ロシア兵に終身刑を宣告 ウクライナで初の戦争犯罪裁判
パトリック・ジャクソン、ジェイムズ・ウォーターハウス、ロンドンおよびキーウ

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ロシアがウクライナに侵攻して初の戦争犯罪裁判で、ウクライナの裁判所は23日、ロシア軍戦車部隊の戦車長に対し、民間人殺害の罪で終身刑を言い渡した。
捕虜となったロシア軍軍曹のヴァディム・シシマリン被告(21)は、2月28日にウクライナ北東部チュパヒフカ村でオレクサンドル・シェリポフさん(62)を殺害したとして、有罪判決を受けた。
被告は裁判で、シェリポフさんを撃ったことは認めたが、命令を受けて行動していたと主張。シェリポフさんの妻に許しを請う場面もあった。
ウクライナ当局は、他の多くの戦争犯罪の疑いについても捜査を進めている。
今回の紛争は、民間人への意図的な攻撃が1つの特徴となっている。この日の判決は、そうした紛争における司法判断という点で、大きな意味をもつ。
ロシアは民間人を狙っていないと主張
ロシアは一貫して、同国軍が民間人を標的にしたことはないと主張している。ただ、それと矛盾する証拠は多数ある。ウクライナは、1万1000件以上の犯罪が起きた可能性があるとしている。
ウクライナは、ロシア政府の全面否定を覆すため、今回のような裁判をさらに起こすとみられる。
今回の判決は、ロシア軍が直ちに戦術を変更することにはつながらないだろう。しかし、夫を殺害されたカテリナ・シェリポワさんに正義をもたらした。
感情は表に出さず
セルヒイ・アガフォノフ裁判官は、終身刑の言い渡しに当たって、シシマリン被告は上官からの「犯罪命令」を実行したと述べた。
ただ、「今回の犯罪が、平和、安全、人道、国際的な法秩序に対する犯罪であることに照らすと、裁判所として(より短い)禁錮刑を科す可能性は見いだせない」とした。
青とグレーのフード付きスエットを着たシシマリン被告は、法廷内の強化ガラスの囲いの中から静かに裁判の行方を追った。決定が読み上げられる際には、感情をまったく表に出さなかった。
被告の弁護士は、控訴する方針を表明した。
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ロシアはすでに対応措置を取り始めている。ウクライナ人捕虜の一部を戦犯として裁くため、法律の起草と裁判所の設置を進めている。
紛争が激化する中、両国は近い将来、法的な報復合戦を繰り広げる可能性がある。

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シシマリン被告は、ロシア軍のカンテミロフスカヤ戦車師団に所属していた。殺害を実行した時、被告は他の兵士と共に、奪った車で移動中だった。直前に車列が攻撃を受け、部隊からは離れていた。
被告は裁判で、シェリポフさんを見つけた時には携帯電話で通話中だったと述べた。そして、攻撃用ライフルで射殺するよう指示されたと言った。
弁護人は20日の公判で、被告は命令を2度拒否した末に発砲したと主張。撃った3~4発のうち1発だけ命中したとした。
また、被告は身の危険を感じて発砲したとし、被告に殺意があったのか疑わしいと述べた。
被告に詰め寄った妻
裁判では、夫を殺されたシェリポワさんが被告に詰め寄るという劇的な場面があった。カテリナさんは、「教えてください、なぜあなた方(ロシア人)はここに来たのですか? 私たちを守るためですか?」と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による侵攻の正当化を引き合いに出して尋ねた。
「私たちを誰から守るためですか? あなたは、あなたが殺害した夫から私を守ってくれたのですか?」
被告は答えられなかった。この場面の前には、被告はシェリポワさんに許しを請い、「でも、あなたが私を許すことはできないことは分かっています」と述べていた。
シェリポワさんはBBCに、「被告のことをとても気の毒に思いますが、あのような犯罪については、許すことはできません」と話した。
戦争犯罪の犠牲者は多数か
国連によると、プーチン氏が2月24日にロシア軍をウクライナに送って以降、少なくとも民間人3838人が死亡し、4351人が負傷している。
死者の中には、ブチャなどの占領された町における戦争犯罪の犠牲になったと疑われる人が多数含まれている。
BBCは今月初め、ロシア兵が民間人2人を冷酷に殺害した防犯カメラ映像を入手した。この事案は現在、戦争犯罪の疑いで検察当局が捜査している。









