英クリケット界、人種差別スキャンダルで大揺れ

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英イングランドでこのところ、人気スポーツのクリケットをめぐる人種差別問題が噴出している。きっかけは、元プロ選手が告発の声を上げたことだった。
人種差別を訴えたのは、ヨークシャー・カウンティー・クリケット・クラブ(ヨークシャー)の元選手アジーム・ラフィクさん(30)。
告発を受けて同クラブは調査を実施したが、おざなりな内容に終わった。その後、最高幹部らが辞任する事態となっている。
ラフィクさんの主張
ラフィクさんはパキスタンで生まれ、10歳の時に英イングランドに移り住んだ。ユース時代はイングランド代表のキャプテンを務めた。
プロ選手になってからは、大半をヨークシャーでプレーした。2012年にはキャプテンとなった。
昨年9月、クリケット専門メディア「ESPN Cricinfo」のインタビューで、ヨークシャーには「組織としての人種差別」があったとし、そのため自殺寸前まで追い込まれたと発言。
具体的には、パキスタンにルーツがあることに関して人種差別的な言葉を使われるなど、クラブ在籍中にずっと嫌がらせを受けていたと述べた。
クラブの対応
ラフィクさんの訴えを受けたクラブ側は、「正式調査」を開始した。
1年後、ヨークシャーはラフィクさんが「人種差別的な嫌がらせといじめの被害者」だったと認めた。独立調査機関は、ラフィクさんの訴え43件のうち7件を事実だとした。
しかし、報告書の完全版の公表は拒んだ。「プライバシー法と名誉棄損に関係した」法的な理由のためだと説明した。
同クラブは先月28日、選手、職員、役員らで懲戒処分を受ける者はいないと決定。
ロジャー・ハットン会長は、ヨークシャーが「組織として人種差別的」だと言うには「証拠は不十分」だったと結論付けた。

国会議員も問題視
まもなく、ヨークシャーの役員らの辞任を求める声が国会議員からも上がった。サジド・ジャヴィド保健相もその1人だった。
今月4日には、イングランド・ウェールズ・クリケット・ボード(ECB)がヨークシャーに対し、リーズにあるヘディングリー・スタジアムでの国際試合の開催を一時的に禁止した。期間は「(ヨークシャーがクラブとして)求められている基準を満たしていると、はっきり示すまで」とした。
翌5日、ハットン会長は辞任を表明。ラフィクさんに「率直に」謝ると述べた。9日には国会議員らの前で、ヨークシャーは組織として人種差別的だと認めた。
マーク・アーサー最高経営責任者ら、他の役員数人も辞任した。
新会長にはパテル卿が就任。ラフィクさんを告発者としてたたえると共に、ラフィクさんとの間で労働裁判を和解させることや、独立した告発ホットラインを設置することなどを約束した。

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議会で証言
ラフィクさんは16日、議会委員会に出席し、議員らの質問に答えた。ラフィクさんは、人種差別によってキャリアが奪われたとし、息子には「クリケットからは遠ざかっていて」ほしいと述べた。
そうした中、ヨークシャーの元選手3人が、元イングランド代表キャプテンのマイケル・ヴォーンさんについて、人種差別的な発言をしていたと訴え出た。
ヴォーンさんは今月4日、調査委の報告書に自らの名前が挙がっていること認めたが、人種差別については「完全に全面的に」否定すると述べた。15日には、BBCラジオ5の自らの番組を欠席。BBCの広報担当者は、BBCが「マイケルと彼のチームと話し合いを続けている」とした。
アジア系の反応
今回の問題は、クリケットに関わるイギリス国内のアジア系の人々の間に波紋を広げた。似たような経験を語る人も現れ、人種差別を「軽い冗談」として受け止めざるを得なかったと述べた人もいた。
放送局チャンネル4の司会者クリシュナ・グル=マーシーさんは、「イギリスにいる褐色の肌をした人で、単なる冗談だと言われながら傷つき、涙をこらえた経験がない人はまずいない」とツイートした。
イングランド代表元キャプテンでインド生まれのナサー・フセインさんは今週、英紙デイリー・メイルで、ラフィクさんの事案はイギリスのアジア系にはよくあることだと説明。だが、クリケット界で話題になっている「劇的な変化」が実現すれば、クリケットには「もっと明るく、より多様な人を受け入れる未来」が待っているだろうとした。








