ハマスのイスラエル攻撃、外国人も犠牲に 「イスラム国」並みに野蛮で残酷と米高官が非難

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画像説明, イスラエル南部の農場で働くタイ人が、ハマスの武装集団に殺害されたり連れ去られたと、タイ外務省は発表した

パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム武装組織ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃で、外国人の犠牲者が相次ぎ報告されている。タイ外務省は9日、イスラエルでタイ人12人がハマスに殺害され、11人が連れ去られたと明らかにした。アメリカ政府も、イスラエルで少なくとも11人の自国民が死亡したと発表。その野蛮な残酷ぶりは武装勢力「イスラム国(IS)」に匹敵すると、ハマスを非難した。

7日朝、ガザ地区からイスラエルに向けてロケット弾が発射された。同時に、パレスチナ側の戦闘員が陸海空のルートに分かれて、一斉にイスラエル南部へ侵入。イスラエルはこれに空爆で応戦した。

タイ外務省によると、7日から続く暴力行為で、イスラエルにいるタイ人8人が負傷した。このほか、12人がハマスに殺害され、11人が連れ去られたという。

同省は、タイ市民を帰国させるための空軍機が待機していると明らかにした。

イスラエルでは、約3万人のタイ人が農業に従事している。その多くはガザとの境界付近で働いている。

ネパール政府も、イスラエルで自国民10人が死亡したと発表した。

このほか、アメリカやイギリス、ドイツなどが、イスラエルでの暴力行為で自国民が死亡したり、誘拐されたり、行方不明になっていると発表している。

イギリス政府筋は、イギリス人10人以上が死亡または行方不明になっている恐れがあると、BBCに話した。

インド政府は、イスラエルにいる自国民を帰国させるために「積極的に」取り組んでいるとしている。報道によると、イスラエルには約1万8000人のインド人が居住し、働いている。

イスラエルのタイ人労働者が巻き込まれる

タイのピパット・ラチャキットプラカーン労働相は、戦闘が起きている地域で約5000人のタイ人労働者が働いているが、イスラエル軍が安全な場所への労働者の移送を開始したと、AFP通信に述べた。また、労働者1099人が帰国を希望していると付け加えた。

ガザ地区に近いミヴタヒム町の農場で働く人々は、7日早朝にロケット弾が発射された後、ハマスの武装集団が農場を襲撃した時のことを語った。

「ハマスの武装集団はまずロケット弾を発射して、私たちの農場を襲撃した。私は走って自分の寝室に隠れなくてはならなかった」と、ウドムポーン・チャンパホムさんはBBCに話した。

チャンパホムさんはその後、イスラエル兵に助け出された。その時一緒にいた同僚のタイ人は、足に「瓶のふたほどの大きさ」の銃創を負ったが、回復しつつあるという。

Thai worker Udomporn Champahom

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画像説明, イスラエルの農場で働くタイ人のウドムポーン・チャンパホムさんは、仲間と一緒に隠れたと話す

別のタイ人労働者は、「走ってトラックの下に潜り込んだら、ハマス(の戦闘員)に引きずり出され、至近距離で銃を突き付けられた。(戦闘員は)地面に向けて発砲した」と、名前を伏せてBBCに語った。この労働者はその後、なんとか逃げ出したという。

