サイクロン直撃、ウイルス対策困難に 太平洋諸国で感染リスク高まる

Vanuatu

画像提供, Red Cross

画像説明, ヴァヌアツでは多くの建物が破壊された

南太平洋の国々をサイクロンが直撃し、大きな被害をもたらした。家を失った住民も多く、他人との接触を避けるなどの新型コロナウイルス対策が困難になっており、深刻な感染拡大が心配されている。

今月初めにソロモン諸島沖で発生し、カテゴリー5(最大級)に強大化したサイクロン「ハロルド」は、6日にヴァヌアツに上陸。その後、フィジーとトンガを襲った。

合わせて数十人の命が奪われ、町は洪水状態になった。多くの人が住む家を失った。

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※サイクロン「ハロルド」が直撃した南太平洋のソロモン諸島(SOLOMON ISLANDS)、ヴァヌアツ(VANUATU)、フィジー(FIJI)、トンガ(TONGA)

貧困問題に取り組む国際NGOオックスファムによると、ヴァヌアツの島の1つ、ペンテコスト島では少なくとも2人が死亡。住宅を含むインフラ施設の90%が被害を受けた。

フィジーでは推定1万人が緊急支援を必要としていると、赤十字の現地職員は話す。電気や水道、道路、学校などが影響を受けたという。

トンガでも多くの家や事務所、墓地までが無残な状態に変わった。主要道路と波止場も損壊した。

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最大の死者が出たのは、60人近くが乗っていたとされるフェリーだった。強い風と波のために政府当局が航行を控えるよう警告するなか、ソロモン諸島から出航。多くの乗客が船外に投げ出され、少なくとも27人が死亡した。

地元メディアによると、ソロモン諸島政府は新型ウイルス対策で都市封鎖(ロックダウン)を実施する可能性があるとして、人々に自宅に戻るよう呼びかけていた。それを受けて首都ホニアラから移動中だった人々が、乗客の多数を占めていたという。

家がなくなり在宅勤務が不可能に

太平洋のほとんどの国が、素早い新型ウイルス対策を称賛されてきた。ロックダウンや移動制限を早期に実施し、地理的に容易に行き来できないこともあって、その多くで感染者が確認されていない。

サイクロン「ハロルド」の被害を受けた中で、新型ウイルスの感染者が確認されていたのはフィジーだけだ。人口約88万人の同国では、16人の感染者が見つかっている。

フィジーでは、社会的距離の確保や在宅勤務などの対策が奨励されてきた。しかし、サイクロンによって家を失った人も出ており、こうしたルールの見直しが迫られている。

Fiji

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画像説明, フィジーの家々はサイクロンの直撃で破壊された

自宅に住めなくなった人の多くは、避難所に移るしかない。避難所では、社会的距離の確保は困難だ。

「避難所は学校や教会のホールが多く、たくさんの人が1カ所に集まる。密閉した場所にたくさんの人がいるので、新型ウイルスにとっては理想的な環境と言える」

フィジーの赤十字は、避難所では「衛生管理を徹底」していると話す。

「ある時は家族以外の人と会わないように言い、(別のときは)避難所に避難するよう呼びかける。私たちにとっても、発するメッセージのバランスを取るのがとても難しい状況が続いている」と、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)太平洋地域の広報マネジャー、カール・ローレンツェン氏は言う。

「難しい判断を迫られてきた」

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画像説明, サイクロンは各地で洪水も招いた。写真はフィジー

救援物資の運搬も困難に

国際NGOオックスファムの太平洋地域ディレクター、ライジェリ・ニコール氏は、サイクロンによって「救命支援品の運搬が非常に難しくなっている」とBBCに話した。

ユニセフ(国連児童基金)太平洋地域代表のシェルドン・イエット氏は、「現在の状況は理想的とは程遠いが、理想的な状況でも、広大な太平洋地域を移動し物を運ぶのは費用がかかり複雑だ」とBBCに指摘。

「ヴァヌアツは、新型ウイルスが入り込むのを恐れて外国人の入国は認めず、人道支援の物資は荷下ろしの前に厳しい保健手順を経なくてはならないようにするとの立場だ」と述べた。

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それでも一部の支援は入り込んでいる。

民間外交シンクタンク、ローウィー・インスティチュートの太平洋諸島プログラムディレクター、ジョナサン・プライク氏は、「すでにオーストラリア、ニュージーランド、中国、アメリカから支援が届いている」と話した。

Vanuatu

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画像説明, ヴァヌアツにはオーストラリアからの救援物資が届いた

もちろん、経済的な損失もある。例えばフィジーは観光に大きく依存しており、サイクロン被害の前から苦しい状況にあった。

「フィジーの国内総生産(GDP)の約40%は観光関連だ。観光業界が完全にストップしてしまったため、人々が仕事を失っている。(中略)毎年100万人近くの観光客が休暇を過ごすフィジーにとっては大打撃だ」とIFRCのローレンゼン氏は言う。

プライク氏は、「COVID-19(新型ウイルスの感染症)の経済的影響の上にサイクロンの経済的打撃が加わるのは、各国にとって何より好ましくない」と話す。

「すでに残りわずかの政府の資源がさらに少なくなる」と同氏は言う。

Enes and her son Miles (age 1), Sanma Province, Vanuatu

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画像説明, ヴァヌアツのこの母親のように太平洋諸国の人々は大災害の後も笑顔を失っていない

それでもプライク氏は、この地域が復活すると信じている。

「太平洋の人々は回復力が大きい。この事態も乗り切るはずだ」