ギリシャ沖の移民船沈没、当局の説明と航行データに食い違い
ニック・ビーク欧州担当編集委員、コスタス・カレルギス欧州担当シニアプロデューサー(ギリシャ・カラマタ)、BBCニュース

地中海のギリシャ南部沖で移民を乗せた漁船が沈没し、数百人が死亡したとみられる事故で、BBCは18日までに、漁船が航行を続けていたとするギリシャ沿岸警備隊の説明と食い違う証拠を入手した。
この海域にいた他の船舶の動きの解析から、定員超過だった漁船は14日未明に転覆するまでの少なくとも7時間、動いていなかったことがわかった。
ギリシャ沿岸警備隊は当時の漁船の状況について、イタリアに向けて航行中で、救助は必要としていなかったと主張している。
ギリシャ当局はBBCの調査結果について、まだ取材に答えていない。
今回の沈没事故では、少なくとも78人の死亡が確認されている。国連は、最多500人がなお行方不明だとしている。
国連はまた、ギリシャの事故対応に関して調査を求めている。同国に対しては、もっと早く行動し、本格救助を進めるべきだったと批判が出ている。
一方、ギリシャ政府は、船に乗っていた人々は沈没直前まで助けを求めておらず、危険な状態にもなかったとしている。
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BBCは、船舶の動きなどの情報を提供するウェブサイト「マリン・トラフィック」のデータのアニメーションを入手した。
それには、漁船が沈没した狭いエリアでの長時間の活動が記録されている。これは、漁船の航行に問題はなかったという当局の発表に、疑問を投げかけている。
漁船は追跡装置をつけていなかったため、アニメーションの画面には表れない。沿岸警備隊や軍の船舶も、位置情報を共有する必要がないため、同様に動きは確認できない。

画像提供, Greek Coast Guard
沿岸警備隊の説明と食い違い
欧州連合(EU)の国境警備隊である欧州対外国境管理協力機関(フロンテックス)は、13日午前8時ごろに移民を乗せた船を最初に確認し、ギリシャ当局に報告したとしている(時間は以下も含めすべてグリニッジ標準時間。ギリシャ時間はこれより3時間進んでいる)。
海でトラブルに見舞われた移民の緊急連絡先となっている「アラーム・フォン」は、同日午後0時17分に、漁船が遭難しているとの電話を受けたと説明している。
BBCは、BBCヴェリファイ(検証チーム)が本物だと確認した映像や写真のほか、裁判記録や航行記録も使い、この海域におけるその後の船舶の動きを分析した。
マリン・トラフィックのアニメーションからは、「ラッキー・セイラー」(Lucky Sailor)という船が午後3時に突然、北に針路を変えたことがわかる。
同船の所有者は、BBCに航行記録を提供するとともに、沿岸警備隊から移民船に近づいて食料と水を渡すよう要請されたと説明した。
それから約30分後の午後3時35分、沿岸警備隊のヘリコプターが移民船を発見した。当局は当時の同船について、安定して航行していたと主張し続けている。

画像提供, Marinetraffic

しかし、その2時間半後の午後6時ごろ、「フェイスフル・ウォリアー」(Faithful Warrior)という別の船が同じ海域に移動し、漁船に物資を提供した。
「フェイスフル・ウォリアー」の所有者は、捜査当局から事情を聞くようBBCに話した。
同船をめぐっては、この船から撮影されたとされる映像が浮上している。そこには、海上でロープを使って移民船に物資を届ける様子が映っている。他の船は見えない。
BBCヴェリファイは、映像の中の動いていない船について、移民船と形が一致することを確認した。また、気象条件も当時報じられていたものと合うことを確認した。この映像がいつ撮影されたのか、正確にはわかっていない。
ギリシャ当局は当初、移民船について、午後7時40分から10時40分までは「安定したコースと速度」を保っていたと主張していた。
最初の声明では、少し離れた位置から注視していたと説明。しかし、当局があとで公表した近接撮影の画像(同じ時間帯に撮影)からは、移民船がまったく移動していなかったことがうかがえる。

画像提供, Greek Coast Guard

政府報道官はその後、危険度を判断するため沿岸警備隊が移民船に乗り込もうとしたが、船上の人々は取り付けられたロープを外し、助けを望まなかったと説明した。
それまでの7時間の船舶の動きは、すべて特定の位置に集中している。このことから、移民船がほとんど動いていなかったことがうかがえる。
アニメーション図の縮尺から、移民船は数カイリほどしか移動していなかったと考えられる。地中海の最も深い部分で遭難した船が、風と波で移動するであろう距離だ。
遭難した人々が船を揺らしたことで、移動した可能性もある。
この間、移民船は問題はなく安全にイタリアに向かっており、そのため沿岸警備隊は救助に乗り出さなかったと、ギリシャ政府は主張している。
しかし午後11時、移民船は数百人を乗せたまま沈没。アニメーションからは、いくつもの船舶が慌ただしく救助に向かっていたことが分かる。
それらの船の1つに、「セレブリティ・ビヨンド」があった。同船から撮影された災害直後の映像は、のちにBBCに提供された。
その後、豪華ヨット「マイアン・クイーン」は、生存者104人のうちの何人かを陸に運ぶのを支援するよう指示された。
救助された人々は無事、ギリシャ・カラマタ港に運ばれた。だが、ギリシャの対応全般については疑問が残ることになった。








