マクロン仏大統領、「今週末にも回答」 ブレグジット新協定案

画像提供, Reuters
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は6日、ボリス・ジョンソン英首相が先週発表した欧州連合(EU)離脱協定の新案について、EU側は今週末にも回答できるだろうと述べた。
今後数日で速やかに交渉し、EU側の主義主張を「尊重」した内容の合意かどうかを判断するという。
これに対し10月31日の離脱期限にこだわるジョンソン首相は、EUはブレグジット(イギリスのEU離脱)を延期できるなどと勘違いしてはならないと話している。
ただしイギリス議会は9月、10月19日までに合意がまとまらなければEUに離脱延期を申し出るよう首相に義務付ける通称「ベン法」を制定しており、先行きはなお不透明だ。
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ジョンソン首相は週末、EU各国の首脳と相次いで会談した。マクロン氏との電話会談では、合意は達成できるだろうと述べる一方、イギリス同様にEUも譲歩するべきだと話した。
エリゼ宮(フランス大統領府)の高官は、「大統領は(ジョンソン首相に)、今後数日でミシェル・バルニエ首席交渉官と速やかに交渉を続け、この協定案がEUの原理を尊重しているか今週末までに判断すると伝えた」と説明している。
EUは17日と18日に首脳会議を控えており、両陣営はそれまでに新協定の合意にたどり着きたい考えだ。
7日には、ジョンソン首相の欧州担当顧問を務めるデイヴィッド・フロスト氏が欧州委員会と協議を進めるほか、スティーヴン・バークリーEU離脱担当相がEU各国を訪問する予定になっている。
アイルランドの国境が焦点
協定案では引き続き、アイルランドと北アイルランドの国境問題が焦点となっている。EUは、イギリスの新協定案についても「根本的な変更」が必要だとしている。
これについて英首相官邸は、「イギリスは大きく重要は提案を行った。今度は(欧州)委員会側が譲歩の意思を見せるときだ。そうでなければイギリスは合意のないまま離脱する」としている。
またジョンソン首相は、この協定案が英議会で過半数の支持を得られると自信を示している。
タブロイド紙「サン・オン・サンデー」と「サンデー・エクスプレス」に寄稿した首相は、先端技術を使って国境での税関検査をなくす計画があると説明。この計画は精査されていないものの、イギリスをEUの通商ルールから切り離しつつ、北アイルランドの和平プロセスも尊重できると話した。
その上で、EU側には「譲歩と協力の精神」で交渉の席に着くよう呼びかけるとともに、「保守党のあらゆる会派」や北アイルランドの民主統一党(DUP)、最大野党・労働党などが「この協定案には賛成できそうだと言っている」と述べた。

新協定案、アイルランド国境については?
ジョンソン首相は新協定案の中で、テリーザ・メイ前首相が取りまとめた協定に含まれる「バックストップ条項」の代替案を提示した。
バックストップとは、イギリスとEUとの間で通商協定がまとまらない場合に、北アイルランドとアイルランドの国境に厳格な検問所等を設置しないための措置。バックストップが発動すると、北アイルランドはブレグジット後もEU単一市場のルールに従うことになるため、ジョンソン首相を含む反対派は、EU離脱後もイギリスがなおEU法に縛られるとして反発している。
バックストップの代替案の内容は以下の通り。
- 北アイルランドは残りのイギリスと同様、2021年からEU関税同盟を離脱する
- 一方、北アイルランド議会の承認が取れた場合、北アイルランドでは引き続き、農産物などについてEU法を適用する。
- この取り決めは理論的には恒久的なものだが、北アイルランド議会で4年に1度、継続の是非を問う
- イギリス・EU間の税関検査は「非中央集権化」される。書類は電子で処理し、物理的な検査は「非常に少ない数」にとどめられる
- 税関検査は企業の敷地内や「サプライチェーン上の別の場所」など、国境から離れた場所で行う

バークリーEU離脱担当相はBBCの報道番組「アンドリュー・マー・ショー」に出演し、労働党を含む野党にこの協定案を支持してもらうための協議が進んでいると話した。
バークリー氏によると、内閣はEUサミットの前に協定案を下院で審議・投票し、議員の支持を得られるかどうかを試すことを「考えている」という。
一方、同じく「アンドリュー・マー・ショー」に出演た労働党のシャミ・チャクラバルティ影の法相は、ベン法で義務付けられた離脱延期の要請について首相が「二枚舌を使って」おり、「自分が法律を超越していると考えているようだ」と指摘した。
また、ベン法には抜け穴がなく、首相が離脱延期を要請しなくてはならない要件が「明確かつ具体的に」示されていると語った。
ベン法では、首相は10月19日までに離脱協定の議会承認を得るか、下院から合意なし離脱の承認を取り付けなくてはならないと規定。それができなかった場合、首相は離脱期限を10月31日から2020年1月31日まで延期するよう、EUに要請することを義務付けられている。
しかし、ジョンソン首相はこの法律を「降伏法」と呼び、10月31日にブレグジットを強行する姿勢を維持している。
スコットランドの最高裁に当たる民事控訴院は現在、ベン法はジョンソン氏に離脱の延期要請を強制できるのか、また、もしジョンソン氏がベン法を無視した場合、どのような刑罰を受けるのかの判断を迫られている。
イギリス政府が民事控訴院に提出した書類によると、ジョンソン氏はベン法に従う意思を示しているものの、「これ以上の躊躇いや遅れ」は起きないとみているとしている。

<分析> イアン・ワトソン政治担当編集委員
話し合うのは良いことだ。
しかし、ジョンソン首相とマクロン仏大統領は接点を見出すことができたのだろうか。
イギリス議会が10月末の合意なしブレグジットを許さないのではという疑念を、マクロン氏が持たないようにすることが、ジョンソン氏の狙いだった。
つまり今回は本当に、合意を結ぶ「最後の機会」になるかもしれない。首相はEUの他の首脳にも同じようなメッセージを発している。
しかし今のところ、ジョンソン氏の提示した新協定案は、徹底的な追加交渉の糸口にはなっていない。
電話会談に関するエリゼ宮の声明を読む限り、マクロン氏からジョンソン氏へのメッセージはまず、「EUのミシェル・バルニエ首席交渉官と協議しろ、各国首脳に個別に働きかけるな」だった。
それから、週末までにもう少しEU側に歩み寄らないなら、合意はご破算だ――。フランス政府はそう言っているように読める。
つまり現時点では、交渉と言ってもそれは相互理解というより、まるで映画「レザボア・ドッグス」のクライマックスのようだ。











