ロシアが大規模攻撃、ウクライナ政府庁舎に初めて被害 ゼレンスキー氏は強く非難

ウクライナ政府の主要な政府庁舎にあたる灰色の石造りの大きなビルで、右側の最上階2階が燃えている。消火を試みるクレーンが写っている。

画像提供, Telegram/svyrydenkoy

画像説明, ロシアの攻撃を受けて火災が発生したウクライナの政府庁舎

サラ・レインズフォード東欧特派員(キーウ)、レイチェル・ヘイガン、ヤロスラフ・ルキフ(ともにロンドン)

ウクライナ各地で7日朝にかけ、ロシアによる大規模な攻撃があり、首都キーウでは政府の主要庁舎が初めて被害を受けた。ウクライナのユリア・スヴィリデンコ首相が明らかにした。

首相は、「敵の攻撃によって」政府庁舎の屋根と上層階が損傷し、火災が発生したと説明した。

当局によると、各地への攻撃で、少なくとも4人が殺害された。キーウのスヴャトシンスキー地区では9階建て住居ビルが攻撃され、赤ちゃんと若い女性が死亡したという。

ウクライナ空軍は、今回の夜間攻撃でロシアが発射したドローンとミサイルは計800以上で、これまでで最多だとした。

空軍によると、ウクライナ各地の37カ所にミサイル9発とドローン56機が撃ち込まれた。さらに8カ所で、撃墜したドローンなどの残骸が落下したという。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ザポリッジャ、クリヴィイ・リフ、オデーサの各都市や、スーミ州、チェルニヒウ州で被害が出たと、ソーシャルメディアで説明した

大統領は、「本当の外交がもうずっと前に始まってもよかったはずのこの時に、こうした殺りくが行われた。これは、意図的な犯罪で、戦争を長引かせようとするものだ」と非難し、国際社会に対し、攻撃をやめさせる政治的意思を示すよう求めた。

一方、ロシア国防省は、ウクライナの軍産複合体や輸送インフラを攻撃し、兵器や軍事関連の倉庫に損害を与えたと発表した。

動画説明, ロシアの攻撃受けたウクライナ政府庁舎、「甚大な被害」をBBC特派員が報告

迎撃されたドローンが衝突か

被害を受けたウクライナ政府庁舎は、主要閣僚の執務室が入っており、閣僚庁舎として知られている。

キーウのヴィタリ・クリチコ市長は、迎撃されたドローンが偶発的に衝突した可能性があるとした。ただ、7日時点で詳細は不明。

市長は、「ペチェールシク地区で、UAV(無人航空機)が撃墜された可能性があり、政府庁舎で火災が発生した」と通信アプリ「テレグラム」に書いた。

ロシアによる今回の攻撃は、これまでの攻撃とは少し性質が異なる。キーウ中心部はかなり厳重に防衛されており、政府庁舎が直撃されたことはこれまでなかった。それだけに、市民の間に動揺が広るのは必至だ。

象徴的な意味合いの伴う攻撃でもある。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、和平の準備ができていると話しているが、それが見せかけだということを明確に示している。ロシアは攻撃をやめるどころか、攻勢を強めている。

BBC取材班は、被害があった閣僚庁舎に近づくことを許されなかった。政府、議会、大統領官邸など主要官公庁の建物が集中している一帯は、検問所が設置されている。

取材班は7日早朝、キーウのマイダン(独立広場)のすぐ後方で大きな煙の柱が上がっているのを目撃した。ロシアの巡航ミサイル2発が高速で飛ぶのも目と耳で確認。その後、爆発が起きた。

動画説明, ロシアは「私の国を滅ぼしたい」のだとキーウ住民 自宅が破壊され

キーウで被害を受けた集合住宅では、ヴァレンティーナさんという女性が、夫と就寝中に窓ガラスが粉々にされ、全身に降りかかったと話した。隣人の若い女性とその赤ちゃんが死亡したといい、深く悲しみながら、「少なくとも私たちは生きている」と話した。

住民らによると、若い女性の一家は引っ越してきたばかりで、女性の夫は重傷を負い病院で治療中だという。

サッカーのウクライナ代表選手ゲオルギー・スダコフさん(23)は、キーウの集合住宅の自宅が妻子らの在宅中にドローン攻撃を受け、甚大な被害が出たとインスタグラムに書いた。

外国に遠征中のスダコフさんは、攻撃直後の写真と動画を投稿。家族が負傷したかは明らかになっていない。

キーウ当局によると、スヴャトシーンキー地区とダルニツキー地区で、集合住宅数棟が直撃を受けて一部損壊したという。

茶色のカーディガンと花柄のシャツを着たショートヘアのヴァレンティーナさんが、アパートの前に立っている。背後には消防士と消防車が見える
画像説明, 就寝中に自宅がロシアのドローン攻撃を受けたと話すヴァレンティーナさん

このほか、ザポリッジャ市では空爆で住宅や保育所なども被害を受け、17人が負傷したと、ザポリッジャ州のイワン・フェドロフ知事が話した。

知事によると、同州のノヴォパウリフカ村はロシアの滑空爆弾で攻撃され、女性1人が死亡、男性1人が行方不明になったという。

ゼレンスキー大統領は、スーミ州サフォニフカで1人、チェルニヒウ州でも1人が殺害されたとした。

ロシアは、ゼレンスキー大統領の出身地のウクライナ中部クリヴィー・リフも攻撃。現地では、インフラ関連の3施設が被害を受けた。ウクライナではこの夜、すべての州で空襲警報が出された。

一方、ウクライナによるロシアへの攻撃もあった。ロシア国防省は、同国のいくつかの州で空軍が、ドローン計69機を撃墜または迎撃したとした。

ロシア西部ベルゴロド州のヴャチェスラフ・グラドコフ知事は7日、少なくとも3人の民間人が殺害され、いくつかの建物が損壊したと明らかにした。

ウクライナ無人機部隊のロベルト・ブロヴディ司令官は、ロシアの主要石油パイプライン「ドルジバ」をドローンで攻撃したと述べた。ロシア・ブリャンスク州でポンプ施設を攻撃したという。

プーチン大統領は先週、停戦の翌日に西側がウクライナに「再保証部隊」を派遣するという西側案を拒絶した。この案は、フランス・パリで4日に開かれた、ウクライナを支援する「有志連合」35カ国の首脳会合で協議された。

イギリスのキア・スターマー首相は、7日にかけてウクライナが受けた攻撃を非難。「プーチンは、自分は何の罰も受けずに行動できると信じて」おり、「和平について真剣ではない」ことが明らかになったと述べた。

プーチン大統領は、西側のこの動きを阻止しようとしている。ウクライナに送られる軍隊はすべて「正当な標的」になると警告している。

ロシアは2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始し、現在、ウクライナ領土の約2割を掌握している。これには、2014年に不法に併合した南部クリミア半島を含む。

(追加取材:ヴィタリー・シェフチェンコ)