火星に隕石衝突で大型クレーター NASAが形成を記録
ジョナサン・エイモス、BBC科学担当編集委員
米航空宇宙局(NASA)は27日、火星に隕石(いんせき)が衝突して大きなクレーターができる様子を、火星探査機でとらえたと発表した。太陽系で形成が記録されたクレーターとしては過去最大だという。
研究者らによると、バン型の車ほどの物体が火星に衝突し、幅150メートルのくぼみを作り出した。破片は35キロメートル先まで飛び散った。
NASAの火星探査機「インサイト」は、搭載された地震計で地面の振動を感知し、この現象をとらえた。
常に火星を周回して撮影している、NASAの別の探査機「マーズ・リコネサンス・オービター」(MRO)でも、この衝突は確認された。
同機は、火星の表面に大きな変動があったことを証明する、衝突前後の画像を提供。撮影されたタイミングは、インサイトのデータとぴったり一致した。場所も、インサイトからの方向と距離(3500キロメートル)において予想どおりだった。
米ブラウン大学のイングリッド・ダウバー博士は、「これは私たちが今まで見た中で最大の新しいクレーターだ」と話した。
「幅は約500フィート(約150メートル)ある(中略)火星には常に隕石が落ちているが、このクレーターは火星で新しくできる典型的なクレーターの10倍以上の大きさだ」
また、「これくらいの大きさのクレーターは、数十年に一度、あるいは一世代に一度、火星のどこかにできるかもしれないと考えていた。そのため、この出来事を目にできたことに、とても興奮した」と述べた。

画像提供, NASA
衝突後の観測では、埋もれていた氷の巨大な塊が掘り起こされ、クレーターの縁に投げ出されていることがわかる。火星の赤道にこれほど近い場所で氷が埋まっているのは、これまで確認されていなかった。
これら埋没した氷は、将来の火星への有人ミッションで重要な資源になりうる。NASAの惑星科学部門の責任者ロリ・グレイズ博士は、「水、酸素、水素に変換できる」と話した。
インサイトは2018年11月に火星に到達して以来、1300回以上の揺れを記録してきた。しかし昨年12月24日、今回の隕石衝突によるマグニチュード4の揺れを観測した。いわゆる「表面波」の要素が含まれていたため、科学者らはすぐに興味をひかれた。
「地震性の表面波が地球以外の惑星で観測されたのは、これが初めだ。月のアポロ計画でもなかったことだ」と、スイス連邦工科大学(ETH)チューリヒ校・地球物理学研究所のドヨン・キム氏は述べた。同氏は米誌サイエンスに今週掲載された学術報告の筆頭著者だ。

画像提供, NASA/JPL-Caltech/MSSS
表面波の観測は、別の隕石衝突の特定にもつながった。昨年9月18日にインサイトから約7500キロメートルの場所で発生したもので、この時はクレーターがいくつか形成され、最大のものは直径130メートルだった。
科学者らは、この2つの衝突によって、火星の内部に関する新たな知識が得られると考えている。深い場所で発生する地震波と異なり、表面波からは地殻についての未知の詳しいデータが得られるからだ。
今回は、インサイトと衝突地点の間の地殻について、非常に均一な構造と高い密度を持っていることがわかった。これは、以前に報告されたインサイト直下の3層の低密度の地殻とは対照的だ。
この発見は、有名な火星の二分性(北半球は低く比較的平坦、南半球は高く山が多い)についても、何かを示しているかもしれない。研究者らはこれまで、地殻の物質が異なることが原因ではないかと考えてきた。しかし、今回の表面波のデータは地殻が広い範囲で均一であることを示しており、これまでの説はおそらく最良の説明ではないことを示唆している。

画像提供, NASA/JPL-Caltech
火星には多くのクレーターがある。何十億年にもわたって、宇宙を漂っている隕石の衝突を受けてきた結果だ。巨大なものもあり、ヘラス盆地は直径2000キロメートルを超える。
しかし、昨年の隕石衝突は、それが起きた瞬間のデータを科学者らが手にしたという点で重要だ。
「(昨年12月24日に火星に衝突したような物体は)10年に数回、地球に向かってくるが、大気圏で安全に燃え尽きるか、いくつかの隕石を落下させるだけだ。インサイトが今回の衝突をとらえたのは、驚くほど幸運なことだ」と、英インペリアル・コレッジ・ロンドンのギャレス・コリンズ教授は話した。
インサイトはもうすぐ役割を終える。太陽電池パネルにはちりが付着し、効率が下がっている。今後4~8週間ほどで、電力不足で活動できなくなると予想されるという。










