米ロがウクライナの和平案を協議、進展みられず

白を基調とした部屋に置かれた白いテーブルに、スーツ姿の男性が2人並んで座っている。2人の手元には書類とペンが見える

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画像説明, ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)と、ユーリ・ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)

マイア・デイヴィース記者、ラウラ・ゴッツィ記者

ロシアの首都モスクワで2日、ウクライナでの戦争終結に向け、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領らとアメリカの交渉担当者らが協議した。会談による協議は5時間にわたったが、和平合意の実現に向けた突破口は見いだせられなかったとみられる。

クレムリン(ロシア大統領府)の報道官は、会談は「建設的だった」と述べたが、計画の一部はロシアにとって依然として受け入れられず、「今後やるべきことは多い」と語った。

アメリカ側からは、ドナルド・トランプ米大統領の特使のスティーヴ・ウィトコフ氏と義理の息子ジャレッド・クシュナー氏らが協議に臨んだ。両氏は和平を目指し、数週間にわたって集中的な外交活動をしてきた。米交渉団はすでにモスクワを離れたが、コメントを出していない。

ウクライナと、同国を支援する欧州各国は、ホワイトハウスが迅速な合意を目指して示した28項目の和平案の修正を働きかけてきた。この案についてクレムリンは以前、受け入れる姿勢を示していた。

この計画は、11月にメディアに流出した後、ロシア寄りと広く見なされていたが、ここ数週間で複数の修正が加えられている。

プーチン氏はこの日の会談の数時間前、米ロによる和平案の草案をめぐるヨーロッパの要求は受け入れられないと発言。「ヨーロッパが我々と戦うことを望むなら、我々はその準備ができている」と述べていた。

「妥協案はまだない」とロシア側

プーチン氏の側近であるユーリ・ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)は、会談直後にロシアメディアに対し、アメリカの提案について、「いくつかの点には合意したが(中略)批判した点もある」とし、ウクライナに関する計画には「妥協案はまだない」と述べた。

また、ロシアが28項目の計画に加えて4件の文書を受け取ったこと、そしてロシアとアメリカが協議の詳細を公表しないと合意したことを明らかにした。

アメリカやウクライナからのコメントはまだない。また、英仏をはじめとするウクライナの欧州の支援国や、いわゆる「有志連合」を構成する他の国々からも、これまでのところ発言はない。

ロシアとウクライナの間には、依然として主要な対立点が残っている。これには、現在ロシアが占領している領土の譲渡にウクライナが同意するかや、欧州側がウクライナに安全保障の保証を提供するかといった点が含まれる。

ロシアと、ウクライナを支援する欧州各国の間でも、和平合意のあるべき姿に関する考えについて、依然として大きな隔たりがある。

プーチン氏は協議に先立ち、2022年にロシアが全面侵攻を開始して以来、ウクライナの防衛努力を支持してきた欧州指導者らを痛烈に批判。ヨーロッパがロシアに戦略的敗北を与えられるという幻想にとらわれていると述べた。

さらに「我々はヨーロッパと戦争するつもりはなかった。しかし、ヨーロッパが突然戦争を望み、始めるなら、我々は今すぐにでも準備ができている」と語った。

一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、米交渉団から会談後に報告を受けることを期待していると述べた。ただ、ウィトコフ氏とクシュナー氏が、さらなる直接交渉のためにヨーロッパに飛ぶかどうかは不明だ。

2日にアイルランドを訪問したゼレンスキー大統領は、首都ダブリンでの記者会見で、「すべてはきょうの協議にかかっている」と述べた。

ゼレンスキー氏は「簡単な解決策はない」と述べ、ウクライナが和平協議に参加すること、そして北大西洋条約機構(NATO)への加盟を含む、明確な安全保障の保証への合意が必要だと繰り返した。ウクライナのNATO加盟にはロシアが長年反対しており、トランプ氏も否定的だ。

