英高速鉄道「HS2」、残りの計画を中止 スーナク首相が党大会で発表

A worker walks outside the HS2 construction site at Euston Station

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イギリスのリシ・スーナク首相は4日、保守党の党大会で、イングランドの南北を結ぶ高速鉄道「ハイスピードツー(HS2)」の残りの計画を取りやめると発表した。

2020年にボリス・ジョンソン元首相が発表したHS2は、第1フェーズでロンドンとバーミンガムを結んだ後、第2フェーズでマンチェスターおよびリーズまで延伸する計画だった。都市間移動での大幅な時間短縮が見込まれていた。

第1フェーズは建設が進んでいるものの、大幅に遅れが出ており、コストもかさんでいる。第2フェーズについては2021年にすでに、バーミンガムとリーズを結ぶ区間の敷設が中止となっていた。

スーナク首相は今回、第2フェーズで残っていたバーミンガム・マンチェスター間と、バーミンガムからイースト・ミッドランズ・パークウェイにかけての計画を中止すると明言。代わりに別の鉄道や道路、バス網に約360億ポンド(約6兆5000億円)を投じると述べた。

HS2についてはここ数週間、計画が一部中止されるとの憶測が飛び交っていた。スーナク氏は、大幅なコスト増や計画の遅延が決定打となったと説明した。

当局が最後に行ったHS2のコスト試算では、中止された東部区間を除いても、総額が約710億ポンドに上った。しかし、これは2019年時点の物価で計算しており、それ以降の資材や賃金の高騰は考慮されていない。

HS2計画を示した地図

スーナク氏は党大会の演説で、新型コロナウイルスのパンデミック以来の旅行をめぐる変化によって、HS2の経済的利点が「大幅に弱まった」と述べた。

また、このプロジェクトは大都市間のリンクが「なにより重要」であるという「誤った合意形成」から生まれたとした。

その上で、政府はHS2の残りをキャンセルすることで浮いた資金を「1ペニー残らず」再投資すると説明。合わせて360億ポンドを確保すると述べた。

スーナク氏は、「ロンドン以外のすべての地域は、HS2のもとで行われるのと同じか、それ以上の政府投資を受けることになり、より早く結果が出る」と述べた。だが、この資金がいつ利用できるようになるかは明らかではない。

さらに、イングランドの南北を結ぶよりも、東西を結ぶ方が「はるかに重要」だと発言。「数百件」の代替プロジェクトに投資するつもりだと語った。これには、北部の各都市間の鉄道の電化や、イギリス全土での道路の再舗装などが含まれる。

このほか、マンチェスターとリヴァプールを「より良くつなぐ」ために、120億ポンドを確保しているとも発言。ただし、これは必ずしも高速鉄道になるとは限らない。

計画中止に批判の声

政府に対しては、ロンドン以外の諸地域を「レベルアップ」する使命を放棄したとして、批判する声も出ている。

デイヴィッド・キャメロン元首相は、「一世一代の機会が失われた」とX(旧ツイッター)に投稿。計画取りやめは、「将来の長期プロジェクトに対する合意形成をより困難にする」だろうと述べた。

野党・労働党のパット・マクファデン影の内閣担当相は、バーミンガムとマンチェスターを結ぶHS2の復活を同党として約束することは避け、次の選挙で勝利した場合は「数字を見る」必要があると述べた。

労働党はまた、スーナク氏の運輸整備計画の大半はすでに公約、あるいは計画にあるもので、新しい投資とは言えないと指摘している。

英労組GMBの調査主任を務めるローレンス・ターナー氏は、「将来の政府がこの破滅的な決定を覆すことができるように」、HS2の計画ルートの保護が「不可欠」だとした。

バーミンガムとマンチェスターを結ぶHS2の廃止が決定したことに対し、イングランド北部の指導者たちも反発している。グレーター・マンチェスターのアンディ・バーナム市長は、この地域には「不満と怒り」があると述べた。

「私が住んでいる場所、私が代表を務めているような場所の人々は、交通に関しては二級市民として扱われることがあるようだ」

リヴァプールの商工会議所は、同市の企業を支援する「有効な計画」が必要だと主張。これまでのところ、「具体的な計画も、具体的なスケジュールも、効果の約束もない」と述べた。

スーナク首相は、与党幹部からもここ数日、計画を中止しないよう要求されていた。幹部らは、中止は「大きな悲劇」であり、イギリスへの潜在的な投資家を遠ざけてしまうと訴えていた。