インドネシア、国会議員の手当を削減へ 全国的な抗議の沈静化目指す

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インドネシアで国会議員への高額な住宅手当が明らかになり、国民が猛反発し、死者も出る大規模デモに発展するなか、各政党は一部の議員手当を撤回することで合意した。プラボウォ・スビアント大統領が8月31日、発表した。
インドネシアでは先週以来、首都ジャカルタを含む複数の都市で反政府デモが発生し、一部では警察との衝突も起きている。
抗議の背景には複数の問題があるものの、特に国民の反発を呼んだのは、国会議員に新たに支給される毎月の住宅手当だった。
プラボウォ大統領は31日、一部の手当を減額するなど、手当縮小の方針を発表した。
そのうえでプラボウォ大統領は、一部のデモは平和的な範囲を超えており、「反逆罪やテロ行為」に該当する可能性があると述べた。大統領は、抗議活動の影響ですでに中国訪問の中止を余儀なくされている。
大統領は、略奪や財産破壊に厳しく対応するよう警察と軍に命じたと明らかにした。AFP通信によると、31日にはスリ・ムルヤニ・インドラワティ財務相の自宅も略奪された。
抗議の焦点となったのは、国会議員に支給されている住宅手当が月額5000万ルピア(約45万円)増額されることだ。これによって議員手当の年間総額は、ジャカルタの年間最低賃金の約10倍に相当することになる。
これに対する抗議は、8月28日に首都のデモ現場近くで、バイクタクシー運転手のアファン・クルニアワン氏(21)が、警察車両にひかれて死亡したことを受け、激化した。
これを機に、警察がデモ隊に過剰な力を行使していると非難が高まった。警官7人が職業倫理規定に違反していたとされ、事実関係の調査が開始された。
インドネシアでは、タクシーやデリバリーのドライバーが長年にわたり、賃金や労働条件の不公平を訴えてきた。仲間が死亡したことで、運転手たちは連帯して抗議に臨んだ。
大統領と警察庁長官は共に、アファン・クルニアワン氏の死亡について公に謝罪した。大統領は「衝撃を受け、失望した」と警官らの行動を非難した。
29日夜にはデモ隊が地方議会の建物に放火し、3人が死亡した。抗議は週末にかけて続き、ジャカルタ中心部では警察が群衆を解散させるため催涙ガスを使用。一部の抗議者は警察施設に向けて、火炎瓶や爆竹を投げつけた。

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与党のレハユ・サラスワティ国会議員はBBCに対し、大規模な抗議の発生に「かなり驚いた」、「誰もこの事態を予想していなかった。ほんの数日のうちに、あっという間に起きた」と話した。
議員はその一方で、政府が抗議者の言い分を理解できていないという批判を否定。「状況が厳しいことは理解している。経済も一部の人々にとってはかなり、大変なのだと思う」と述べた。
そのうえで議員は、新しく発表された議会予算と手当の削減は、「私たちが(抗議者の)声を聞いていると、示す手段だ」とも話した。
プラボウォ大統領は、どの議員の手当が削減されるかは明言しなかったが、海外出張の一時停止も実施すると述べた。
しかし、こうした譲歩が、国内に広がる不満の収束につながるかどうかは不透明だ。インドネシア最大の学生団体「全インドネシア学生執行機構」のムザンミル・イフサン代表はロイター通信に対し、政府の対応は「不十分だ」と述べ、今後もいっそうの抗議行動を検討していると話した。
「政府は根深い問題を解決しなくてはならない」と代表は言い、「街頭の怒りには理由がある」と強調した。
抗議者は、賃金の引き上げ、税負担の軽減、汚職対策の強化を求めている。
今回の抗議は、昨年10月に就任したプラボウォ大統領にとって、初の重大な試練にあたる。軍人出身の大統領については、人権侵害の疑惑が数十年前から取りざたされてきた。
大統領に批判的な人々は、プラボウォ政権によってインドネシアが再び権威主義体制に戻るのではないかと懸念している。それに対して、プラボウォ氏は選挙戦で安定と経済発展を約束していた。








