英与党の重鎮マンデルソン卿が離党 エプスティーン元被告との関係めぐり

白髪にめがねをかけたマンデルソン卿。白いワイシャツにピンクのネクタイを締めている

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英与党・労働党の重鎮、マンデルソン卿は1日、性犯罪で有罪とされた富豪ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)との関係をめぐり、「労働党にこれ以上、恥ずかしい思いをさせたくない」として、離党したと明らかにした。米司法省が1月30日に新たに公開したエプスティーン元被告関連の文書には、マンデルソン卿に関する新資料が含まれていた。

米司法省が追加公開した文書によると、エプスティーン元被告は2003年と2004年にかけて3回にわたり2万5000ドルずつ、計7万5000ドルをマンデルソン卿に支払ったとされている。

閣僚経験者のマンデルソン卿は昨年、エプスティーン元被告との過去の関係を理由に駐米大使を解任された

マンデルソン卿は労働党の事務総長宛ての書簡で、「ジェフリー・エプスティーンをめぐる起きて当然の騒ぎに、私は今週末さらに結び付けられてしまった。遺憾に思い、申し訳なく感じている」と述べた。

「20年前に彼が私に金銭を支払ったとする疑惑について、私は虚偽だと信じている。その支払いについて私には記録もなければ覚えもないため、自ら調査する必要がある」「私が調査する間、私は労働党にこれ以上の恥ずかしい思いをさせたくない。そのため党員の立場を離れる」

マンデルソン卿はさらに、「この機会を借りてあらためて、多くの女性や少女たちに謝罪したい。私たちはもっと早く、彼女たちの声を聞くべきだった」とした。

「私は人生を通して、労働党の価値と成功に尽くしてきた。今回の決断は、党のためになると信じている」とも強調した。

この発表の前には同じ1日の時点でマンデルソン卿は、追加公開された文書が本物かどうかは分からないと述べていた。

そのうえで、「エプスティーンと知り合い」、元被告が有罪判決を受けた後も交友を続けたことについて、あらためて後悔の念を示し、「苦しまされた女性や少女たちに対してはっきりと」謝罪していた。

祖父も労働党アトリー内閣の閣僚だったピーター・マンデルソン氏は、1980年代から労働党員として頭角を現した後、1992年に下院に初当選。トニー・ブレア元首相とゴードン・ブラウン元首相の歴代内閣で複数の閣僚ポストを務めた。2008年に一代貴族の「マンデルソン卿」として叙勲され、上院(貴族院)議員となった。

マンデルソン卿は2024年12月、キア・スターマー首相によって駐米英大使に任命されたが、1年もたたないうちに、有罪とされた元被告を応援するメッセージを送っていたことが明らかになり解任された

エプスティーン元被告は2008年、未成年者に対する売春の勧誘で有罪判決を受け、性犯罪者として登録された。2019年には、性的人身取引の罪で訴追され、裁判を迎える前に同年、拘置施設で死亡した。

米司法省がこれまで公開してきた資料では、エプスティーン元被告が2008年に有罪判決を受けた後も、マンデルソン氏は連絡を取り、応援メッセージを送っていたことも示されている。

今回新しく公開された資料の中には、下着姿のマンデルソン卿が、バスローブかガウンのようなものを着た女性の隣に立っている写真も含まれている。女性の顔は黒塗りされている。マンデルソン卿と女性の写真がいつ、どこで撮影されたものかは分かっていない。

この写真についてマンデルソン卿は、「その場所も女性も特定できず、どのような状況だったのかも分からない」と述べている。

エプスティーン元被告に関する資料に名前や写真が含まれていたとしても、それが直ちに不正行為を示すものではない。

他方、1月末に追加公開された資料に含まれたメールでは、エプスティーン元被告の依頼を受けたマンデルソン卿が、金融機関幹部に払われるボーナスへの課税について、政策変更を政府に働きかけようとしていたことも示されている。

「修正しようとがんばっている」、「財務省は譲ろうとしないが、私が対応している」と、マンデルソン卿は2009年12月にエプスティーン元被告に書いている。

マンデルソン卿は当時、ゴードン・ブラウン政権のビジネス相だった。

マンデルソン卿はBBCに対し、当時はイギリス内外の全ての銀行がイギリスの金融サービスへの影響について同様の主張をしていたと述べ、「政府内での私の会話は、特定の個人ではなく、業界全体の見解を反映していた」と付け加えた。

最近公開され、英紙フィナンシャル・タイムズが最初に報じた銀行取引明細は、イングランド北東部ハートリプール選挙区選出の労働党下院議員だったマンデルソン氏に関わるとされる振込3件が、エプスティーン元被告のJPモルガン銀行口座から送金されたと示している様子。

最初の支払いは2003年5月14日付で、英バークレイズ銀行の口座に送金された。そこでは、当時マンデルソン卿のパートナーで後に結婚したレイナルド・アヴィラ・ダ・シルヴァ氏の名前が、「A/C」だと記載されている。「A/C」は一般的に、「口座(account)」の会計上の略語。

その支払いでは、「ピーター・マンデルソン」が「BEN」だと記載されている。「BEN」は通常、受益者(beneficiary)を意味する。

2回目と3回目の2万5000ドルの振り込みは、2004年6月に数日違いで英HSBCの口座に送金されていた。両方の記録でも、「ピーター・マンデルソン」が唯一の「BEN」として記載されている。

この3件の振り込み額が、実際に口座に入金されたのかどうかは不明。

労働党のゴードン・マキー下院議員はBBCラジオに対し、新しく公表された資料で明らかになった内容に、エプスティーン元被告の被疑者たちは「当然ながら激怒」するはずだと述べ、マンデルソン卿の離党は「正しいこと」だったと話した。

最大野党・保守党の報道官は、労働党を率いるスターマー首相が「マンデルソンを追い出すのではなく、労働党から離党するのを認めた」と批判した。

保守党のケミ・ベイドノック党首は1日、スターマー首相に対し、マンデルソン卿の党員資格を停止し、エプスティーン元被告との関係について調査を始めるよう要求していた。

同日午前にBBC番組に出演したスティーヴ・リード住宅相は、司会者に質問された際、マンデルソン卿とエプスティーン元被告との金銭的なつながりとされるものについて、政府は把握していなかったと述べていた。