イラン政府、英・イラン二重国籍の元国防省高官を処刑 「イギリスのスパイ」の罪

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イラン司法省系のメディア「ミザン」は14日、同国の元国防副大臣で、イランとイギリスの二重国籍を持つアリレザ・アクバリ氏(61)の絞首刑が執行されたと伝えた。執行日は不明。アクバリ氏はイギリスのためにスパイ活動を行った罪で有罪となり、11日に死刑判決を言い渡されていた。
アクバリ氏は英情報機関にイランの機密情報を漏らしたとして、2019年に逮捕されていた。同氏はスパイ行為を否定していた。
イランは今週初め、アクバリ氏が自白を強要されているように見える動画を公開した。同国の情報省は先に、アクバリ氏は「イランにおける英情報機関の最も重要な諜報員の1人」と呼んだ。
BBCペルシャ放送は11日、拷問を受け、カメラに向かって犯してもいない犯罪を自白するよう強制されたと主張するアクバリ氏の音声メッセージを放送した。
英仏が非難
アクバリ氏の死刑執行は広く非難されている。
リシ・スーナク英首相は、「野蛮な政権による、冷酷かつ卑怯な行為」だと述べた。
イギリス政府はイランの検事総長に制裁を科し、イラン政権に「そのとんでもない人権侵害の責任」を負わせるとした。
ジェイムズ・クレヴァリー英外相は、「本日発表した(イランの検事総長)に対する制裁は、アリレザ・アクバリ氏の処刑を、我々がいかに嫌悪しているか強調するものだ」と述べた。
クレヴァリー外相はまた、「さらなる協議のため」にイギリスのサイモン・シャークリフ駐イラン大使を一時的に呼び戻した。
フランスは、パリに駐在するイランの上級外交官を呼び、イラン政府が繰り返す国際法違反を見逃すわけにはいかないと警告した。
「最後の面会」
アクバリ氏の家族は11日、「最後の面会」のため刑務所に行くよう求められた。アクバリ氏の妻によると、同氏は独房に監禁されていたという。
現在ルクセンブルクにいるアクバリ氏のおい、ラミン・フォルハニ氏はBBCに対し、処刑にショックを受けたことや、処刑は政権が「必死」になっている印だと語った。
フォルハニ氏はアクバリ氏について、イランに尽くした愛国者で、対イラク戦争に従事した退役軍人で、欧米との核協議ではイラン政府に助言し、さらに国防副大臣として働いたと述べた。

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アクバリ氏は投資ビザでイギリスへ渡り、後に帰化市民になった。
しかし、フォルハニ氏によると、アクバリ氏はイランのアリ・シャムハニ最高国家安全保障会議書記からの要請を受けてイラン・テヘランに戻ったという。
「おじはイランを何より大事にしていた。だからこそ国に戻った」のだと、フォルハニ氏はBBCに語った。
「(イランの)体制創設時から関わっており、政権や国民に危害を加えることは考えていなかったはずなのに」
「政府の上層部で権力闘争が起こり、彼らがおじに対する陰謀を企てたとしか推測できない」
また、イランで大きな力をもつ革命防衛隊(IRGC)をテロ組織として指定するイギリスの計画と、アクバリ氏の処刑は「無関係ではないはずだ」とした。
人権団体などの反応
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、アクバリ氏が生前に拷問を受けたとする主張を調査するようイギリスに求めた。同団体はイランが人命に対して「哀れなほど、ほとんど敬意」を示していないと非難した。
英ロンドンの王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)のイラン専門家サナム・ヴァキル博士は、「国外の強大な勢力」がイランの反政府運動をあおっていると言うために、イラン政権がアクバリ氏の死を利用する可能性があると指摘。イラン政府は、西側諸国が「イスラム共和国の不安定化」を意図して反政府デモを扇動していると主張しており、アクバリ氏の「罪状」とそれを結び付けようとするだろうと、ヴァキル博士は話した。
ヴァキル博士はBBCラジオ4の番組「トゥデイ」で、「イランの政界主流派の結束を維持するため、西側が反政府運動に関与していると政府は言い続ける」と語った。
イランが反政府デモの参加者を暴力的に弾圧したことを受け、英政府はイランの道徳警察や治安要員に制裁を科した。両国の関係はここ数カ月で悪化している。
イランは近年、二重国籍や、他国の永住権を持つイラン人数十人を、主にスパイ容疑や国家安全保障容疑で逮捕している。
イギリスとイランの二重国籍を持つ、ナザニン・ザガリ=ラトクリフ氏とアヌーシェ・アシューリ氏はスパイ容疑などでイランで長年拘束された後、昨年3月に解放されてイギリスに帰国した。
一方で、実業家で野生動物保護活動家のモラド・タバズ氏を含む、少なくとも2人の二重国籍者は依然拘束されている。






