バイデン米大統領、カブールからのアメリカ人脱出に人命損失リスク伴うと

Joe Biden

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画像説明, 米軍撤収の正当性を堅持しながらも、カブールが今後どうなるかは不透明だと認めるバイデン米大統領(20日、ホワイトハウス)

ジョー・バイデン米大統領は20日、武装勢力タリバンが掌握したアフガニスタンからのアメリカ人や欧米政府に協力したアフガニスタン人の退避について、ホワイトハウスで演記者会見し、「損失のリスクがないわけではない」と人命への危険を認めた。

バイデン氏はホワイトハウスで、「史上最も大規模で困難な空輸退避作戦のひとつ」で米政府がこれまでに1万3000人を脱出させたと述べた。

バイデン氏は、すべてのアメリカ市民を帰国させるほか、米軍に協力したアフガニスタン人5万~6万5000人を退避させると約束している。

動画説明, バイデン氏、市民脱出させると約束しつつ困難を強調 アフガニスタン

「帰国したいアメリカ人は全員、帰国させる」とバイデン氏は述べた。記者団からの質問を受けて大統領は、米軍による退避支援作戦で最優先されるのはアメリカ市民の脱出だが、これまで米政府に協力してきて出国を希望するアフガニスタン人の脱出についても、「同様に約束する」と話した。

「誤解のないように。この避難作戦は危険だ。我々の部隊へのリスクを伴い、厳しい状況で行われている」とも、バイデン氏は述べた。

「最終的な結末がどうなるのか約束できないし、損失のリスクがないとも約束できない。しかし全軍の総司令官として、必要なあらゆる資源を動員すると約束する」

7月初めまでに駐留米軍の大多数を撤収させた後、タリバンが電光石火でアフガニスタン全土を支配下におき、アフガニスタン政府が崩壊したことについて、バイデン政権は内外から厳しい批判にさらされている。

記者会見で大統領はさらに、アメリカのパスポートを持つ者が空港へ入ることをタリバンは認めていると述べ、首都カブール市内に閉じ込められているアメリカ人の救出に米軍部隊を派遣する必要はないと述べた。

ただし、カブールから複数の現場報告によると、複数のアメリカ人が空港にたどり着けず苦慮しているという。20日付の米政治ニュースサイト「ポリティコ」によると、ロイド・オースティン国防長官が同日、議会への状況説明で、アフガニスタンを離れようとするアメリカ人がタリバンに殴打されたケースがあると報告したという。

高まる批判

米情報機関がアフガニスタンについて、なぜこれほど情勢を読み違えたのかという批判が、15日の首都カブール陥落からバイデン政権に対して繰り返されている。

これに対してバイデン氏は20日の記者会見でも、情報分析の破綻(はたん)はなかったと主張。タリバンがこれほどあっという間に復権するのは「きわめてあり得ない」というのが、政府内の「総意」だったと述べた。

アフガニスタン情勢が国際社会におけるアメリカの評価を傷つけたのではないかという記者団の指摘にも、大統領は反論し、「世界各地の同盟諸国から、我々の信頼性を疑問視する声は出ていない」と強調した。

アフガニスタンでの戦いを同盟諸国との「共同作業」と呼び、バイデン氏は次の対応について主要7カ国で協議するため、近くG7の会合を開くと話した。

さらにバイデン氏は、米軍撤収を5月の時点で発表しなければさらに米兵の大規模な増派が必要になったはずだとして、「皆さんの息子たちや娘たちを派兵せずに済んだとでもいうのか(中略)しかもそれは何のために?」と述べ、アメリカ国民にとってアフガニスタン撤収は正しい選択だとあらためて述べた。バイデン氏は以前から、アメリカにとって「最長の戦争」を終わらせる、5人目の大統領には引き継がないと決意を示していた

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一方、野党・共和党重鎮のリンジー・グレアム上院議員は20日、もしもアメリカがアフガニスタンに1人でもアメリカ人やアフガニスタン人協力者を置き去りにするようなことがあれば、バイデン氏は弾劾されるべきだと発言した。

これまでに与党・民主党からもバイデン氏への批判が出ている。上院外交委員会のボブ・メネンデス委員長(ニュージャージー州選出)は、アフガニスタンからの「問題ある」撤収について「全面的な内容説明」を政府に要求するつもりだとしている。

脱出作戦はどうなっているのか

タリバンから逃れようと連日、大勢がカブールの国際空港に押し寄せている。バイデン大統領はカブールの状況に胸を痛めていると話した。

駐留米軍の最終的な撤収期限は8月31日。今なお数万人が出国の機会を待っている。バイデン氏はすでに、避難活動を支援するため米軍部隊がそれ以降も駐留を続ける可能性に言及している。

