ADHDの薬物治療、交通事故や犯罪行為のリスク軽減に寄与 欧州の研究

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フィリッパ・ロクスビー保健記者
注意欠如・多動性障害(ADHD)と新たに診断された人々に対する薬物治療が、それらの人たちのアルコールなどの物質使用症や自殺行動、交通事故、犯罪行為のリスクを軽減する可能性があることが、最新の研究で明らかになった。
こうしたリスクは、衝動的な行動や注意散漫といった、ADHDの一般的な症状に関連しているという。
ADHDは、世界で子どもの約5%、成人の約2.5%が罹患していると考えられており、診断件数は増加傾向にある。
医学誌「British Medical Journal」に掲載されたこの研究は、薬物治療の幅広い潜在的な利点を裏付けるものであり、患者が薬物治療を開始するかどうかの判断材料になる可能性があると、研究者らは述べている。
ADHDであることは、脳の働きが多くの人とは異なることを意味する。
症状には、集中力の欠如、じっとしていられないこと、高い活動性、衝動的な行動などが含まれる。
支援を求める人が急増している一方で、ADHDの発症率自体が上昇しているわけではない。BBCの昨年の調査では、イギリスでは診断までの待機期間が長期化していることが明らかになっている。
診断は、症状が生活に中程度以上の影響を与えている場合に限って行われる。
最も一般的に処方される薬は「刺激薬」と呼ばれ、日常的な症状の管理に役立つとされている。ただし、行動面への長期的な効果については限定的な証拠しか得られていない。また、頭痛や食欲不振、睡眠障害といった副作用が広く知られており、安全性に関する議論を呼んでいる。
リスクのある行動の発生率が低下
今回発表された研究は、スウェーデンでADHDと診断された6歳から64歳までの14万8500人を対象に行われた。
このうち57%が薬物治療を開始しており、そのうち88%にはメチルフェニデートが処方されていた。メチルフェニデートは、コンサータやリタリンという名でも知られる。
英サウサンプトン大学とスウェーデン・カロリンスカ研究所の研究者らは、ADHD治療薬の服用が、以下の初回発生率の低下と関連していることを明らかにした。
・自殺行動:17%減
・物質使用症:15%減
・交通事故:12%減
・犯罪行為:13%減
また、再発事例においても、ADHD治療薬の服用は以下の減少と関連していた。
・自殺未遂:15%減
・物質使用症:25%減
・偶発的な負傷:4%減
・交通事故:16%減
・犯罪行為:25%減
この研究の著者の一人、サウサンプトン大学のサミュエル・コルテーゼ教授(児童・青年精神医学)は、「ADHDを治療しなかった場合のリスクについての情報は、存在しないことが多い」と述べた。
「現在では、薬でこれらのリスクを軽減できるという証拠が得られている」
薬物治療によって衝動的な行動や集中力の欠如が抑えられることで、運転中の事故のリスクが減少したり、犯罪につながる攻撃的な行動が抑制されたりする可能性があるという。
一方で研究者らは、今回の研究が可能な限り厳密に設計されたとしながらも、結果が遺伝的要因、生活習慣、ADHDの重症度などの影響を受けている可能性を否定できないとしている。
多くの国では、ADHDに適した薬を入手することが難しく、一部の薬剤は供給不足に陥っている。イギリスでは、診断後に専門医の診察を受けて薬を処方されるまでに数年かかる場合もあるという。
西オーストラリア州・カーティン大学の司法保健グループでトップを務めるスチュアート・キナー教授は、今回の研究が「ADHDの診断と治療がもたらす広範な利益」を示していると述べた。
キナー教授は、「ADHDを診断・治療しないことで、アルコールや他の薬物による自己治療、精神的健康の悪化、負傷、そして収監につながる可能性がある」と語った。
「診断されていないADHDを抱えるあまりに多くの人々が、刑事司法制度に取り込まれ、その中でもなお、診断も治療も受けられないままでいる」
英アストン大学のイアン・メイドメント教授(臨床薬学)は、この研究が「これらの薬の潜在的な利益に関する理解を深めるものだ」と評価した。
一方でこの研究が、患者が実際に薬を服用していたかどうかや、服用量の違いによる影響を評価していない点を指摘した。





