イスラエルはハマスと「長く厳しい戦争」に直面=イスラエル首相 双方の死者計1100人以上

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イスラエル軍は8日、前日にパレスチナ自治区ガザ地区からイスラエル南部に侵入したイスラム組織ハマスの戦闘員が、依然として南部で戦っていると明らかにした。ハマスの攻撃によるイスラエルでの死者は、700人以上に上るという。イスラエルの反撃によるパレスチナ側の死者は400人以上という。
現地で取材するBBCのアリス・カディー記者によると、7日早朝にハマスの攻撃が始まって以来36時間がたった時点でも、ガザからイスラエル南部へのロケット弾攻撃は続いた。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は8日、イスラエル国民に対して、「長く厳しい戦争」に突入するのだと表明した。
亡命中のハマス指導者イスマイル・ハニヤ氏は同日、ハマスが「偉大な勝利を目前」にしていると述べた。
イスラエル国防軍(IDF)が8日午後に発表した内容によると、7日以来、イスラエル人は700人以上死亡し、2150人が負傷した。ガザ地区からイスラエルに発射されたロケット弾は3284発(ハマスは5000発以上と主張)。イスラエルが攻撃したハマスの標的は、653カ所に上る。
一方パレスチナ当局によると、イスラエルの反撃によりガザでは413人が死亡し、2300人が負傷した。
アメリカ政府がイスラエルに約束した支援の一環として、アメリカ軍は8日、地中海東部へ艦船や戦闘機を派遣した。イスラエル軍に追加の装備や砲弾・銃弾も提供するという。
ロイド・オースティン米国防長官は、空母「ジェラルド・R・フォード」、ミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦4隻のほか、複数の戦闘機が地中海東部へ向かっていると説明した。
ホワイトハウスは、今後近日中に追加軍事支援をイスラエルへ届けると説明。また、アメリカはイスラエルの敵国が現在の状況に便乗しないように対応するという。
アントニー・ブリンケン米国務長官は同日、「複数のアメリカ国民が死亡したとの情報を得ている。内容を確認するため、積極的に取り組んでいる」と、米メディアに話した。アメリカのほか、フランス、ウクライナ、タイの各国も、自国民が今回の一連の攻撃で死亡したと報告している。

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音楽フェス会場で250人の遺体
7日早朝には数百人のハマス戦闘員がイスラエル南部に侵入し、兵士や民間人を殺害した。さらに、イスラエル軍によると「相当数」の人質をガザ地区へ連行した。
イスラエルはこれに空爆で応戦しており、8日朝にも攻撃を続行している。イスラエル空軍は、ガザ地区の「作戦インフラ」を標的にしているのだと説明した。
イスラエル軍は同時に、北に国境を接するレバノンに対しても砲撃を実施した。レバノンから、イスラエルとの係争地ドヴ山シェバ農場のイスラエル軍に向けて迫撃砲が撃ち込まれたため。
レバノンのイスラム組織ヒスボラは、「パレスチナの抵抗に連帯」して、イスラエルを攻撃したと主張した。
パレスチナ戦闘員が7日朝にガザからイスラエルに侵入したのに対抗し、イスラエル軍はガザを攻撃。ガザの住民は7日夜から翌朝にかけて、自宅を離れて市内中心部に移動するかシェルターに避難するよう呼びかける、テキストメールを受け取った。
ガザに近い砂漠で開かれていた「スーパーノヴァ」音楽フェスティバルの会場から、多くのイスラエル人が慌てながら逃げ惑う映像が、オンラインに浮上した。同様に、女性が車両に押し込まれ拉致される複数の映像も投稿されている。
音楽フェスティバル会場で救助活動にあたった当局によると、現場では250人の遺体が見つかったという。
イスラエルのネタニヤフ首相は同日夜の演説で、戦争は「ハマスによる殺人攻撃によって、我々に押し付けられたもの」だと主張。数時間のうちにイスラエル領に入った戦闘員の大半を一掃することで、戦争の第一段階は終わると述べた。イスラエルは自国民の安全を回復し、戦争に勝利するとも強調した。
イスラエル政府はさらに、ガザ地区への電気、燃料、物資の供給を停止する方針を明らかにした。
どのように始まったのか
パレスチナ戦闘員が自国南部に潜入するという、イスラエルにとっての悪夢のシナリオは、ユダヤ教の安息日にあたる土曜日の夜明け直後に始まった。7日は、ユダヤ教の祭日シムハット・トーラーでもあった。
戦闘員はイスラエルが設置した分離フェンスを切断したり爆破したりした上、バイクやパラグライダーで、あるいは海からイスラエルへ一斉に侵入した。イスラエル国防軍の報道官によると、その人数は数百人に上る。7日のうちにイスラエルへ発射されたロケット弾は3000発を超えた。
「(パレスチナ戦闘員は)数十ものイスラエル集落や国防軍の基地を攻撃し、一戸一戸、回っていった」と、イスラエル軍のヨナタン・コンリクス中佐は述べた。
「イスラエルの民間人を、それぞれの自宅で、冷徹に処刑した。イスラエルの民間人と軍関係者を、ガザへ引きずっていった。女性や子供、高齢者や障害者もだ」
複数のイスラエル人が報道機関に連絡をとり、おびえながら自宅に隠れているのだと話した。ガザ近郊のネティヴ・ハアサラの町では、住民15人がハマス戦闘員に射殺されたという。
イスラエル南部スデロトに住むシュロミさんは、「外に出ると、大勢のテロリストや民間人の遺体を目にした。街が死体の海になっていた。銃撃された車も。スデロト市内の道路やほかの場所に、たくさんの遺体が横たわっていた」と話した。
イスラエル軍は次第に、南部の大半で治安を回復した。イスラエルの報道によると、南部キブッツ・ベエリの食堂で人質が拘束された事件では、18時間後に人質が解放された。南部オファキムの町でも、イスラエル軍が間もなく人質を解放し、戦闘員たちを殺害したという。

