同性愛者だと公言した「世界初の」イスラム教指導者、殺害される 南アフリカ

イスラム教指導者のムフシン・ヘンドリクス氏

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画像説明, イスラム教指導者のムフシン・ヘンドリクス氏は1996年に同性愛者だと公表した

イスラム教指導者(イマーム)の中で、世界で初めて同性愛者であることを公言したとされるムフシン・ヘンドリクス氏(57)が15日、南アフリカで銃撃され殺された。

ヘンドリクス氏は南ア・ケープタウンで、同性愛者など社会から疎外されたイスラム教徒にとっての安全な場所となるモスク(礼拝所)を運営するなどしていた。

15日朝、南部デェベハ(旧ポート・エリザベス)の近くで、乗っていた車が待ち伏せされ殺害された。

女性同性愛者の結婚式で司式を務めたあと、殺害されたと報じられている。公式な発表はまだない。

ソーシャルメディアには、襲撃の様子とされる監視カメラ映像が投稿された。それによると、ヘンドリクス氏の乗った車が発車しようとしたところ、前方に別の車が近づき、進路をふさいでいる。襲撃者は車から降り、ヘンドリクス氏の乗った車に駆け寄り、後部座席の窓に何度か発砲している。

警察によると、ヘンドリクス氏は後部座席にいたという。

警察は、「顔を覆った正体不明の容疑者2人が自分たちの車から降り、(ヘンドリクス氏が乗っていた)車に向かって何発も発砲し始めた」と声明で説明した。

ヘンドリクス氏の訃報は、LGBTQ+(性的少数者)コミュニティーの内外に衝撃を与え、世界中から追悼の声が寄せられている。

国際レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランス・インターセックス協会(ILGA)のエグゼクティブ・ディレクター、ジュリア・エハト氏は、「ヘイトクライム(憎悪犯罪)の懸念がある」として徹底的な捜査を当局に要求。

「彼は南アフリカおよび世界の人々を、信仰との調和を図る旅において支え、導いた。彼の人生は、コミュニティーを超えた連帯がすべての人の人生に癒やしをもたらすことの証しとなっていた」と述べた。

「真の自分であることの必要性」

ヘンドリクス氏は、イスラム教の伝統的な解釈に異議を唱え、思いやりと包摂性のある信仰を支持した。

1996年に同性愛者であることを公表。ケープタウン内外のイスラム教徒コミュニティーに衝撃を与えた。

同年、「インナー・サークル」という団体を設立。信仰とセクシュアリティーの調和を求めるムスリム(イスラム教徒)を支援するとともに、安全な空間を提供した。その後、包摂性のあるモスクを創設した。

2022年には「ラディカル」(急進派)という題名のドキュメンタリーに出演。脅迫を受けていることについて、「真の自分であることの必要性は、死の恐怖よりも大きい」と語っていた。

ヘンドリクス氏はまた、LGBTQ+の人々が直面する精神衛生上の問題やトラウマに対処する必要性について、宗教界で語ることの重要性をたびたび指摘していた。

昨年、ケープタウンで開かれたILGA世界会議では、「宗教に対する敵視をやめることが重要だ」と話していた。

南アフリカは、アパルトヘイト(人種隔離)政策廃止後の憲法で、世界で初めて性的指向による差別から人々を保護した。2006年にはアフリカで初めて、同性婚を合法化した。

LGBTコミュニティーは盛況だが、同性愛者はなお差別や暴力に直面している。南アは世界で最も殺人事件の発生率が高い国の一つ。