン卿はトニー・ブレア元首相とブラウン元首相の労働党内閣で複数の閣僚ポストを務めた。2008年に叙勲されて一代貴族の「マンデルソン卿」となり、上院議員となった。
マンデルソン卿は、2024年12月にスターマー政権の駐米大使に任命されて以来、上院を休職している。しかし昨年9月、元被告との関係の詳細が判明したことで、駐米大使を解任された。
今月1日には、党内で40年にわたり重要な役割を担ってきた労働党から離党した。
元被告とマンデルソン卿のやりとり
公開された文書に含まれる電子メールには、当時ビジネス相だったマンデルソン卿が、銀行員ボーナスに対する一回限りの課税案について、エプスティーン元被告と話し合っていたことが示されている。
2009年12月に当時のアリスター・ダーリング財務相がこの課税案を発表してから8日後に送られた電子メールで、エプスティーン元被告は、JPモルガン銀行トップのジェイミー・ダイモン氏がダーリング氏に電話するべきかとマンデルソン卿に尋ねた。
マンデルソン卿は「そうだ、そしてやんわりと脅す」べきだと返信したとみられる。エプスティーン元被告はさらに、税率の引き下げと引き換えに中小企業向け基金の拡充を提案する方が「筋が通るか」と問いかけている。
別の電子メールには、マンデルソン卿がブラウン政権でビジネス相を務め、事実上の副首相だった当時、政府内部の情報をエプスティーン元被告に転送していたとうかがわせる内容が含まれている。
ブラウン氏の政策顧問だったニック・バトラー氏は2009年6月、イギリス経済の低迷について首相宛てに電子メールを送った。その中でバトラー氏は、「政府が保有する非常に大規模な資産基盤から価値を引き出す」ことを提案。政府が「資産売却計画」を策定すべきだと助言した。
この時バトラー氏は、マンデルソン卿を含む複数の人物を同報の宛先に入れていた。
今年1月末に新しく公開された電子メールによると、マンデルソン卿はバトラー氏からのメールをエプスティーン元被告に転送し、「首相に送られた興味深いメモだ」と書き添えていた。
エプスティーン元被告はこれに対して、「どういう 売却可能資産なのか」と返信した。
バトラー氏はBBCに対し、明らかになったこのやりとりに「衝撃を受けた」と述べ、マンデルソン卿は「自分のしたことを恥じるべきだ」と強調した。
バトラー氏は、全面的な調査を求めると述べ、金融危機後の時期には「エプスティーン元被告のような人物が、取引に利用できた」情報がたくさんあったとも話した。
さらに、別の政府内部メールも、2009年8月にエプスティーン元被告へ転送されたことが明らかになっている。このメールにもマンデルソン卿が同報に含まれていたが、そのメールを誰が元被告に転送したのかは判明していない。
このメールでは、当時のビジネス政務次官だったシュリティ・ヴァデラ氏が、金融危機後の金融市場をどのように改善するかについて議論し、苦しんでいる企業には、持分の一部と引き換えに資金を提供する案を示していた。
米司法省が公開した文書には、他にも以下のやりとりが含まれていた。
・マンデルソン卿は2009年、銀行幹部のボーナスに課税するイギリス政府案をめぐり、米JPモルガン銀行のトップが英財務相に「やんわりと脅しをかける」べきだと、エプスティーン元被告に助言した
・マンデルソン卿はまた、欧州連合(EU)がユーロ救済に向けて5000億ユーロ規模の支援策を検討していることを、エプスティーン元被告に事前に知らせていた
・エプスティーン元被告は2003年と2004年にかけて3回にわたり2万5000ドルずつ、計7万5000ドルをマンデルソン卿に支払った
・元被告は2009年、当時マンデルソン卿のパートナーで後に結婚したレイナルド・アヴィラ・ダ・シルヴァ氏に1万ポンドを送金した
ブラウン元首相も声明発表
明らかになったマンデルソン卿と元被告のやり取りについては、ブラウン元首相も声明を発表。金融危機の最中にビジネス省から機密性および市場に影響を及ぼす情報が開示された件について、内閣官房長に調査を依頼していると述べた。
また、昨年9月に公開された、マンデルソン卿とエプスティーン元被告の間で資産売却に関するやりとりがあったとされる文書についても、すでに内閣官房長に調査を要請したと明らかにした。
ブラウン元首相は、そのようなやりとりの記録は確認できなかったと述べ、現在は政府文書の開示に関する「より幅広く、より詳細な調査」を求めているとした。
与野党の批判
ダレン・ジョーンズ首席首相秘書官は下院議員らに向けて声明を発表し、「申告されていない資金のやりとり、政府情報の提供、ましてやその相手が有罪判決を受けた小児性加害者だったという事実は、まったく容認できない」と述べた。
また、上院の名誉を損なった議員を解任できるよう、政府が上院と協力して懲戒手続きを刷新する方針だと説明。個々の議員ごとに複雑な立法措置を取るより、すべての上院議員に適用できるよう、手続きを更新する方が望ましいと話した。
BBCニュースが確認した非公開メッセージによると、労働党内では少数の議員が、この問題への政府対応を批判しているという。
通信アプリ「ワッツアップ」を使った労働党議員のチャット・グループでは、首相官邸職員が政府の立場を説明。「ピーター・マンデルソンが労働党を離党したことは正しい判断だ。もし離党していなかった場合、党としてどのような措置が可能か、積極的に検討するところだった」と述べた。
これに対し、労働党議員の一人は「ピーター・マンデルソンに関するその説明は、まったく不十分だ」と返信した。
別の議員も、「同意する。行為の重大性を考えれば、本人が離党しなかったなら、党は除名を前提に一時的な資格停止措置を取っていたのではないのか」と書いた。
SNPのスティーヴン・フリン下院院内総務は、明らかになったこうした事実は「衝撃的」だと述べ、イギリス政府と関係当局は全面的に調査する必要があると主張した。
最大野党・保守党のアレックス・バーガート影の内閣府担当相は、エプスティーン元被告との関係が知られていたにもかかわらず、労働党政権がそもそもマンデルソン卿を駐米大使に任命した責任から「逃れることはできない」と述べた。
今月1日に労働党離党を発表した声明の中でマンデルソン卿は、エプスティーン元被告が20年前に自分に金銭を支払ったとする疑惑は虚偽だと考えていると述べた。
また、有罪判決後もエプスティーン元被告との関係を続けていたことについて遺憾の意を改めて示し、「被害を受けた女性や少女たちに対し、断固として謝罪する」と述べた。