ジョー・バイデン米大統領は、「テロ組織が指揮する攻撃」を受けているイスラエルを、アメリカは「揺るぎなく支持する」と述べた。
ハマスの軍事部門は、数十人のイスラエル人を拘束しており、その中には軍幹部も含まれるとしている。
双方の当局によると、7日から日付が変わるころには、ガザでの負傷者とイスラエルでの負傷者はそれぞれ1500人を超えた。
イスラエル軍は、ハマスによる前例のない暴力には、前例のない形で対応するとしている。すでに数万人の予備役を招集し、近くガザで地上戦を開始するものとみられている。
イスラエル軍は7日、ガザシティの繁華街にある11階建てのパレスチナ・タワーを空爆で破壊した。このビルの屋上には、ハマスのラジオ局があった。
イスラエル空軍は、「ハマスのテロ幹部が、テロ活動のために使用する多層階の建物2棟における軍事インフラ」を破壊したと明らかにした。攻撃前には住人に、避難を勧告していたという。
7日にはヨルダン川西岸でも、複数の場所で暴力沙汰が相次いだ。パレスチナ人の医療関係者によると、イスラエル軍と対立する中で、パレスチナ人6人が射殺された。
ハマス軍事部門トップのモハメド・デイフ司令官は、ハマスの作戦に参加するよう、各地のパレスチナ人に呼びかけた。
「神のご加護を得て、我々はイスラエルの犯罪をいよいよ終わらせると決意した。何の責任もとらされないまま混乱を引き起こしても許される時期は終わったのだと、敵が理解するように」と、司令官は述べた。
ハマス指導者ハニヤ氏はBBCに対して、パレスチナ勢力が暴力行為をヨルダン川西岸とエルサレムに拡大しようとしていると主張した。
ハマス広報官のガジ・ハマド氏はBBCに対して、今回の攻撃についてはイランが直接、ハマスの後ろ盾になっているのだと話した。
ハマスと政治的に対立するパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は、緊急会議を招集。「入植者や占領軍による恐怖」から自衛する権利がパレスチナ人にはあると主張した。
国際社会では、ハマスを非難する声が多く出ている。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「民間人が攻撃され、自宅から拉致されたとの情報に戦慄(せんりつ)している」と述べた。
イギリスのジェイムズ・クレヴァリー外相は、「イスラエルの市民に対するハマスの恐ろしい攻撃を、イギリスはきっぱり非難する」と述べ、「イギリスは常に、イスラエルの自衛権を支持する」と表明した。
他方、サウジアラビア政府は事態のエスカレーションを直ちにやめるよう呼びかけた。「占領の継続」に伴う危険と、「パレスチナ人から正当な権利を奪い続けること」による危険を、自分たちは繰り返し警告してきたとも述べた。













