ノーベル化学賞、北川進氏ら3人に 地球規模の問題解決に役立つ新素材を開発

スウェーデン王立科学アカデミーでの記者会見で、北川進氏、リチャード・ロブソン氏、オマー・M・ヤギー氏へのノーベル化学賞の授賞が発表された。ノーベル委員会の委員らの背後の大型スクリーンに、3氏の顔写真が映し出されている

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画像説明, ノーベル化学賞の授賞を発表するノーベル委員会の記者会見(8日、スウェーデン王立科学アカデミー)

スウェーデンの王立科学アカデミーは8日、ノーベル化学賞を、京都大学の北川進特別教授(74)、豪メルボルン大学のリチャード・ロブソン教授(88)、米カリフォルニア大バークリー校のオマー・M・ヤギー教授(60)の3人に贈ると発表した。それぞれの研究について、気候変動対策での二酸化炭素(CO2)回収や、化学を利用したプラスチック汚染の削減など、地球規模の大きな問題の解決につながる可能性があると評価した。

北川氏はスウェーデンでの授賞発表の記者会見に電話で参加し、「大変光栄でうれしく思います。ありがとうございます」と英語で心境を語った。いくつか質問を受けたあとには、「いつまでここにいなきゃいけないんでしょうか? 会合に出かけなければならないんです」と述べた。

授賞式は12月10日にストックホルムで行われる。賞金の1100万スウェーデンクローナ(約1億7000万円)を3人で分ける。

3人の研究は、微細な物質を入れ込む「金属有機構造体(MOF)」の開発だ。ノーベル委員会はこれを「分子アーキテクチャー」と呼んだ。

3人は、分子と分子の間に大きな空間のある構造物を作り、そこを気体や他の化学物質が流れる仕組みを開発した。

そうした「部屋」は、大気中のCO2や、永遠の化学物質と呼ばれるPFAS(有機フッ素化合物の総称)など、人が除去したい化学物質を捕まえ、ためるのに使用できる。

3人は1970年代~1980年代に、この構造体の研究をそれぞれ独自に始めた。ロブソン氏は、研究室の作業台に穴を開けるよう大学に依頼。木製のボールが木の棒にくっつく仕組みを作り、原子の化学結合を表した。

これまでのところ、MOFは小規模でしか活用されていないが、企業は大量生産の可能性を検討している。

応用法の一つとして考えられるのが、有害ガスの分解だ。核兵器で使用されるガスも想定される。

企業では、発電所や工場から排出される地球温暖化ガスのCO2の捕捉に使用できるかもテストしている。

構造体のモデルを前にしたヤギー教授。青いシャツ、茶系のジャケット、メガネを着けている

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画像説明, ヤギー教授

ロブソン氏は英ノース・ヨークシャー生まれで、1966年からメルボルン大学を拠点にしている。BBCの番組で、受賞のニュースは「大きな驚きではありませんでした。ここ何年間か、いろんな話が出ていましたから」と話した。

研究の潜在的な応用について問われると、「CO2を結合して世界の大気問題を解決するという話がありますが、私には現実的とは思えません。ただ、こうした種類の構造物は、そうした働きを小規模ならできます」と答え、過度の期待をかけないよう求めた。

賞金については、「実のところ、私の頭の中では最も大きなことです。それがすべての原動力だったというわけではありませんが、人生のこの段階では、そのことを考えるのはとてもうれしいことです」と話した。

今回の授賞は、地球上の困難な問題に取り組むうえで、化学にどれだけの価値があるかを示す新たな指標となっている。

英王立化学会のアネット・ドハティ会長は、「ノーベル賞は毎年、グローバル社会が直面する最大の問題への解決策を見いだすという難題に挑んでいる化学者たちに授与されています。よりよい医療、環境保護、クリーンエネルギー、すべての人のための安全な食料と水の確保などです」と述べた。

ノーベル委員会の委員らが記者会見の場で、笑顔で模型に手を添えている

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画像説明, 金属有機構造体(MOF)の模型を手にするノーベル委員会の委員ら

ノーベル委員会によると、北川氏の研究の動機となったのは、「無用之用」という考え方だった。これは、古代中国の思想家の荘子による、たとえすぐに利益をもたらさないものであっても価値あるものに変わる可能性はある、との思想を反映したものだ。

同委員会の説明では、ヤギー氏はヨルダンの首都アンマンで生まれた。電気も水道もない一つの部屋で、きょうだいと一緒に育った。

学校で分子構造に心を奪われ、15歳のときにアメリカに留学した。