トランプ氏、デモ負傷者は「アンティファ工作員かも」 根拠は?
ジャック・グッドマン、BBCリアリティ・チェック(ファクトチェック)

画像提供, Reuters
米ニューヨーク州バッファローの抗議デモで75歳の男性が警官に突き飛ばされて重傷を負った事件について、ドナルド・トランプ米大統領は9日、この男性が「警察の通信を読み取り、機器を遮断しようと」していたと示唆した。
しかし、そんなことが可能なのだろうか。
トランプ氏は、「警察に突き飛ばされたバッファローの抗議者は、反ファシスト『アンティファ』の工作員かもしれない。75歳のマーティン・グジーノは突き飛ばされる前、警察の機器を妨害するために通信を読み取ろうとしていたように見えた。『ワン・アメリカ・ニュース・ネットワーク(OANN)』を見たが、男は警察に押された以上に激しく倒れた。警察無線を狙っていた。仕組まれていた?」とツイートした。
黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を圧迫されて死亡した事件をめぐっては、全米各地で抗議デモが起きている。
ニューヨーク州バッファローで4日に撮影された映像には、夜間外出禁止令の取り締まりに出動した警官隊に、マーティン・グジーノ氏(75)が携帯電話とみられるものをかざしながら接近する様子が映っている。
警官の1人がグジーノ氏を押し戻すと、後ろ向きに倒れて地面に後頭部を打ちつけ、耳から血が流れた。グジーノ氏は病院へと搬送された。9日に退院したが、コメントできるほどの状態ではなかった。
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動画からは、グジーノ氏が携帯電話を使って何をしていたのかはわからない。そして我々は、同氏が警察の機器を読み取ろうとしていたことを示す証拠は確認していない。このような方法で警察の機器がどのように妨害されるのかも明らかではない。
警察の無線を受信できるとうたうアプリは多数存在する。こうしたアプリは、最近抗議デモが相次ぐアメリカで人気になっている。
しかし、これらのアプリでは警察の機器は妨害できない。トランプ大統領が言うように「警察の機器を遮断」することもできない。
バッファロー警察によると、通信は暗号化されていないという。警察の音声を放送するウェブサイトも複数存在する。
警察の無線信号を妨害する場合、物理的に警官の近くにいる必要はない。
一方で、緊急サービスで使用されるほとんどの近代的な無線システムには、こういった妨害に対する防御策がなされていると、サイバーセキュリティの専門家で英サリー大学教授のアラン・ウッドワード氏は指摘する。
「いずれにせよ、警察の無線を妨害するために、この男性が持っているとみられるような携帯電話を使って読み取ろうとしたとしても、機能しないだろう。もっとずっと洗練された読み取り機器が必要だ」
「警察の通信周波数を妨害するという点でいうと、携帯電話にはそういった周波数に機能する部品は全く搭載されていない」と、ウッドワード氏は付け加えた。
グジーノ氏の反応は
米紙ワシントン・ポストに宛てた声明の中で、グジーノ氏の弁護士は、トランプ氏がグジーノ氏に対して「悪意があり、危険で、真実ではない主張」をしたことに、同氏の家族は当惑したと述べた。
「マーティンは今日の社会を気にかけているからこそ、常に平和的な抗議者だった」と、弁護士のケリー・ザルコン氏は主張。「法執行機関の誰1人として、これと異なる見解を示していない」と付け加えた。
トランプ氏は、グジーノ氏とアンティファの関連を示す証拠はツイートしていない。反ファシズムで主に左翼の活動家からなるアンティファのせいで、黒人に対する警察暴力への抗議デモが暴力行為に発展したとトランプ氏は非難している。その証拠は示していない。
先月にトランプ氏のツイートの上に警告をかぶせ、クリックしないと表示されないようにした米ツイッターは、今回のツイートは同社の利用規定には違反していないとしている。
警察の通信妨害をめぐる主張は、6月6日に公開された保守的なブロクが拡大したことで勢いを増したとみられる。このブログも、アンティファの活動家たちが警察の動きを追跡あるいは警察の通信を「遮断」するためにこうした技術を使っていると主張していた。
こうした主張はその後、保守系メディアのワン・アメリカ・ニュース・ネットワーク(OANN)が取り上げ、トランプ氏のツイッターの投稿につながった。
グジーノ氏が警察に突き飛ばされて負傷した事件が「仕組まれたもの」だったかもしれないというトランプ氏の主張には、多くの怒りの声が上がっている。中には、トランプ氏が陰謀論を推進していると非難する人もいる。