カブール空港を管理し、出国を支援するため、米兵約6000人が現地に駐留している。

ただし、空港の周辺はタリバン戦闘員が取り囲み、カブール市内からの道路にも数々の検問所を設けている。

バイデン氏によると、米政府は常時、タリバンと連絡を取り続けている。

米軍部隊を空港外の警備に配置するつもりはあるか記者に質問されると、バイデン氏はそのようなことをすれば「想定外の結果」につながるだろうと述べた。具体的な内容には言及しなかった。

国防総省によると、20日には米軍のCH-47(チヌーク)輸送ヘリコプター3機が空港を出発し、アメリカ人169人が出国便に乗れるよう空港内まで移動させた。

国防総省のジョン・カービー報道官によると、同日には米軍部隊が「短時間」、空港の警備境界線を出て、空港から200メートル離れたホテルまで移動した。カブール陥落以降、米軍がカブール市内に入るのはこれが初めてという。

北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は20日、「今では乗客よりも飛行機の数の方が多い。というのも、出国したい人、とりわけアフガニスタン人を空港まで移動させて手続きをすることが、現時点での何より大きい課題だからだ」と述べた。

20日にはさらに、カブールを出発する米軍機は目的地カタールでの手続き遅延のため、出発が数時間遅れた。

国務省のネッド・プライス報道官によると、中東と欧州の計11カ国が、アフガニスタン脱出者の経由地となることに同意している。

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<分析> 共感力のバイデン氏再び――タラ・マケルヴィーBBCホワイトハウス担当記者

バイデン氏はこの日の演説で思いやりを示し、現地からの「映像を見て痛みを感じない」人はいないと思うと述べた。

アフガニスタンを脱出しようとする人たちの、痛ましい映像についての発言だった。その物言いは、昔ながらのバイデン節を思わせた。共感力あふれる深い思いやりの人だと、支持者が長年掲げてきた通りの、バイデン氏らしい発言だった。

16日の時点で、米軍撤収の決定を断固として堅持すると力説した際の物言いとは、調子が変わっていた。アメリカの有権者は、民主党支持者か共和党支持者かを問わず、バイデン氏の戦略を疑問視しているし、今の惨状について他人(それがドナルド・トランプ氏にしろ、アフガニスタン軍にしろ)のせいにしたことに反発している。

世論調査追跡サイト「FiveThirtyEight」によると、バイデン氏の最新支持率は就任後最低の49%まで落ち込んだ。多くの有権者が、バイデン氏の指導力に疑問を抱いている様子だ。

大統領はそうした有権者を説得しようとしているが、その多くにとってバイデン氏の努力は遅すぎるし少なすぎる。

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アフガニスタン情勢の変化:アメリカの作戦展開とタリバンの進攻

2001年10月: 9月11日の米同時多発攻撃を受け、ブッシュ米政権主導によるアフガニスタン空爆開始

2009年2月: アメリカはさらに兵士1万7000人の増派を決定。NATO加盟国もアフガニスタンへの増派などを約束

2009年12月: バラク・オバマ米大統領(当時)は、アフガニスタン駐留軍を3万人増員し、計10万人に拡大すると決定。一方で、2011年までに撤退を開始すると表明

2014年10月: アメリカとイギリスが、アフガニスタンでの戦闘作戦を終了

2015年3月: オバマ大統領が、駐留軍の撤退延期を発表。アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領の要請を受けたもの

2015年10月: オバマ大統領が、2016年末までは兵士9800人をアフガニスタンに残すと述べた。これ以前は、1000人を残し全軍を撤退させると約束していた

2016年7月: オバマ大統領は「安全保障上の不安定な状態」を理由に、2017年には米兵8400人が駐留すると発表。NATOも駐留を継続することに合意したほか、2020年までアフガニスタン政府軍への資金援助を続けると強調した

2017年8月: ドナルド・トランプ大統領(当時)が、タリバンの勢力拡大を受けた増派表明

2019年9月: アメリカとタリバンの和平交渉が決裂

2019年11月: トランプ大統領、アフガニスタンを電撃訪問

2020年2月: 数カ月におよぶ交渉の末、アメリカとタリバンがドーハで合意に至る。アメリカは駐留軍撤退を約束

2021年4月: ジョー・バイデン大統領、9月11日までに駐留米軍を完全撤退させると表明

5月: 米軍とNATO各国軍の撤退開始

5月: タリバン、南部ヘルマンド州でアフガニスタン軍へ大攻勢開始

6月: タリバン、伝統的な地盤の南部ではなく、北部で攻撃開始

7月2日: カブール北郊にあるバグラム空軍基地から、米軍やNATO加盟各国軍の駐留部隊の撤収完了

7月21日: タリバンが半数の州を制圧と米軍幹部

8月6日: 南部ザランジの州都をタリバン制圧。タリバンが新たに州都を奪還するのは1年ぶり

8月13日: 第2の都市カンダハールを含め4州都がタリバン支配下に

8月14日: タリバン、北部の要衝マザーリシャリーフを制圧

8月15日: タリバン、東部の要衝ジャララバードを無抵抗で制圧。首都カブール掌握

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