【解説】 米ボーイングにとって深刻な問題 主力機のドアが航行中に飛んだ事故

テオ・レゲット・ビジネス担当編集委員、BBCニュース

アラスカ航空が運航しているボーイング「737MAX9」

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画像説明, アラスカ航空が運航しているボーイング「737MAX9」。同型機の運航はアメリカで全面停止された

米アラスカ航空が運航していたボーイング「737MAX9」の機体の一部が落下した事故は、もっとひどいことになっていたかもしれない。

5日にアラスカ航空1282便で発生した事故は、乗客には恐怖の出来事だっただろうが、1人のけが人も出ず、航空機は無事に着陸した。

しかし、フライトのもっと遅い段階で不具合が起きていたら、様相は大きく違っていた可能性がある。

事故は機体がポートランド国際空港を離陸して数分後の、まだ上昇中に起きた。

使用されていなかった非常ドアが吹き飛び、機体側面にぽっかりと穴が開いた。

機内では空気が外へと押し出され、気圧が急速に低下した。

この影響は二つの重要な要素によって軽減された。第一に、この段階では乗客全員がシートベルトを着用し、座席に座っていたことだ。

そして第二に、航空機のモニタリングサイトによれば、事故機は高度約1万6300フィート(約5000メートル)に達した後、素早く降下したことだ。

737MAXの巡航高度は約3万8000フィート(約1万1600メートル)となっている。この高さだと機内と機外の気圧差ははるかに大きい。もしここでドアが吹き飛んでいたら、突然の空気の流れはもっと激しく、死者を出した可能性があった。特にシートベルトを着用していなかった乗客は危険だった。

動画説明, 離陸直後に機体の一部が落下……乗客が体験語る 米ボーイング機

航空コンサルタントで元航空事故調査官のティム・アトキンソンさんは、「(穴が開いた場所の)すぐ横の座席の乗客や、周辺の座席でシートベルトをしていなかった乗客は、機外に吸い出されていたかもしれない」と説明した。

「最悪の場合、座席一列分の人々と、その近くに立っていた数人の命が失われただろう」

機内の温度も劇的に低下したはずだ。このような高度の空気は通常、非常に冷たく、零下57度前後となっている。

乗客と乗員は非常用酸素に頼っていただろう。仮にそれがなければ、全員すぐに意識を失ったはずだ。

2018年、米サウスウエスト航空が運航していた旧型のボーイング737型機で、まさにそうした事故が起きた。高度3万2000フィートを航行中、エンジン故障による破片が客室の窓の一つを割った。

機体は突然の減圧に見舞われ、乗客の女性一人が窓から外に吸い出されそうになった。彼女はけがを負い死亡した。

今回の事故での当面の懸念は、アラスカ航空1282便に起きたことが他の航空機でも起こりうるのかだ。問題のドアはボルト4本で機体にしっかり固定されていることになっていた。機体は製造から2カ月しかたっておらず、部品の単純な劣化が要因とは考えにくい。

それゆえ、アラスカ航空は737MAX9の運航停止を選択した。

米連邦航空局(FAA)もこれに同調。171機を検査のために一時的に運航停止にした

前出のアトキンソンさんは原因について、「設計の問題かもしれないし、製造上の欠陥かもしれない。その二つが組み合わさったのかもしれない。あるいは他の何か、未知の何かかもしれない」と話した。

ボーイングにとっては、さらに問題がある。

事故があった航空機は、ボーイングの主力機737の最新世代である737MAXの改良型だった。この型は以前の型よりはるかに燃費がよくなるよう設計されており、航空会社にとっての人気機種となっている。だが、安全に関する記録はひどく傷ついている。

2018年末と2019年初めに、インドネシア沖とエチオピアの首都アディスアベバ郊外でそれぞれ1機ずつがほぼ同じ事故で失われた。

合わせて346人が死亡。どちらも飛行制御ソフトウェアの欠陥が原因だった。パイロットは最善を尽くしたが、機体は最終的に壊滅的な急降下を余儀なくされた。

エチオピアからケニアに向かっていたボーイング737MAX8型機が離陸直後に墜落し、乗客乗員157人全員が死亡した(2019年3月)

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画像説明, エチオピアからケニアに向かっていたボーイング737MAX8型機が離陸直後に墜落し、乗客乗員157人全員が死亡した(2019年3月)

これらの事故により、全世界の737 MAXは1年半以上にわたって運航停止となり、問題の修正とさらなる安全性チェックが実施された。FAAのトップはその後、同型を「歴史上最も細かく検査された輸送機」と評した。

しかし、737 MAXが運航を再開してから、電気系統の不具合や品質管理の問題など、注目すべき問題がいくつも発生している。

安全を求めて活動する人々からは、運航されるようになった航空機での不具合の報告件数についても懸念が示されている。

ボーイングは昨年12月、航空機1機でボルト1個が無くなっているのが確認されたことを受け、各航空会社に機体のかじを点検するよう呼びかけた。ボーイングは、「慎重を期しての」ことだと説明した。

相次ぐ事故の後、ボーイングは乗客の安全より利益を優先したとの非難に直面した。

内部告発もなされ、同社では従業員に過度なプレッシャーをかけてあまりに短期間に多くの航空機を製造したため、工場が混乱状態に陥り、生産ラインで手抜きが行われたとされた。

ボーイングは現在、かつてとは別の会社になったと主張している。デイヴィッド・カルフーン最高経営責任者(CEO)は、最高水準の安全性、品質、誠実さを重視していると繰り返し強調している。

だが、批判的な人々の一部は依然、納得していない。

「巨大な警鐘」

ボーイングの元シニア・マネージャーのエド・ピアソンさんは、2件の墜落事故が発生する前に737MAXの製造ラインにおける問題について警告を発していた。彼は現在、航空機の記録を精査している「航空安全財団」の代表を務めている。

彼はボーイングの工場は状況が改善されておらず、FAAは同社の責任を問うことができていないと主張した。

「これは巨大な警鐘だ」

「このように明らかな事故が起き、深刻な問題があるとボーイングが認めざるを得なくなるのは大きな幸運かもしれない」

ボーイングはこれまで一貫して、そのような問題の存在を否定してきた。

同社はFAAが運航停止を命じた後に声明を発表。「安全は当社の最優先事項であり、今回の事態が当社の顧客とその乗客に与えた影響について深く残念に思っている。私たちは、影響を受けた航空機と同じ構成を持つ737-9型機の即時検査を義務付けたFAAの決定に同意し、これを全面的に支持する」とした。

ボーイングは航空機納入までの顧客の待ち時間を短縮し、受注残を減らすため、737MAXの生産を増強している。

その主力機がこのような事態に見舞われた今回の事故は、これ以上ない悪いタイミングで起きたといえるだろう。

原因が何であれ、すでに傷ついた737MAXのブランドに対する不安は、特に乗客の間で、さらに高まりそうだ。