ジョージ・フロイドさんは「ゆっくりと意識を失っていった」 元警官裁判で目撃者が証言

The prosecution and the defence laid out their cases in opening statements.

画像提供, Court TV

画像説明, ジェリー・ブラックウェル検察官(左)と、チョーヴィン被告の弁護を務めるエリック・ネルソン弁護士

黒人男性ジョージ・フロイドさんが昨年5月に米ミネソタ州で死亡した事件で、フロイドさんの首を膝で押さえつけて死なせたとされる元警官のデレク・チョーヴィン被告(44)の実質審理が始まった。初日となる29日には、目撃者がフロイドさんが亡くなった様子を語った。

フロイドさんは、チョーヴィン被告に約9分間、首を膝で押さえつけられた。この様子は通行人が撮影した動画に記録されており、ソーシャルメディアなどで拡散された。

検察側の証人として召喚されたドナルド・ウィリアムズ3世氏は、フロイドさんがこの9分の間に「ゆっくりと意識を失っていった」と語った。

これに対しチョーヴィン被告の弁護人は、フロイドさんを確保した時の行動は「見た目は良くないが必要なものだった」と述べた。

この裁判は、アメリカの人種問題にとって大きな分岐点になるとみられている。

フロイドさんの事件後、アメリカ各地や世界で人種差別や警察の暴力に対する抗議運動が活発化した。

チョーヴィン被告はこの事件で、第2級過失殺人と第2級・第3級故殺の罪に問われている。全ての罪状で有罪となった場合の最高刑は禁錮65年。チョーヴィン被告は無罪を主張している。

フロイドさんの死に関わった残る3人の元警官は、それぞれ過失殺人と故殺のほう助・教唆の罪に問われており、今年後半に個別に審理が行われる予定。

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実業家のウィリアムズ氏は2020年5月25日、ミネアポリスの小売店カップ・フーズに入ろうとした時に、フロイドさんが拘束されているのを目撃した。

The George Floyd Square is seen the day before open statements in the trial of former police officer Derek Chauvin, who is facing murder charges in the death of George Floyd, in Minneapolis, Minnesota, on 28 March 2021

画像提供, Reuters

ウィリアムズ氏は「良くない感じだった」ので店には入らず、代わりに現場の警官に話しかけ、フロイドさんの脈を取るよう訴えたという。

証言の中でウィリアムズ氏は、フロイドさんの命が失われていくのが分かったと話した。

「(フロイドさんは)袋の中の魚のように、ゆっくりと意識を失っていった。ゆっくりと白目になっていき、体がぐったりして命がついに消えた」

検察側は審理の冒頭で、チョーヴィン被告がフロイドさんを取り押さえているところを通行人が撮影した9分間の映像を流した。

ジェリー・ブラックウェル検察官はその後、フロイドさんは27回、「息ができない」と訴えたと陪審員に語った。

ブラックウェル検察官は、チョーヴィン被告が「ジョージ・フロイドさんの身体に与える影響を考慮せずに(中略)非常に危険な行為をしていたことが」この映像からわかると述べた。

一方、チョーヴィン被告の弁護を務めるエリック・ネルソン弁護士は、「9分29秒の映像よりも証拠の方がはるかに重要だ」と冒頭で指摘。

証拠によってフロイド氏の死因が「高血圧と心疾患、メタンフェタミンとフェンタニルの服用、そして体内のアドレナリンによる不整脈」だと示されるはずだと、弁護士は述べた。

この日の審理では、フロイド氏がカップ・フーズで偽20ドル札を使ったとして911番通報を受け、警官を派遣したジェナ・スカリー通信指令員も証言台に上がった。

スカリー氏は、建物に取り付けられたカメラの映像から、フロイドさんが拘束される様子を確認していた。スカリー氏は、他の通報に対応していたためずっと映像を見ていたわけではないと認めながらも、フロイドさんが地面に長時間押さえつけられていたので、「映像がフリーズした」と思ったこと、「何か問題が起きているのではないかと心配になった」ことなどを語った。

また、フロイドさんが拘束された様子を動画で撮影していた通行人、アリシャ・オイラー氏も証人として召喚された。

裁判が始まる前にはフロイドさんの遺族や市民権弁護士、活動家などが、チョーヴィン被告がフロイドさんの首を押さえつけていた時間の間、裁判所の前にひざまずいた。

裁判はテレビ中継、陪審員は映らず

裁判は4週間にわたって続く予定で、テレビでの中継が決まっている。ただし陪審員は匿名で、テレビにも映らない。

裁判開始に先駆け、15人の陪審員が選ばれている。内訳は女性9人、男性6人。人種別では白人が9人、黒人や複数の人種的背景を持つ人が6人となっている。

29日にはこのうち1人が解任されており、初日の審理には陪審員12人と代理2人が参加した。

ミネアポリスの裁判所には警備のためにコンクリートの壁やフェンス、有刺鉄線などが張りめぐらされている。

警察による拘束中の死亡事件としても注目

チョーヴィン被告がフロイドさんの首を押さえつけている映像は世界中に広がった。

フロイドさんが拘束中に死亡したことは、多くの人にとって(特に有色人種に対する)警察の暴力の象徴となり、世界各地で人種差別の抗議デモが行われた。

しかし、世界的な非難とは裏腹に、刑事裁判としての結論は決して分かりきった自明のものではない。アメリカでは、警官が勤務中に人を死亡させても、ほとんど訴追されず、有罪になることはまれだ。

アメリカの司法制度が警察による容疑者拘束中の死亡事件をどう扱うのか、この裁判の判決に大きな注目が集まっている。