ウクライナ軍、首都周辺を奪還 ロシアの燃料庫出火めぐり応酬

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ロシアの軍事侵攻が続くウクライナでは1日、首都キーウ(ロシア語でキエフ)の周辺都市をウクライナ軍がロシア軍から奪還したもよう。一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は演説で、東部での状況は依然として困難だと国民に伝えた。ロシア西部ベルゴロド州の燃料貯蔵庫がウクライナ軍の攻撃で出火したというロシア側の主張については、ウクライナは反論を続けている。
首都近郊の都市をウクライナ奪還
キーウ近郊ブチャのアナトリイ・フェドルク町長は1日、ウクライナ軍が街を奪還したと発表した。ビデオで町長は、「3月31日は、ロシア軍からの解放記念日としてこの町の歴史に残る」と述べた。ビデオは町役場の外で撮影されたもよう。
ロシアは29日、ウクライナとの停戦交渉の中で、キーウと北部チェルニヒウ周辺の軍事行動を大幅に縮小すると表明したものの、その後も攻撃は続いている。
対するウクライナ軍は、キーウ周辺でロシア軍に対する反撃を続けており、一部でロシア軍を押し返している。


2月24日の軍事侵攻開始と共にロシア軍が激しい攻撃を展開したキーウ北郊のイルピンでは、ロシア軍が一時、市街地に入ったものの、防衛線を突破することができずに後退したもよう。イルピンとキーウの距離は幹線道路で21キロ。
ウクライナ軍の案内でイルピン中心部に入ったBBCのオーラ・ゲリン記者によると、市内の道路はがれきや寸断した電線であふれ、ひとけはほとんどなかった。戦争開始前にイルピンにいた市民約7万人はすでにほとんどが避難している。ほとんどの民家は激しく破壊され、路上には、大破したり炎上したロシアの軍用車両が複数放置されていたという。
東部の状況「きわめて困難」=ゼレンスキー氏

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ウクライナのゼレンスキー大統領は2日未明、定例のビデオ演説で、ロシア軍がウクライナ北部では「ゆっくりながらも目に見えてそれと分かる」ペースで撤退しているとした上で、ウクライナ東部の軍事状況は「引き続き、きわめて困難」だと述べた。
ロシア軍は東部ドンバス地域や前線の都市ハルキウ(ロシア語でハリコフ)周辺に集結しつつあるため、東部で「あらためて強力な攻撃」が始まると予想し備えているのだと、大統領は説明した。
「厳しい戦闘が待ち受けている。自分たちがすべての関門を通過したなど、思うわけにはいかない」と、ゼレンスキー氏は強調した。
大統領はさらに、南東部の要衝でロシア軍に包囲されている港湾都市マリウポリから、3000人以上が避難したと明らかにした。ドネツク、ルハンスク、ザポリッジャの各州に設けられた人道回廊を通過したという。
大統領は、「これとは別に、死傷者を市内から運び出す方法について合意が得られつつある」とも述べ、この件についてはトルコが仲介していると説明した。


包囲されたマリウポリからの市民脱出については、赤十字国際委員会(ICRC)が避難作戦を実施しようとしているものの、2日連続して中止を余儀なくされた。

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キーウにいるICRC広報担当のアリオナ・シネンコ氏は、「正確で具体的な合意がどこにもなく、あらゆる関係者が合意を尊重していないことが、障害になっている」と述べ、支援物資が目的地に到着するようにするのは「この紛争の双方の当事者の責任」だと強調した。
シネンコ氏は現状に「幻滅し落胆」しているとして、「(援助物資の)車列を待っていたマリウポリの人たち、数週間も悪夢にとらわれ脱出を期待しているマリウポリの人たちを思うと、胸が痛い」と述べた。
ロシアの燃料貯蔵庫めぐり応酬
ロシア西部ベルゴロド州の知事は1日、州都の燃料貯蔵庫がウクライナ軍ヘリコプター2機の攻撃に遭い出火したと非難した。ウクライナ側はこれを認めず、双方で非難の応酬が続いている。
ツイッターに投稿された動画では、ロシアとウクライナの国境から約40キロにあるベルゴロドにおいて、集合住宅の近くで燃料貯蔵庫が燃えている様子が見える。中には、ロケット砲が貯蔵庫に直撃する様子に見える映像もある。
ウクライナ軍機はこれまで、ロシア領内の標的を攻撃していない。ベルゴロド州のヴィヤチェスラフ・グラドコフ知事の主張を、ウクライナ政府は認めていない。しかし、ロシア政府のドミトリー・ぺスコフ大統領報道官も後に、ウクライナによる燃料貯蔵庫攻撃を非難。ウクライナとの和平交渉継続にとって、この「空爆」は好ましい条件をもたらさないと述べた。
ウクライナのオレクシー・ダニロフ国家安全保障・国防会議書記は国営テレビに出演し、燃料貯蔵庫攻撃について「(ロシアは)なぜか我々がやったことだというが、こちらの情報によるとそれは現実に合致しない」と述べ、ウクライナ軍による攻撃ではないと言明した。
ダニロフ氏はさらに、燃料貯蔵庫攻撃は戦争の進捗(しんちょく)に不満を抱くロシア人によるものではないかと示唆し、今後も同様の攻撃が起きるのではないかと述べた。
「ロシア連邦の社会は、何かを理解し始めている」と、ダニロフ氏は話した。
ダニロフ氏はさらに、燃料貯蔵庫攻撃は和平交渉にとって有益ではないとしたロシア政府のペスコフ報道官の発言に反応し、「(ロシアが)こちらの子供たちを殺し、女性たちを殺す時、それは協議に有益だというのか? 我々の国土に大混乱をもたらしている時に?」と反発した。

対するロシア側では、国防省のイーゴリ・コナシェンコフ報道官が国営テレビ「ロシア24」に対して、攻撃されたベルゴロドの貯蔵庫は軍用ではなく、あくまでも民生用の燃料しか保管していなかったと述べた。
「あの石油貯蔵施設は、ロシア軍とは何の関係もない」と、コナシェンコフ報道官は話した。
コナシェンコフ氏は、ウクライナ軍のミル24攻撃ヘリ2機が現地時間1日午前5時ごろに「きわめて低い高度」でロシアに侵入し、ミサイル攻撃を行ったのだと述べた。
燃料貯蔵庫攻撃について、イギリス国防省は定例の戦況分析で言及し、「貯蔵庫から燃料と弾薬が失われると想定されるため、短期的には、すでに厳しい状態にあるロシアの物資輸送にさらに負担がかかることになるだろう。とりわけ、(ベルゴロドから60キロに位置する)ハルキウを包囲するロシア軍部隊への補給が、影響を受ける可能性がある」と指摘した。
アメリカが防護服提供 化学兵器攻撃に備え
米政治ニュースサイト「ポリティコ」は1日、ウクライナ政府の要請を受けて米政府が、化学兵器攻撃への備えとして、個人用防護服(PPE)をすでに提供していると伝えた。
ポリティコによると、米国家安全保障会議(NSC)の報道官は、「命を救う装備と物資」の提供を開始したと認めたという。米政府が提供した中には、ガスマスクや化学防護服などが含まれるとみられる。
生物化学兵器をめぐっては、戦況が思うようにならないロシアがウクライナで使用するのではないかと懸念する西側諸国と、ロシアの間で非難の応酬が続いている。アメリカ政府は、ロシアが生物化学兵器の使用をめぐり、敵の行為に見せかけたいわゆる「偽旗作戦」を仕掛けるのではないかと恐れている。
(英語記事 Ukraine war latest)










