男性用の経口避妊薬に期待 実験で精子の泳ぎ一時停止

ミシェル・ロバーツ、BBCデジタル・ヘルス編集長

Sperm entering egg

画像提供, Getty Images

男性用の非ホルモン性の経口避妊薬が現実のものとなるかもしれない。アメリカの研究チームがこのほど、精子が卵子に向かって泳げないようにする細胞経路を発見した。研究結果は英科学誌「ネイチャー」に14日掲載された

マウスを使った実験では、この経口薬を使うと少なくとも数時間(卵子に到達するのを阻止するのに十分な時間)、精子の動きが止まることが示された。

今後さらに多くの実験が必要で、人間を対象とした臨床実験を行う前にウサギを使った実験も計画されている。

これが実用化されれば、セックスの1時間前にピルを服用することで、避妊効果が得られる可能性がある。薬の効果がいつ切れるのか、注意する必要はある。

仕組みは

女性用の避妊ピルとは違い、ホルモンは配合されていない。

これが研究中の男性用ピルの利点の1つだと、科学者たちは指摘する。テストステロン量を抑制して男性ホルモン欠乏症を引き起こす恐れがないからだ。

実験中の薬はその代わり、「精子を泳がせる」スイッチになっている可溶性アデニリルシクラーゼ(sAC)と呼ばれる細胞内シグナル伝達タンパク質を標的にする。実験ではこの男性用ピルにsACを阻害またはブロックする働きが見られた。

米国立衛生研究所(NIH)が資金提供した初期の研究では、「TDI-11861」と呼ばれるこのピル1回分をマウスに投与したところ、交尾の前と最中と後を通して、精子は動かなくなっていた。

薬の効果は約3時間続いた。投与から24時間たつと、薬効は完全に消えた様子だったという。

性感染症の予防効果はなし

研究に参加したメラニー・バルバック博士(米ニューヨーク州コーネル大学のワイル・コーネル医科大学所属)は、効果が一時的で使いやすい避妊薬の開発に期待が持てると話す。

もしも最終的に人間にも効果があるとなれば、男性は必要な時に限り、必要なだけ繰り返し、この避妊薬を使えるようになる。自分の生殖能力について、その日その日で自ら判断できるようになる。

ただし、性行為が媒介する感染症は予防しないため、それにはコンドームが必要となると、専門家は注意を促す。

英シェフィールド大学のアラン・ペイシー教授(男性学)は、「男性用の効果的で可逆的で、口から体内に入れられる避妊薬が、急ぎ必要だ。これまでさまざまな方法が試されてきたが、どれも市場にはたどり着かなかった」と話す。

「精子運動に不可欠な酵素を無効化するというこの研究のアプローチは、本当に画期的なものだ。あっという間に薬の効果が出て、しかもその効果がすぐに消えるというのは、とてもわくわくする」

他方、精子の泳ぎを止める方法として、精子の表面にあるたんぱく質を阻害するという、今回の発表とは少し異なる方法に注目している研究者もいる。