トランプ大統領、首都ワシントンに州兵を派遣へ 犯罪やホームレス取り締まると

画像提供, EPA
ドナルド・トランプ米大統領は11日、犯罪とホームレス問題への対処を強化するため、コロンビア特別区(DC、首都ワシントン)に州兵を派遣し、首都警察の指揮権を掌握すると表明した。
トランプ氏はこの日、「治安の非常事態」を宣言。先週末に投入された連邦法執行機関の職員に加え、州兵800人を動員すると発表した。
トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、首都が「完全かつ徹底的な無法状態になりつつある」と語った。
一方、首都ワシントンのミュリエル・バウザー市長は、犯罪に関するトランプ氏の主張を否定している。統計によれば、首都での犯罪件数は2023年には一時的な増加が見られたものの、その後は減少傾向にある。また、暴力犯罪は過去30年で最低水準にある。
トランプ氏は記者会見で、「犯罪、流血、混乱、そして不潔さなどから、わが国の首都を救うための歴史的な措置を発表する」と述べた。この会見には、連邦政府の管理下に置かれる間、首都ワシントンの警察を指揮するパム・ボンディ司法長官も同席した。
トランプ氏は、「きょうはDCの解放の日だ。われわれは首都を取り戻す」と語った。
また、首都ワシントンが「暴力的なギャングや血に飢えた犯罪者、薬物におぼれた狂人、ホームレスの人々に乗っ取られている」と非難した。
しかし首都警察の統計によると、2023年から2024年にかけて殺人事件は32%減少し、2019年以来の最低水準となった。今年に入ってからも12%の大幅な減少が見られるという。
民主党所属のバウザー市長は、2023年に「ひどい」犯罪の急増があったことを認めているが、これは全国的な傾向と一致していると説明。その上で、首都ワシントンで犯罪の波が起きているとの主張に反論している。
バウザー市長は10日、MSNBCの番組で、「われわれは犯罪の急増を経験しているわけではない。大統領はわれわれの取り組みを十分に認識している」と語った。
また、ホワイトハウスのスティーヴン・ミラー次席補佐官(政策担当)が「ワシントンは(イラクの首都)バグダッドよりも暴力的だ」と発言したことについて問われると、バウザー市長は「戦争で荒廃した国との比較は誇張であり、事実ではない」と述べた。

アメリカ陸軍は声明を発表し、動員される州兵800人のうち、常時100〜200人が法執行機関を支援する形で展開される予定だと明らかにした。
ピート・ヘグセス国防長官は、週末までに州兵が到着する見通しだと述べている。
トランプ氏はこれらの展開に加え、首都ワシントンの警察を連邦政府の直接管理下に置く方針を示している。その根拠として、連邦法「コロンビア特別区自治法」を挙げている。
この法律はリチャード・ニクソン元大統領が制定したもので、首都ワシントンがアメリカの50州に属さない唯一の都市であることを踏まえ、住民が市議会と市長を選出できるようにするもの。
この法律にはただし書きがあり、「緊急性のある特別な状況」が存在する場合、大統領が首都警察の指揮権を掌握できるとされている。
大統領が48時間を超えて指揮権を維持する場合には、議会に書面で通知する必要がある。さらに、通知が行われたとしても、指揮権の保持は最長30日間までに限られている。
バウザー市長は10日、記者団の質問に対し、大統領が首都警察の指揮権を掌握する可能性について、「われわれの法律には、そうした措置を可能にする非常に具体的な要件がある。しかし、現在の市内には、そのいずれも存在していない」と述べた。
バウザー市長は、州兵が地元の法律を執行することを「懸念している」とも語った。
その後、11日に開かれた記者会見では、トランプ氏の命令は「不安を感じさせるものであり、前例のない措置だ」と述べた。
また、トランプ氏が抱く首都ワシントンのイメージについて、「第1期の新型コロナウイルス対応時の経験に影響されている」と指摘し、「当時は特に困難な時期だった」と振り返った。
「新型コロナの後に犯罪の急増を経験したのは事実だ」と述べた上で、「われわれは暴力的な犯罪者を街から排除するための法律を迅速に整備した。その結果、犯罪は大幅に減少した」と強調した。

画像提供, EPA
トランプ大統領はこの記者会見で、首都ワシントンにおけるホームレス問題についても長時間にわたり言及した。
トランプ氏は、「スラム街を一掃する」と述べたが、詳細は明らかにしなかった。また、ホームレスの人々を別の場所へ移送するとしたが、具体的な移送先には触れなかった。
トランプ氏は、外国の要人が首都を訪れる際には、「すべてが完璧であるべきだ」と語り、「(首都は)我々の国を大きく反映している。首都が汚れていれば、国全体が汚れていることになり、われわれは尊敬されない」と主張した。
一方、首都でホームレス支援に取り組む団体はBBCに対し、近年はむしろ改善が見られると述べている。
「So Others Might Eat」の代表兼最高経営責任者を務めるラルフ・ボイド氏は、今年のホームレス人口は5年前から約20%減少していると説明した。同団体は、住宅や衣類、その他の社会福祉サービスを提供している。
ボイド氏は、トランプ氏による移送案は、長期的な解決策にはならない」と指摘。「問題を別の地域に移すだけで、われわれよりも対応能力の低い地域に負担を押しつけることになる」と懸念を示した。
この日、ホワイトハウス前ではトランプ氏の対応に抗議する市民が集まり、「DCに手を出すな」、「自治権を守れ」と声を上げた。
抗議集会の登壇者は、「トランプ氏はDCの安全を気にしているのではなく、支配を望んでいる」と非難した。
トランプ氏はここ数日間、自身のソーシャルメディアで首都ワシントンの運営を批判してきた。また、長年にわたり、民主党による首都の指導体制に対し、犯罪やホームレス問題への対応をめぐって不満を表明してきた。
トランプ氏はさらに、先週、首都ワシントンで襲撃された政府効率化局(DOGE)の元職員について懸念を示した。
トランプ氏は、この職員は、「街をうろつく暴漢の一団に野蛮に殴打」され、「血まみれのまま放置された」と述べた。
また、民主党の議員やインターンを含む、他の連邦政府職員や公職者が襲撃された事例にも言及し、「これはアメリカに対する脅威だ」と強調した。
トランプ氏が州兵を初めて動員したのは6月で、不法移民の摘発をめぐる騒乱に対応するため、ロサンゼルスに州兵2000人を派遣した。
首都ワシントンに州兵が最後に展開されたのは、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件への対応時だった。
追加取材:マデリーン・ハルパート