「1年後にロシアが戻ってこないような形で戦争を止めなければならない」とゼレンスキー氏は付け加えた。

ウクライナの代表団は、11月にトランプ氏による28項目の和平案が提示されて以来、ウィトコフ氏、クシュナー氏、マルコ・ルビオ米国務長官を含むアメリカの交渉担当者らと2回、協議している。

米政府は、先週末にウクライナとの協議を終えた後、提案が「大幅に精緻化された」と述べたが、更新された計画の詳細は確認されていない。

一方、ウクライナを支援する欧州各国はこの計画に対抗し、独自の文書を提示した。そこでは、アメリカがウクライナ東部のドンバス地方(ドネツク州とルハンスク州)を事実上ロシア領と認めるなどといった、大きな論争の的となっている要素の多くが削除されている。

ゼレンスキー氏は1日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領と会談。イギリス、ドイツ、ポーランド、イタリアなど、複数の欧州指導者が、オンラインでこの会談に参加した。

マクロン氏は「話すべき最終的な計画はない」と述べ、それはウクライナとヨーロッパの意見を取り入れて初めて実現できると語った。

ウクライナ東部の前線、戦闘続く

こうしたなか、前線では2日も戦闘が続いた。ウクライナ軍は、ロシア軍が制圧したと主張する東部の重要都市ポクロフスクで、依然としてロシア軍と交戦していると発表した。

ロシア国防省は、戦略的に重要なこの都市で自軍が旗を掲げている様子だとする動画を、メッセージアプリ「テレグラム」に投稿した。ロシア軍は1年以上にわたり、ポクロフスク制圧を試みている。

ウクライナでロシア軍が占領している地域を示した地図。ロシアと国境を接している東部一帯が、ロシア軍が占領した地域としてピンク色に塗られている。ここにはドネツクと、2014年にロシアが一方的に併合したクリミアが含まれている。また、ピンク色の地域の西側には、ロシア軍が一部占領している地域が赤い斜線で、ロシアが占領を主張している地域が黄色で示されている。ウクライナではほかに、首都キーウ、西部リヴィウ、北東部ハルキウ、南東部ヘルソン、同ザポリッジャ、黒海に面した南部オデーサの各都市が示されている。また、ウクライナの東側にはロシアと、同国の国境近くの都市クルスクが、北側にはベラルーシが示されている。出典は米戦争研究所とアメリカン・エンタープライズ研究所の「重大脅威プロジェクト」で、日本時間12月2日午前6時時点のデータ
動画説明, 戦争の終わり見えないとウクライナ兵、和平協議への期待感薄く 荒廃した東部からの住民避難続く

ウクライナ東部軍司令部は、ロシアが「宣伝要員が制圧したと主張できるように」、ポクロフスクで「旗を立てようとした」と非難した。「彼らは慌てて逃げた。敵部隊の掃討は続いている」と、同司令部はソーシャルメディアで声明を出した。

ウクライナ軍はまた、依然としてポクロフスクの北部を掌握しており、ロシア部隊は甚大な損害を被っているとした。国際的な監視団も、ロシアによる制圧の主張に異議を唱えている。

ウクライナ軍当局はさらに、ロシアが北東部の国境の町ボフチャンスクを制圧したとの主張を退けたほか、ロシアが2週間前に制圧したとする北東部の都市クピャンスクで、「状況を大幅に改善した」とした。

ロシアが2022年2月24日にウクライナへの全面侵を開始して以来、多数の兵士が死亡または負傷している。国連によると、民間人の犠牲も1万4000人以上に上っている。

幼稚園、病院、住宅などの民間施設は、夜間のドローンやミサイル攻撃で破壊されたり、深刻な損傷を受けたりしている。

ロシアとウクライナは共に、旧ソ連の一部だった。両国の現在の紛争は2014年にさかのぼる。同年2月から3月にかけて、ウクライナの親ロシア派大統領が失脚し、ロシアがクリミア半島を併合したほか、ロシアは同年春からウクライナ東部の反政府勢力武を支援してきた。