英作家ロアルド・ダール氏の作品の「表現」変更に賛否 「太った」から「大きい」に

Roald Dahl

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画像説明, 故ロアルド・ダール氏

「チャーリーとチョコレート工場」など児童文学の名作で知られるイギリスの作家、故ロアルド・ダール氏の作品中の表現が、出版社によって変更された。登場人物の容姿や体重に関する記述などが削除されており、激しい論争が起きている。リシ・スーナク首相も批判の声を上げている。

出版社は、「BFG: ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」(邦題「オ・ヤサシ巨人BFG」) や「チャーリーとチョコレート工場」(同「チョコレート工場の秘密」)などの作品について、現代の読者により適したものに更新されたと発表した。

ロアルド・ダール・ストーリー・カンパニー(RDSC)は、2020年から続く見直しプロセスの過程で生じた編集は、「小規模かつ慎重に検討されたもの」だと説明した。

そうしたなか、スーナク首相の報道官は、フィクション作品は「修正ではなく維持」されるべきだとした。

同紙によると、「チャーリーとチョコレート工場」に登場するオーガスタス・グループの容姿は「巨大」(enormous)と表現され、全ての本から「太った」(fat)という言葉が削除された。

「The Twits」(邦題「アッホ夫婦」)では、ミセス・ツィット(アッホ夫人)についての「醜くて野獣のよう」という描写から「醜くて」(ugly)が削除され、シンプルに「野獣のよう」となった。「変なアフリカの言語」という表現からは「変な」(weird)が削除された。

BFGが着ているコートの色は黒ではなくなり、メアリーに関する「white as a sheet」(顔が真っ青、シーツのように白い)という表現は「still as a statue」(じっとしている)に変更された。

また、メンタルヘルスを重視した結果、「クレイジー」や「狂っている」(mad)という言葉も削除されたと、テレグラフは伝えている。

「ばかげた検閲」、変更で「より面白くなった」

こうした変更に賛同する声がある一方で、批判的な人もいる。

小説「真夜中の子供たち」や「悪魔の詩」で知られる英作家サー・サルマン・ラシュディは、「ロアルド・ダールは天使ではなかったが、これはばかげた検閲だ」とツイート。出版社は「恥じを知るべき」だとした。

「ダーク・マテリアルズ」シリーズで知られる英作家フィリップ・プルマン氏はBBCラジオ4に対し、ダール氏の作品が不快なものだと判断されるのなら、内容を変更するのではなく「風化するがままにすべき」だと述べた。

「ダール氏の作品で私たちが不快な思いをするなら、絶版にすればいい」

「ロアルド・ダールのような、商業的に大きな影響力を持つ作家がいることであまり注目されていない、今日活動しているほかの素晴らしい作家が書いた作品を読んでみてほしい」

一方で、インドの詩人兼作家のデブジャニ・チャタジー氏は、「出版社が彼(ダール氏)の作品を見直すのは非常に良いこと」だとみている。

「この作業はかなり慎重に行われていると思う。例えば、『太っている』(fat)という言葉の代わりに、『巨大な』(enormous)が使われるようになったが、どちらかというと『巨大な』の方が面白い表現だと思う」

「賛辞」か「精神の排除」か

北アイルランドの児童文学作家ジョン・ドハティ氏はBBCラジオ5ライブに対し、「BFGが黒いマントを持ってはいけない理由なんてない。ちょっとばかげているようにみえる」と述べた。

「例えばオーガスタス・グループについて言うと、彼は貪欲で、食べることをやめないため、かなり太っているという設定で、それがキャラクター全体における重要な部分になっている」

「いまの時代、それが不快だという意見もあるかもしれない」、「そういう判断をするなら、該当する本を絶版にするしかないと思う。『ダール氏の言葉は変更しよう、でもキャラクターは残そう』というのは成立しないと思う」と、ドハティ氏は述べた。

イギリスの元教師で作家のケイト・クランシー氏は2021年、出版した回顧録の表現をめぐり批判を受け、内容を改訂した。子ども向けの本は、特に慎重に扱うべきだと、クランシー氏は語った。

英紙サンデー・タイムズの文芸部門の副編集者ローラ・ハケット氏は、ダール氏の作品の原文を、「そのあふれるほどの、不快で色鮮やかな栄光」と共に、自分の子どもたちに読み聞かせ続けるつもりだと述べた。

「その意地の悪さがダール作品をとてつもなく面白くしていると思う」と、ハケット氏はBBCラジオ5ライブに語った。

「暴力やきれいではないもの、友好的ではない表現をすべて取り除くことは、その物語の精神を取り除くことになる」

「現代のすべての子どもたちに楽しんでもらえるように」

Gene Wilder as Willy Wonka and Peter Ostrum as Charlie Bucket on the set of the film Willy Wonka & the Chocolate Factory, in 1971

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画像説明, 「チャーリーとチョコレート工場」は、1971年映画「ウィリー・ウォンカとチョコレート工場」としてさらに人気を得た

ダール氏の作品の見直しは、RDSCと出版社Puffin、児童文学における包括性とアクセシビリティを目指す団体Inclusive Mindsが連携して行った。

RDSCの広報担当者は、「ロアルド・ダールの素晴らしい物語とキャラクターが、確実に現代のすべての子どもたちに愛され続けるようにしたい」とした。

「何年も前に書かれた本を新たに出版する場合に、本のカバーやページのレイアウトといった他の細かい部分を更新すると同時に、使用されている言葉を見直すことは珍しいことではない」

さらに、「私たちの基本理念は、ストーリーやキャラクター、もともとの文が持つ不敬で鋭い精神を維持することだ」と付け加えた。

1990年に74歳で死去したダール氏は、いまでもイギリスで最も人気のある児童文学作家の1人で、2021年には米動画配信大手ネットフリックスが全作品に対する権利を獲得した。

一方で、生涯を通じて発信された反ユダヤ的な発言をめぐり、非常に問題視された存在でもあった。

2020年にはダール氏の遺族が、「ロアルド・ダールの反ユダヤ主義的な発言によって、人々を長く傷つけてきた」ことを認識し、謝罪すると表明した。