【解説】EUはロシア凍結資産を使う対ウクライナ融資を認めるか ゼレンスキー氏は必要性を強調

ウクライナのゼレンスキー大統領が、両手を挙げる身振りを交えながら発言している。背景にはEUのシンボルカラーの青い画面にEUの旗が映っている

画像提供, JOHN THYS/AFP

画像説明, EUの重要な首脳会議には、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も参加した(18日、ブリュッセル)

ポール・カービー欧州デジタル編集長

欧州連合(EU)は18日、首脳会議を開き、凍結したロシア資金を活用し、ウクライナに数十億ユーロ規模の融資をする計画を協議した。この会議に出席したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナの軍事的、経済的なニーズに対応するため、この計画に急ぎ合意するよう訴えた。

ウクライナは数カ月以内に資金が枯渇する見通し。ゼレンスキー大統領は、春までに資金注入がなければウクライナは「ドローンの生産を減らさざるを得ない」と述べた。

EU域内にあるロシア資産は総額2100億ユーロ(約38兆円)に上り、その大半はベルギーに拠点を置くユーロクリアが保管している。これまでベルギーや一部のEU加盟国は、この資金を「賠償融資」として使うことに反対してきた。

ロシアはEUの指導者らに対し、自国の資金を使わないよう警告している。一方、ポーランドのドナルド・トゥスク首相は、EUは「今のこの事態に対応」しなくてはならないと呼びかけた。

ブリュッセルでの首脳会議は戦争の重大な局面で開かれている。ロシアは凍結資金を取り戻すため、モスクワの裁判所にユーロクリアを相手取った訴訟を起こしている。

ゼレンスキー氏は、ウクライナは来年にも、確実に450億~500億ユーロの財政赤字に直面すると述べた。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「解決策がないままこの首脳会議を終わらせない」と約束した。加盟国の一つの政府関係者は、合意に達する見込みについて「慎重に楽観視しているが、過度に楽観的ではない」と話した。

ベルギーのバルト・デウェーヴェル首相の動向に、注目が集まっている。デウェーヴェル首相は18日のベルギー議会で、すべての要件が固まり、他のEU諸国と共有されるならば「我々は他の欧州諸国と共に深淵に飛び込み、パラシュートが我々を支えてくれることを願うだけだ」と述べた。

グレーを基調としたモダンな部屋で、デウェーヴェル首相とゼレンスキー大統領が座って会談している。2人の間にあるコーヒーテーブルには、ベルギーとウクライナの国旗と、そしてEUの旗のミニチュアが置かれている

画像提供, PRESIDENTIAL PRESS SERVICE/HANDOUT/EPA/Shutterstock

画像説明, ゼレンスキー大統領は、融資計画の可否の鍵を握るベルギーのバルト・デウェーヴェル首相(左)とも会談した(18日、ブリュッセル)

一方、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、戦争終結に向けた合意が「これまでになく近づいている」と述べた。この戦争は2022年2月、ロシアによるウクライナへの全面侵攻で始まった。

ホワイトハウス関係者がAFP通信に語ったところによると、アメリカとロシアの当局者はこの週末にも、和平案をめぐる追加協議のためマイアミで会談する予定。

会談には、クレムリン(ロシア大統領府)のキリル・ドミトリエフ特使、アメリカのスティーヴ・ウィトコフ特使、そしてトランプ氏の義理の息子ジャレッド・クシュナー氏が参加するとみられている。

ウクライナの当局者もアメリカに向かっている。ブリュッセルに滞在中のゼレンスキー大統領は、戦争が続く場合は軍を支援するために使うか、あるいは全額を復興資金にあてるか、どちらにしても資金が必要だと述べた。

「これは道義的で、公正で、合法なことだ。実に多くの専門家が、その専門的な知見によって確認している」と、ゼレンスキー氏は強調した。

ロシアは最新の和平提案にまだ応じていないが、クレムリンは、アメリカが支援し欧州が主導する、ウクライナへの多国籍部隊の派遣計画は容認できないと強調している。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は17日、「ヨーロッパは完全に劣化している」と、自身の見解を強調。さらに、「ヨーロッパの子豚ども(ウクライナを支援する欧州諸国を指す侮蔑的な表現)」がロシアの崩壊から利益を得ようとしていると語った。

軍服を着た2人の男性の前を、スーツ姿のプーチン大統領が通り過ぎている。3人とも手に飲み物の入ったグラスを持っている

画像提供, Alexander KAZAKOV/POOL/AFP

画像説明, EUの一部の国々は、ウクライナへの融資により、プーチン大統領の戦争継続を歯止めできると考えている

欧州委員会は、欧州にあるロシア資産2100億ユーロのうち、今後2年間でウクライナに約900億ユーロを融資する案を提示している。

これは、ウクライナが2026年と2027年を乗り切るために必要とされる1370億ユーロの約3分の2に相当する。

EUはこれまで、資金そのものではなく、その資金から生じた利息をウクライナに提供してきた。

「今のこれは、ウクライナが来年も戦い続けるための正念場だ」と、フィンランド政府の関係者はBBCに話した。「もちろん和平交渉は行われているが、この融資でウクライナは、『我々は絶望していない、戦いを続ける資金がある』と言える力を得る」