イスラエルのアボカド農園で夫のアヌチャ・アンケオさんが2年近く働いているというワニダ・マールサさんは、夫も武装集団に捕らえられたと、BBCタイ語に話した。

ハマスが先週末に公開した動画には、アンケオさんが映っていた。「(動画の男性は)絶対に夫」だと、マールサさんは述べた。

そして、「バンコク時間の7日午前2時(イスラエル時間6日午後10時)以降、夫と連絡が取れていない。娘が寝る直前に、電話をかけたのが最後」だと付け加えた。

「イスラム国」に匹敵

アメリカのジョー・バイデン大統領は9日、ハマスによるイスラエルへの攻撃で少なくともアメリカ人11人が死亡したと明らかにした。

米国防総省高官は、ハマスによる前例のない攻撃について、「その野蛮な残酷ぶりは、ISに匹敵する」と非難した。

米当局は、殺害された人の身元は明らかにしていない。

バイデン大統領は、ハマスが人質として拘束している人の中に米市民が含まれている可能性は「高い」と述べた。

「非常につらい。許しがたい憎悪と暴力によって、家族が引き裂かれている」と、バイデン氏は声明で述べた。

さらに、アメリカはイスラエルによる人質発見を支援するため、専門家を派遣し、情報を共有しているとした。

国防総省高官は、防空と軍需品の支援を増やしているとしている。

行方不明者の中には、アメリカ系イスラエル人のハーシュ・ゴルバーグ=ポリンさん(23)も含まれる。武装集団に襲撃された、ガザ地区に近いイスラエル側の砂漠で開かれていた「スーパーノヴァ」音楽フェスティバルに参加していたという

ゴルバーグ=ポリンさんの両親は、イスラエル紙エルサレム・ポストに対し、息子から「愛している」と「ごめんね」という2つのメッセージを受け取ったと語った。

「息子に無事でいてほしい。ただそれだけだ」と、父親のジョナサン・ポリンさんは話した。

アメリカとイスラエルの二重国籍を持つイスラエル国防軍の兵士、イタイ・チェンさんは、7日から行方不明になっていると報じられている。

父親のルビー・チェンさんは米CNNに対し、息子を見つけるために国務省に助けを求めたが、アメリカは率先して捜索しようとはしていないようだと話した。

米オハイオ州シンシナティ出身で、イイスラエルで長く暮らしているハナ・カッツマンさんは、息子のハイムさんがガザ地区との境界に近いイスラエル南部のキブツ(農業共同体)で殺害されたと、フェイスブックに書いた。

イスラエル在住の米市民アビー・オンさんは米MSNBCに対し、親族5人が人質に取られたと語った。7日に親族から、ガザ地区に近い南部ニル・オズの自宅にハマスの戦闘員がいるというワッツアップ・メッセージが届いたという。

その後、インターネット上に投稿された動画に、親類の12歳男子が映っているのを見たという。

An Israeli fire fighter walks through the aftermath of burned cars after a rocket fired from the Gaza Strip hit Ashdod

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画像説明, ガザ地区から撃ち込まれたロケット弾で焼け落ちた車の前を歩くイスラエルの消防士(イスラエル南部アシュドド)

こうした中、カナダの国際関係省は、少なくとも1人のカナダ人が死亡し、2人が行方不明になっていると認めた。

音楽フェスティバルに参加していた、モントリオール在住のアレクサンドル・ルックさん(33)が死亡した。父親のハイムさんがCBCの取材で認めた。

「息子はごく普通のやり方で、日常のひとコマを楽しもうとしていた、普通の若者だった」

ネパール人学生10人が死亡

イスラエル国内では、50カ国以上の国民が働いていると考えられている。

ネパール政府は8日、イスラエルで農業を学ぶネパール人学生10人が死亡したことを認めた。

犠牲者の1人は、ネパール東部のマドゥワン村出身のラジェシュ・クマール・スワルナカルさん(27)。農学部の最終学年で、オーストラリアへ行くことを希望していたと、きょうだいのムケシュさんはBBCネパール語に語った。

スワルナカルさんを「イスラエルに送り出すことに、私は乗り気ではなかった」と、ムケシュさんは話した。「自分は奨学金をもらえたのだと彼は強調して、イスラエルでのプログラム終了後にオーストラリアへ行く手続きができるよう、お金を貯めるつもりだと言っていた」。

父親のラジ・クマール・スワルナカルさんは、紛争が起こりやすい地域での職業訓練に息子を送り込んだ、イスラエル当局の怠慢を感じているという。

ネパールによると、計265人の学生が、イスラエル国内の様々な農場で働いている。

同国のファーウェスタン大学の学生17人が、ガザ地区近郊でハマス戦闘員に襲撃された。10人が死亡し、4人が地元の病院で治療を受けている。2人はイスラエル・テルアヴィヴまで助け出されたが、1人が行方不明になっている。

在イスラエルのネパール大使館によると、200人以上の自国民が、帰国希望の書類に記入している。イスラエルでは農業従事者に加えて、4500人のネパール人が介護士として働いているとの報告がある。