米セラノスの詐欺事件で初公判、血液検査で「うそをつき不正をした」と検察

ダニエル・トマス、ビジネス担当記者、ニューヨーク

Elizabeth Holmes is charged with 12 counts of fraud

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画像説明, セラノスを創業したエリザベス・ホームズ被告

米シリコンヴァレーで血液検査会社セラノスを設立し、投資家や病人たちに対する詐欺罪などに問われたエリザベス・ホームズ被告の裁判が8日、カリフォルニア州サンノゼの裁判所で始まった。検察側は、被告が金と名誉のために「うそをつき不正をした」と主張した。

ホームズ被告はセラノスについて、指先から採取した数滴の血液で、よくある疾患の有無が判断できると説明していた。企業価値は一時、90億ドル(約1兆円)に達した。

しかし、それが事実ではないことが判明し、被告らは起訴された。同社はその後、解散した。

ホームズ被告は12の詐欺罪に問われている。すべてについて無罪を主張しているが、もし有罪となった場合、禁錮20年の刑が言い渡される可能性がある。

注目集まる中で初公判

この事件はアメリカ内外で大きな注目を集めてきた。ホームズ被告をめぐっては、ドキュメンタリーやポッドキャスト、書籍などが作られた。現在も、テレビのミニシリーズとハリウッド映画の製作が進んでいる。

被告はこの日、弁護団に囲まれるようにして出廷した。多くの記者が法廷内で取材しようと、午前5時から並ぶなど、裁判への関心も非常に高いと、BBCのジェイムズ・クレイトン北米テクノロジー担当記者は伝えた。

被告は、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官や、メディア界の大物ルパート・マードック氏、ジェイムズ・マティス元国防長官ら多数の有力者をだまし、計約7億ドルを彼女の会社に投資させたとされる。

「失敗は犯罪ではない」

弁護団はこの日の公判で、経験のない女性実業家が会社経営に失敗しただけだと主張した。

ランス・ウェイド弁護士は、「失敗は犯罪ではない。懸命に努力し、資金難に陥るのは犯罪ではない」と陳述した。

検察側と弁護側は、証人候補として140人以上を挙げている。投資家や元セラノス従業員らが含まれている。

元セラノス最高幹部で、ホームズ被告と長年、恋愛関係にあったラメシュ・「サニー」・バルワニ被告も、同様の罪で起訴されている。裁判は来年、別に進められる予定。バルワニ被告も無罪を主張している。

Manesh Balwani

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画像説明, ラメシュ・バルワニ被告

「次のスティーヴ・ジョブス」

ホームズ被告はかつて、自力で成功した世界最年少のビリオネア(10億ドル以上の資産保有者)とされ、「次のスティーヴ・ジョブス」と呼ばれた。

しかし2015年、セラノスの血液検査機器が機能しないことが発覚し、彼女の評価は失墜した。

セラノスは、市場で販売されている他社の機器を使って、血液検査の大部分を実施していたことも判明した。このことは、ホームズ被告が問題を認識していた可能性を示している。

「虚偽」の説明

8日の公判では、ロバート・リーチ検察官が、ホームズ被告とバルワニ被告について、2009年に詐欺をはたらくようになったと主張。セラノスの資金が尽き、複数の大手製薬会社から支援を受けられなかったことが背景にあったとした。

また、検査に関してうそをつき、企業業績を誇張することで、2010~2015年に何百万ドルもの投資を受けたとした。

虚偽の説明の中には、米製薬大手ファイザーがセラノスの検査について検証済みであるとするものや、米軍がセラノスの技術を使用しているとするものもあったとした。

「名声と称賛」

リーチ検察官はさらに、ホームズ被告がウォルグリーンズなどの薬局チェーンを「魅了」して、協力関係の締結に合意させたと主張。被告は当時、検査が「問題だらけで、品質管理に繰り返し失敗していた」のを十分に承知していたとした。

そうした行動により、被告は名声と称賛を獲得したとした。

「彼女は望みどおり、シリコンヴァレーと世界で最も祝福されるCEO(最高経営責任者)の1人になった。だが、セラノスの成功の裏側では、深刻な問題が膨らんでいた」

「何も手にせず退場した」

一方、ホームズ被告の弁護団のウェイド弁護士は、被告には詐欺の意図はなかったと主張。業務上の困難な事案について、「甘い考えで過小評価していた」とした。

「最終的に、セラノスは失敗に終わり、ホームズ氏は何も手にしないで退場した」と、ウェイド氏は陪審員らに語った。

また、ホームズ被告はセラノスが掲げた目標に向けて行動したのであり、金銭目的ではなかったと主張。「最後の最後まで、その目標に専心していた」と訴えた。

「この裁判が終わるまでには、ついさっき政府が描き出した悪者が、実際には日々できる限りのことをしていた、現存する人物だと理解することになるだろう。彼女が無実だということもだ」

精神的虐待を主張

先月公表された裁判資料によると、ホームズ被告は何年間にもわたって、バルワニ被告から精神的な虐待を受けていたと主張している。バルワニ被告はこれを否定している。

ホームズ被告の弁護団は、バルワニ被告との関係が及ぼした精神的な影響について、ホームズ被告が証言台に立って証言する可能性が「非常に高い」としている。