欧州委員会のトップは、この融資は、ロシアの戦争コストを引き上げることにもつながると述べている。

ロシアの凍結資産は、EU指導者らが検討している唯一の選択肢ではない。ベルギーが支持する別の案は、EUが国際市場で資金を借り入れ、EU予算を担保にするというものだ。

しかし、その場合は全会一致の採決が必要となる。

ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相は、ウクライナ支援のためにEU資金を追加拠出することは認めないと明言している。

ウクライナにとって、今後数時間は極めて重要だ。EU指導者らも、融資決定の重大性を強調してきた。

フォン・デア・ライエン氏は18日、「緊急性は理解している。事態は切迫している。我々全員がそれを感じ、目にしている」と述べた。

EU本部のロゴと旗が描かれた演壇で話すフォン・デア・ライエン委員長。白のブラウスにピンクのスーツを着ている。背後には加盟国の旗が並んでいる

画像提供, EPA

画像説明, フォン・デア・ライエン欧州委員長は、EU首脳には二つの選択肢が提示されていると述べた

ロシア資産の活用を推進する上で主導的な役割を果たしているのは、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相だ。メルツ首相は17日の独連邦議会で、戦争を続けることは無意味だという「明確なシグナル」をロシアに送ると述べた。

EU当局者らは、凍結ロシア資産を利用するための法的根拠は確固たるものだと自信を示しているが、ベルギーのデウェーヴェル首相は依然として納得していない。

凍結されているロシア資産の場所と金額を示した図。欧州連合(EU)ではベルギー(1800億ユーロ)、フランス(190億ユーロ)、ルクセンブルク(100億ユーロ)、ドイツ(2億1000万ユーロ)。その他では日本(281億ユーロ)、イギリス(266億ユーロ)、カナダ(151億ユーロ)、スイス(62億ユーロ)、アメリカ(43億ユーロ)となっている。ただし、ルクセンブルクは100億~200億ユーロの幅がある。出典は欧州議会調査サービス(2025年)

この動きに対する最大の反対勢力と見られているのはハンガリーだ。オルバン首相とその側近たちはサミット前、凍結資産の計画が首脳会議の議題から外されたとまで示唆した。しかし欧州委員会の関係者は、それは事実ではなく、首脳会議で27加盟国が扱う問題だと強調した。

スロヴァキアのロベルト・フィツォ首相も、資金が復興ではなく武器調達に使われるのならば、ロシア資産の利用に反対する姿勢を示している。

EUで重要な採決が行われる際には、欧州の人口の65%を占める少なくとも15加盟国の賛成が必要となる。いずれにせよ、欧州理事会のアントニオ・コスタ議長(EU大統領)は、ベルギーの頭越しに決定を進めることはしないと約束している。

コスタ議長はベルギーの公共放送RTBFに対し、「ベルギーに反対票を入れたりしない」と話した。「我々はベルギー政府と、大いに集中的に協力し続ける。ベルギーが受け入れられない可能性のあるものを、承認したくない」

ベルギーはまた、格付け会社フィッチがユーロクリアをネガティブ・ウォッチに置いたことを認識している。フィッチはこの決定の理由の一つとして、欧州委員会のロシア資産活用計画によるバランスシートへの「低い」法的リスクを挙げている。ユーロクリアの最高経営責任者も、この計画に

「ベルギーの懸念に応える方法を、見つけなくてはならない」と、フィンランド当局者は付け加えた。「我々はベルギーと同じ側にいる。すべてのリスクが可能な限りチェックされるよう、一緒に解決策を見つける」

アメリカと欧州、その他の対ウクライナ軍事支援額の推移を示した棒グラフ。2022年1~2月から2025年10月31日までのデータで、出典は独キール国際経済研究所。2022年3月以降のほとんどの期間、支援額の半分以上をアメリカが占めている状態が続く。最も高いのは2023年1~2月で、総額150億ユーロ以上のうち100億ユーロ近くをアメリカが拠出している。しかしトランプ氏が大統領に就任した2025年1~2月以降はグラフ上で見えないくらいまで減少し、支援額のほとんどを欧州が賄っている状態。また、全体の支援額も減っている。なお、「欧州」には欧州連合(EU)加盟国の政府と機関、ノルウェー、イギリス、アイスランド、スイスが含まれる。「その他」にはオーストラリア、カナダ、日本、ニュージーランド、韓国、トルコ、中国、台湾、インドが含まれる

しかし、疑念を抱いているのはベルギーだけではない。現在、この計画については過半数の支持も保証されていない。

イタリアのジョルジャ・メローニ首相はイタリア議会で、「法的根拠が確かなら、この合意を支持する」と述べた。「もしこの取り組みの法的根拠が確かでないなら、我々はこの紛争開始以来、ロシアに初めて本当の勝利を与えてしまう」。

マルタとブルガリア、チェコも、異論の多いこの提案に納得していないとされている。

もし合意が成立し、ロシア資産がウクライナに渡された場合、ベルギーにとって最悪のシナリオは、裁判所が資金をロシアに返還するよう命じる事態だ。

一部の国々は、数十億ユーロ規模の金融保証を提供する用意があると述べているが、ベルギーは具体的な金額の保証を求めるものと思われる。

いずれにせよ、欧州委員会の当局者らは、ロシアが資金を取り戻す唯一の方法は、ウクライナに賠償金を支払うことだと確信している。そしてその時点でウクライナは、EUに「賠償融資」を返還することになる。