ヴァンス米副大統領、裁判官に「大統領令を制限する権限ない」と主張

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ブランドン・ドレノン記者、アンソニー・ザーカー北米特派員
アメリカのJ・D・ヴァンス副大統領は9日、裁判官はドナルド・トランプ政権の行政権に対して権限を持たないと発言した。アメリカではこのところホワイトハウスが次々と実施しようとする一連の政策に対して、各地の裁判所に訴訟が提起され、複数の裁判官が政策の一時的な差し止めを命じている。
ヴァンス副大統領はソーシャルメディア「X」に、「裁判官が、行政の正当な権力を制御することは許されない」と投稿した。
米ニューヨーク州の連邦地裁は8日、ドナルド・トランプ米大統領の側近で富豪のイーロン・マスク氏が率いる「政府効率化局(DOGE)」が、財務省の記録にあるアメリカ市民数百万人の個人財務データにアクセスすることを阻止した。
ヴァンス氏は、この命令から24時間たたないうちに上の内容を投稿した。
トランプ大統領は就任後の最初の3週間で、数十件の大統領令に署名しているが、その多くは憲法上の大統領権限を逸脱したものだと批判されている。
トランプ政権は、連邦政府を迅速かつ劇的に再編成しようとしている。その渦中で現在20以上の訴訟が、法廷で争われている。
ヴァンス副大統領はソーシャルメディアへの投稿で、行政部門による他の種類の意思決定についても、司法の権限外だと示唆した。
「もし裁判官が将軍に軍事作戦の遂行方法を指示しようとしたら、それは違法だ。もし裁判官が司法長官に、検察官権限の使い方を命じようとしたら、それも違法だ」
副大統領のこうした主張に対して、野党・民主党をはじめ多くの政治や法律の関係者が反論している。トランプ大統領にかねて対立し、昨年の大統領選ではその落選を目指して運動したリズ・チェイニー元共和党下院議員も、副大統領に反論した。
チェイニー氏は「X」に、「これまでに複数の連邦裁判所があなたに不利な判決を下しているが、判決内容が法律上の、あるいは憲法上の権限を逸脱していると思うなら、あなたには控訴という救済手段がある」と書いた。
「自分が負けているからといって激怒して、共和制を放棄するなどできない。それは暴政だ」とも、チェイニー氏は書いた。
ヴァンス氏は以前、ホワイトハウスの権力を抑制しようとする司法判断に対して、大統領が直接挑戦できるという考えを示していた。
2021年のポッドキャストでヴァンス氏は、未来のトランプ政権は「すべての中間管理職の官僚、行政機関のすべての公務員を解雇し、こちら側の人間に置き換えるべきだ」と述べていた。
「裁判所に制止されたら、アンドリュー・ジャクソン(第7代アメリカ大統領)のように国の前に立ち、『裁判長が判決を下した。ではそれを執行させてみろ』と言えばいい」と、当時のヴァンス氏は述べた。
数々の訴訟に直面
民主党の政治家らは、トランプ大統領の行動を素早く非難しているものの、連邦議会を掌握していないため、大統領を抑えるために使える立法手段は限られている。
エリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)は、DOGE主導による政府機関閉鎖について国民の反対を集めようとしている。
ウォーレン議員は4日、首都ワシントンの財務省の外で行われた集会に参加し、「この建物の背後で、イーロン・マスクがアメリカ国民から権力を奪おうとしている」、「私たちはここで反撃するために集まっている」と述べた。
同議員は10日にも別の集会を主導する予定だが、トランプ大統領の措置に対する国民の抗議は、第1次政権の初期と比べると全体的に静かだ。
トランプ大統領に反対する人々が、政策の中断に実質的に成功したのは、少なくとも今のところは連邦裁判所においてのみ。
民主党や外部団体によって提起された訴訟により、トランプ大統領のいくつかの大統領令が発効を阻止されたり、連邦裁判官が一時的な差し止め命令を出したりしている。
CFPBをめぐっては、予算管理局(OMB)のトップでCFPBの代理局長にも任命されたラッセル・ヴォート氏がこの週末、従業員に対し、規則の策定や金融機関の調査の多くを停止するよう命じた。
2007~2008年の金融危機を受けて設立されたCFPBは、違法または疑わしいビジネス慣行に従事していた銀行から数十億ドルを回収した。
しかしトランプ政権は、CFPBがその権限を超え、一部のケースでは金融機関を不当に標的にし、罰金から得た資金を左翼の非営利団体に資金提供するために使用していると主張している。
訴状では、研究の間接費に影響を与える削減が、重要な生物医学研究を妨げると主張しているが、ホワイトハウスは無駄を削減していると述べている。
この日にはさらに、ロードアイランド州の判事が、政権による連邦資金凍結に対する法廷の解除命令を、政権が無視したことは不当だという判断をあらためて示した。
クリス・マーフィー上院議員(民主党)は9日、米ABCニュースに出演し、トランプ大統領の劇的なコスト削減、特に主要な対外援助機関である国際開発局(USAID)に対する削減が、「ウォーターゲート事件以来、確実に国が直面した最も深刻な憲法危機」にあたると話した。
他にも、裁判所で争われているトランプ氏の大統領令には以下のものがある。
・政府効率化局(DOGE)の設立
・出生時の性別に基づくトランスジェンダー受刑者の施設収容
・トランスジェンダーの人々の軍務禁止
・独立政府機関のトップ解任
この中には連邦裁判所での訴訟によって一時的に差し止められているものもあり、法廷での争いが続いている。
トランプ大統領は9日、アメフトNFLのスーパーボウルのためニューオーリンズに向かう途中、ニューヨーク連邦地裁のポール・エンゲルマイヤー判事による財務省支払いシステムに関する判決を「恥ずべきもの」だと呼んだ。
マスク氏もこの判決を「全くもって狂っている」と批判し、「金の使われ方を見ないで、税金の無駄遣いや詐欺を防ぐ対策を、どうやってとるんだ?」と投稿した。
ニューヨーク市南部地区連邦地裁に提起されたこの訴訟は、トランプ政権がDOGEに財務省の中央支払いシステムへのアクセスを許可したことが連邦法に違反していると主張している。
この支払いシステムは、税金の還付や社会保障給付を処理し、アメリカ国民の個人情報や財務データを大量に含んでいる。
この訴訟の審理は11日に予定されている。
下級裁判所の判決がホワイトハウスに不利な場合、トランプ政権の司法省の弁護士は必ず控訴するとみられる。
一連の訴訟は連邦司法制度を通じて時間がかかるもので、審理は最終的には連邦最高裁判所に達する可能性がある。
最高裁は現在、保守派判事が多数を占める。判事9人のうち3人はトランプ氏が任命した。これらの保守派判事は、連邦政府の支出に関する広範な権限を新たに、大統領とその仲間に与えようとする可能性がある。











