ロシア、またもドナウ川沿いの港を攻撃 ルーマニアの対岸

ジェイムズ・ウォーターハウス・ウクライナ特派員、ヤロスラフ・ルキフ、BBCニュース(キーウ、ロンドン)

Firefighters were still fighting the blaze early on Wednesday morning

画像提供, Oleh Kipper/Odesa ODA

画像説明, ウクライナ当局が公開した、ドローン攻撃を受けた建物での消火活動の写真

ウクライナ南部のドナウ川沿いのイズマイル港で2日、ロシアのドローン(無人機)による攻撃があり、施設が破壊された。

同港は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のルーマニアから、ドナウ川を挟んですぐの距離にある。

穀物貯蔵施設と、穀物を積載するための昇降機が損壊した。

ウクライナは、アフリカ各国や中国、イスラエルに輸出される予定だった穀物4万トン近くが被害を受けたとしている。

ロシアは7月、ウクライナが黒海経由で小麦やトウモロコシなどを安全に輸出できるようにする協定から離脱。その後、ウクライナの港への攻撃を開始した。

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Presentational white space

ウクライナのオレクサンドル・クブラコフ・インフラ担当相はツイッター(現在は「X」)に、「きょう攻撃を受けたのは、世界の食料安全保障の基礎となる港そのものだ」と投稿した。

現場から3キロほど離れたドナウ川のルーマニア側から撮影された映像では、2日にイズマイルの港湾地区から大きな炎が上がっているのが確認できる。

ルーマニアのクラウス・ヨハニス大統領は、ロシアが「ルーマニアに近い」ウクライナのインフラを攻撃し続けていることは容認できないと非難した。

オデーサ州のオレフ・キペル知事は、現場では救急隊が作業に当たっているが、犠牲者は報告されていないと述べた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「残念ながら損害が出ている」と述べた。キペル知事はソーシャルメディアに、攻撃を受けた複数の施設の写真を投稿した。

ウクライナ国防省によると、昇降機も被害を受けている。当局は、貨物ターミナル、倉庫、昇降機が被害を受けたとして、イズマイル地区検察が捜査を開始したと述べたが、オデーサ州のどこかは明かさなかった。

ウクライナは世界有数の小麦とトウモロコシの輸出国だ。

国連食糧農業機関(FAO)のデータによると、ソマリアは2021年、消費する小麦の90%をウクライナとロシアに頼っていた。

ソマリアやケニア、エチオピア、南スーダンなどの5000万人以上が、数年にわたる降雨不足で食料支援を必要としている。

国連は、ロシアとウクライナの穀物協定によって、アフガニスタンやエチオピア、ケニア、ソマリア、スーダン、イエメンなどに合わせて62万5000トンの食料が人道支援物資として輸出されたと述べている。

フランス外務省は、ウクライナの港で穀物輸出に被害が出たことを受け、ロシアが「意図的に世界の食料安全保障を危険にさらしている」と非難した。

ロシアは先週にも、ルーマニアに近いドナウ川沿いのレニ港にドローン攻撃を行っている

ルーマニアのヨハニス大統領は2日、同国に近い地域への攻撃は戦争犯罪であり、「ウクライナがその食料品を必要としている世界各地に送りだす能力」にさらに影響が出たと述べた。

また先には、黒海沿岸のオデーサ港およびチョルノモルスク港を攻撃。当局によると6万トンもの穀物が破壊された。

Ukrainian officials posted images of the damage to buildings at the port in Izmail

画像提供, Ukraine prosecutor

画像説明, ウクライナ当局は、イズマイル港で被害を受けた建物の写真を公開した

西側諸国は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が食料を「兵器化」していると非難している。しかしプーチン氏は、2日にトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と行った電話会談で、ロシアの穀物と肥料の輸出が保証されるまでは国連の協定に復帰しないと強調した。

ロシア政府もまた、輸出が困難な状況にいらだっており、制裁の緩和を求めている。

ロシアは7月17日に穀物協定から離脱した際、黒海のウクライナの港に向かう船舶を軍事的な標的にすると脅迫した。こうした港では多くのウクライナ船舶が出入りしており、実質的な海上封鎖だった。

これにより、ウクライナは輸出のために主要な黒海の港が使えなくなったため、ドナウ川の港が最善の選択肢とみられている。

しかし河川を使っても、ウクライナの穀物輸出量はさらに半減するとみられている。また、輸送コストも割高だ。

ロシアがウクライナの港を継続的に攻撃することで伝えようとしているのは、「穀物を輸出するには私たちが必要だ」というさりげないメッセージだ。

交渉の要になっているのはウクライナの疲弊した経済と、ウクライナの穀物が届かなければ飢餓(きが)に陥る危険のある数百万の人々だ。

船舶は黒海を渡り、ドナウ川沿いのウクライナの港まで航行を続けている。また、穀物はウクライナだけでなく、モルドヴァを経由して、道路や鉄道でドナウ川に到達することもできる。

穀物はドナウ川に到着すると、黒海に面するルーマニアのコンスタンツァ港へ輸送され、安全に南へと輸出される。

ウクライナの港湾管理局では、2日もイズマイルの港は「営業」となっていた。しかしロイター通信の取材に応じた関係者は、同港の運用は中止されていると話した。

ウクライナの穀物はまた、ポーランド経由で陸路で輸出されている。

ウクライナは欧州連合(EU)の「連帯の経路」の助けを借り、他の輸出ルートを模索している。今週にはドミトロ・クレバ外相が、クロアチアとドナウ川およびアドリア海の港を使用する可能性について合意したと発表した。

だが、EU加盟国経由でのウクライナの穀物輸出は、地元市場に影響を与えるため、いくつかの国で難しい内政問題となっている。ポーランドやルーマニアなど数カ国は、ウクライナ産小麦とモロコシの輸送は認めているものの、国内販売を一時的に禁止している。

ロシアが穀物協定から離脱した直後、世界の各市場で小麦価格が高騰した。

また、アフリカやアジアの途上国での食料安全保障にも懸念が出ている。

ウクライナの首都キーウでは2日に10機以上のドローンによる攻撃があったと、当局が発表した。

これらは全て防空システムで破壊されたが、落下した破片で住宅ではない建物数棟が被害を負ったという。

ロシアはこの攻撃について声明を出していない。

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