米政府、イスラム国による攻撃を懸念 カブール空港に近づかないよう指示

US Marines stand guard at Kabul international airport

画像提供, US Marine Corps/Reuters

画像説明, カブール国際空港は現在、米軍が管理している

米政府は21日、アフガニスタンで過激派勢力イスラム国(IS)の現地部隊による攻撃が懸念されるとし、出国予定の米国民に対し、カブール国際空港に近づかないよう警告した。英国防省によると、空港の外の押し合いの中でアフガニスタン市民7人が死亡した。

米政府は、「(空港の)ゲートの外には安全への懸念がある」とする危険情報を出し、米国民に空港から離れているよう指示。米政府代表から個別に移動の指示を受けた人のみ、空港に行くよう求めている。

米国防総省の関係者は、状況を注視しており、代替ルートを検討していると述べた。

ISによる攻撃の恐れについては、詳しい情報が公表されていない。ISは、カブールで攻撃を実施するとは表明していない。

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アフガニスタンでは、タリバンが国内各地を制圧し、今月15日には首都カブールを占拠した。以来、何万人ものアフガニスタン人と外国人が、国外に退避しようとカブール空港に向かっている。

空港には連日、搭乗許可を望む人たちの群衆ができている。米軍や連合軍のために働いた人や、人権問題などに取り組んできた人は、出国できなければタリバンに報復されるかもしれないと恐れている。

21日に空港ゲート付近で何が起きたのかは、はっきりしていない。

しかし、英スカイ・ニュースのスチュアート・ラムジー主任特派員は、群衆の先頭付近の人たちが「圧死」していると伝えた。危険な状況にある人を英兵が引っ張り出しているという。

ラムジー特派員は「圧倒的に最悪の日」だとし、現場では死者が出た様子だと報告した。

英国防省は22日、空港の外の押し合いの中でアフガニスタン市民7人が死亡したと明らかにした。

米国民には個別連絡

Afghanistan Special Forces try to keep a crowd from entering, outside Kabul airport, Afghanistan, 18 August 2021

画像提供, Reuters

画像説明, カブール空港の外側では、中に入ろうとする人々をアフガニスタンの治安部隊が押し戻している(18日)

米国務省は21日の記者説明で、これまでに米国民約2500人を含む1万7000人がカブール空港から出国したと説明した。

出国しようとした「少数の」アメリカ人とアフガニスタン人が、空港へ向かう途中で殴られるなど、いやがらせや暴力を受けたと、国務省担当者は話した。

米国務省の報道官はBBCに、空港に接近しないよう米国民に指示したのは、空港入り口での混乱を回避するためだと話した。

また、現地の米国民とは「個別ベースで」連絡が取れるようになったため、移動に関して「それぞれに適した指示」を出せる状態にあることも、今回の呼びかけにつながったと述べた。

他の国々も現地の状況に関して警告を発している。

ドイツ政府は、カブール空港が「極めて危険で、近づくのは不可能なことが多い」とする声明を出した。一方、スイス外務省は、治安状況が「過去何時間かで大きく悪化した」とし、退避のためのチャーター便を延期したと発表した。

全員退避は不可能との観測も

カブール空港は現在、米軍が管理している。米軍は自国と他国の人々の退避を支援している。西側諸国の部隊のために働き、タリバン政権では安全が懸念されるアフガニスタン人も、支援の対象としている。

ただ、米政府は今月31日を米軍の撤退期限に定めている。その日以降に何が起こるかは不明だ。

北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、9月1日以降も退避の支援活動を継続できるよう、カブール空港を利用可能な状態のままにすることを、いくつかの加盟国が提案していると明らかにした。

BBCの取材では、イギリスもそうした国の1つで、数日間の延長を求めている。

各国がすべての自国民や、危険な状況にあるとみられるアフガニスタン人全員を退避させるのは不可能だとの見方も出ている。空港では行列する人たちの出国手続きに時間がかかっており、退避便の増便もうまく進んでいない。

