【解説】 なぜ新型コロナウイルスの症状は今も「しんどい」のか
ジェイムズ・ギャラガー、BBCラジオ4「インサイド・ヘルス」司会者

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今、新型コロナウイルスにかかると、どんな感じなのだろう?COVID-19にかかった友人があまりに大変で驚いていたのを知って以来、私はずっとこのことを考えている。友人の場合、3回目の感染は、それまでよりかなり重かったのだという。
この友人は病床からのメールで、「同じ病気に何度もかかる場合、かかるたびに少しずつ良くなるはずだと思っていた」と書いた。
確かに、パンデミックの最中にはしきりにそう言われていた。しかし、同僚や取材相手、学校の校門で雑談した相手の中には、この数カ月にコロナでひどい思いをした人たちがいる。
共通しているのは、1週間ほど咳や頭痛、発熱があること。そしてその後、倦怠感が長く続くことだ。
ここでひとまず、新型ウイルスの症状はそもそも実に多様だと強調しておく必要がある。ワクチン接種が始まる前でさえ、感染しても軽症や無症状の幸運な人たちもいた。
ある人にとって、COVID-19は鼻がむずむずする程度のものでしかない。洗面所の薬棚にラテラルフロー(迅速)検査キットが残っていないか、確かめるほどですらない。
しかし免疫の専門家らは、新型コロナウイルスはなお感染症を引き起こしており、以前よりも症状が悪化したり、何週間も回復しない可能性があると警告している。
いったい、何が起こっているのか?
新型ウイルスに感染後、どのような経過をたどるかは、ウイルスそのものと私たちの体の防御機能との戦いにかかっている。
初期段階は、ウイルスが体内にどれだけの足場を築き、どれだけ重症化するかが決まるため、非常に重要だ。
しかし、免疫力の低下とウイルスの進化が、その天秤(てんびん)を動かしている。
「とてもしんどい症状」
英エディンバラ大学の免疫学者エレノア・ライリー教授は、自身も「ぞっとするような」COVID-19にかかり、予想していたより「かなりひどかった」と話した。
ライリー教授は、「多くの人のCOVID-19に対する抗体レベルは現在、ワクチン接種が始まって以来、おそらく最も低いはず」だと指摘する。
抗体とは、ウイルスの表面に付着し、ウイルスの体内細胞への感染を阻止する極小のミサイルのようなものだ。
つまり、抗体がたくさんあれば、ウイルスを素早く掃討することができるし、感染しても短期間で軽症で済むとだろうと期待できる。
「しかし抗体レベルが低くなっている今、一時より多くのウイルスが体内に入り込み、より深刻な症状を引き起こしている」と、ライリー教授は話した。
大勢がワクチンを受けたり感染したりした時期から長時間が過ぎ、一般的に人の抗体レベルは相対的に少なくなっている。
英インペリアル・コレッジ・ロンドンのピーター・オープンショウ教授は、「かつて感染対策として非常に効果的だったのは、ワクチン接種の広範かつ迅速な実施だ。若年層もワクチンを打てたことが、実に効果的だった」と指摘する。

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しかしイギリスでは今年、ワクチンを受けられる人はさらに減った。昨年の冬は50歳以上が接種対象だったが、今年は65歳以上と、基礎疾患などによるリスクのあるグループに限られている。
オープンショウ教授は、自分は決して悪い予想ばかりする「悲観派」ではないとしながらも、ワクチンを接種する人が減った結果、「数日から数週間は治らないような、かなり厄介な病気に大勢がかかるだろう」と考えている。
「若くて健康的な人が、ひどいコロナ症状に見舞われる例も聞いている。COVID-19は驚くほど狡猾(こうかつ)なウイルスで、時にひどく体調を崩し、さらに『Long Covid(罹患後症状、コロナ後遺症)』に至ることもある」
オープンショウ教授によると、過去1年間に新型ウイルスに感染していなければ、今後感染する可能性は「十分にある」という。
イギリス政府の公式決定では、新型コロナウイルスで死亡する、あるいは入院治療を必要とするリスクのある人が、ワクチンの接種対象となっている。これにより、国民保健サービス(NHS)の負担が軽減されるという。
しかしライリー教授は、「だからといって65歳未満の人が新型ウイルスに感染しないわけでも、とてもしんどい症状にならないわけでもない」と指摘する。
「こうした人たちに追加接種をさせない結果、この冬には多くの人が仕事を1週間か2週間、あるいは3週間と休むことになると思う」
変化しているのは、誰がワクチンを受けるかという決定だけではない。ウイルス自体も変化している。
「ほとんど免疫がない」
抗体は非常に精密にできており、抗体とウイルスが付着する部分がほとんど一致している必要がある。ウイルスが進化し、その形状を変えれば変えるほど、抗体は効かなくなる。
オープンショウ教授は、「現在広がっているウイルスは免疫学的には、初期のワクチンの元となった、あるいは人々が最後に感染したオリジナルのウイルスから、かなりかけ離れている」と話した。
「多くの人が、オミクロン株とその派生型に対してほとんど免疫がない」

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もし新型コロナウイルスに感染してとてもつらかったり、以前よりも症状がつらいと感じる場合は、この減退する抗体と進化するウイルスの合わせ技にかかっている可能性がある。
しかし、だからといって重症化したり入院治療が必要になる可能性が高まるわけではない。
感染すると、免疫系の別部分が発動する。T細胞と呼ばれるものだ。T細胞は過去の感染やワクチンから、ウイルスの情報を得ている。
T細胞はウイルスに感染した細胞を見つけて殺すので、変異するウイルスに惑わされることは少ないという。
「T細胞が重症化や入院を防いでくれるだろうが、ウイルスを殺す過程で巻き添え被害が起き、とても気分が悪くなる」のだと、ライリー教授は説明した。
T細胞による新型コロナウイルスの排除は、筋肉痛や発熱、悪寒などにつながる
では、COVID-19は穏やかで無害な感染症になりつつある、という考えはどうなのか。
COVID-19に関連するヒト・コロナウィルスは他に4種類あり、一般的な風邪の症状を引き起こす。これらのウイルスが軽症だと考えられている理由の一つは、小児期に感染し、その後も生涯にわたって感染し続けるからだ。
オープンショウ教授は、COVID-19は「まだそこまでには至っていない」としながらも、「感染を繰り返すことで自然免疫ができるはずだ」と明言する。
しかしそれまでの間、一部の人は冬につらい思いをしなくてはならないのだろうか?
「残念ながらそういうことだ」と、ライリー教授は述べた。