欧州連合(EU)外務トップのジョセップ・ボレル氏はAFP通信に、アメリカが渡航許可証を持っているすべてのアフガニスタン人を今月末までに出国させるのは「人数上、不可能だ」と述べた。

また、アメリカの安全管理は厳し過ぎ、欧州諸国のために働いたアフガニスタン人が空港に入れていないと、EUとしてアメリカに「抗議した」と話した。

動画説明, 子供を壁越しに手渡し……カブール空港の混乱続く アフガニスタン

アメリカのジョー・バイデン大統領は20日、「帰国したいアメリカ人はすべて帰国させる」と宣言した。ただ、退避について、「損失のリスクは排除できない」とし、「史上最も大規模で困難な空輸」だとした。

一方、タリバンはアフガニスタン国内の支配を強固にしようとしている。

タリバン共同創設者のアブドゥル・ガニ・バラダル師がカブールに到着。新政府の設立に向けた協議に加わる予定だ。

バラダル師は、現在アフガン国内にいるタリバンの最高位。タリバン政権が発足した際には、主要な役職に就くとみられる。

タリバン関係者は、数週間以内にアフガニスタンの統治モデルを確立させたいとの考えを、ロイター通信に示した。

また、西側諸国のような民主主義にはならないが、「すべての人の権利を保護する」ものになると述べた。

バラダル師は昨年、タリバンと米政府が米軍のアフガニスタン撤退で合意した際に、合意文書に署名した人物。

動画説明, タリバン復権 徐々に高めた存在感、高まる国民の不安

アフガニスタン情勢の変化:アメリカの作戦展開とタリバンの進攻

2001年10月: 9月11日の米同時多発攻撃を受け、ブッシュ米政権主導によるアフガニスタン空爆開始

2009年2月: アメリカはさらに兵士1万7000人の増派を決定。NATO加盟国もアフガニスタンへの増派などを約束

2009年12月: バラク・オバマ米大統領(当時)は、アフガニスタン駐留軍を3万人増員し、計10万人に拡大すると決定。一方で、2011年までに撤退を開始すると表明

2014年10月: アメリカとイギリスが、アフガニスタンでの戦闘作戦を終了

2015年3月: オバマ大統領が、駐留軍の撤退延期を発表。アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領の要請を受けたもの

2015年10月: オバマ大統領が、2016年末までは兵士9800人をアフガニスタンに残すと述べた。これ以前は、1000人を残し全軍を撤退させると約束していた

2016年7月: オバマ大統領は「安全保障上の不安定な状態」を理由に、2017年には米兵8400人が駐留すると発表。NATOも駐留を継続することに合意したほか、2020年までアフガニスタン政府軍への資金援助を続けると強調した

2017年8月: ドナルド・トランプ大統領(当時)が、タリバンの勢力拡大を受けた増派表明

2019年9月: アメリカとタリバンの和平交渉が決裂

2019年11月: トランプ大統領、アフガニスタンを電撃訪問

2020年1月:  ジョー・バイデン米政権発足

2020年2月: 数カ月におよぶ交渉の末、アメリカとタリバンがドーハで合意に至る。アメリカは駐留軍撤退を約束

2021年4月: バイデン米大統領、9月11日までに駐留米軍を完全撤退させると表明

5月: 米軍とNATO各国軍の撤退開始

5月: タリバン、南部ヘルマンド州でアフガニスタン軍へ大攻勢開始

6月: タリバン、伝統的な地盤の南部ではなく、北部で攻撃開始

7月2日: カブール北郊にあるバグラム空軍基地から、米軍やNATO加盟各国軍の駐留部隊の撤収完了

7月21日: タリバンが半数の州を制圧と米軍幹部

8月6日: 南部ザランジの州都をタリバン制圧。タリバンが新たに州都を奪還するのは1年ぶり

8月13日: 第2の都市カンダハールを含め4州都がタリバン支配下に

8月14日: タリバン、北部の要衝マザーリシャリーフを制圧

8月15日: タリバン、東部の要衝ジャララバードを無抵抗で制圧。首都カブール掌握