トランプ氏、活動家カーク氏を「アメリカの英雄」とたたえる 追悼式典に多数が参加

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銃撃事件で殺害されたアメリカの保守系活動家チャーリー・カーク氏(31)を追悼する式典が21日、アリゾナ州で開かれ、ドナルド・トランプ大統領が10万人近い参加者を前に、カーク氏を「偉大なアメリカの英雄」で「殉教者」だと称賛した。
式典には、メインスピーカーのトランプ氏のほか、J・D・ヴァンス副大統領ら政権幹部、カーク氏が設立した組織で大学キャンパスにおいて保守的な活動を進める「ターニング・ポイントUSA」のメンバー、保守系運動の著名人、カーク氏の活動や右派キリスト教的な世界観に影響を受けたと話す人々らが参加。今月10日に銃殺されたカーク氏の政治的レガシーをたたえた。
会場となったフィーニックス近郊のステート・ファーム・スタジアムの雰囲気は、騒々しい政治集会に似ていた。開場前に何万人もがスタジアムの外で列を作って長時間並び、前夜から席の確保のために野営する人もいた。多くの人が、「アメリカを再び偉大に(MAGA)」の帽子やトランプ氏関連のグッズ、赤・白・青の服を身に着けるなどしていた。
5時間に及んだ式典では、カーク氏の活動を継承する必要性と、同氏の深い信仰心が強調された。また、同氏が殉教者として繰り返したたえられた。
ヴァンス副大統領や、カーク氏の妻エリカ・カーク氏のスピーチに続いて、トランプ氏が登壇すると、会場では大歓声が上がった。トランプ氏は繰り返しカーク氏を称賛しつつ、都市における犯罪問題を語り、ジョー・バイデン前大統領をあざけるなど、いつもの政治的な話も織り交ぜた。
トランプ氏は、「彼は勇敢に生き、大胆に生き、見事に議論したため暗殺された」とカーク氏について述べた。また、「彼は今やアメリカの自由のための殉教者だ」とし、「今日ここにいる全員を代表して言えるのは、誰もチャーリーを決して忘れないということだ。そして、歴史も彼を忘れないだろう」と話した。
続けてトランプ氏は、カーク氏と自分は一点において意見が異なると発言。「彼は敵を憎んでいなかった。敵の幸せを願っていた」と述べると、会場で笑いが起きた。そして、「そこが私とチャーリーの違いだ。私は敵を憎み、敵の幸せなど望んでいない」と話した。
トランプ氏はさらに、「過激な左派」を非難し、国内の暴力事件は左派によるものだと主張した。スピーチの終盤では、カーク氏を「同世代の偉人」と称賛。ステージ上でエリカ・カーク氏と抱き合うと、会場は拍手に包まれた。

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容疑者を「許す」とカーク氏の妻
トランプ氏の前にスピーチに立ったエリカ・カーク氏は、涙ながらに夫との関係について語り、夫の遺志を継ぐことを誓った。エリカ氏は夫の死後、ターニング・ポイントUSAの新たな最高経営責任者(CEO)に任命されている。
エリカ氏は、「彼の命を奪った傷をこの目で見た」、「彼が感じたであろうすべてを私も感じた。衝撃を感じた。恐怖を感じた。それと、思いもよらなかったほどの深い悲しみも」と述べた。
また、「チャーリーが暗殺されてからの10日間、暴力は起きていない。暴動も起きていない。革命も起きていない。代わりに、夫がこの国で常に祈り求めていたもの、つまりリバイバルが起こった」と語った。
続けてエリカ氏は、「私の夫チャーリーは、彼の命を奪った若者と同じような若者たちを救いたいと思っていた」とし、カーク氏を殺害したとされるタイラー・ロビンソン容疑者(22)を許したと発言。「あの人、あの若者を、私は許す。それがキリストがしたことであり、チャーリーがするであろうことだからだ」、「憎しみへの答えは憎しみではない」と述べた。

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式典でスピーチした他の人々は、カーク氏の死でアメリカの保守的な動きがいっそう活性化するだろうと述べた。
ホワイトハウスのスティーヴン・ミラー次席補佐官は、「チャーリーが死んだ日、天使たちが泣いた。しかしその涙は、私たちの心の中で炎へと変わった」、「私たちの敵は、私たちの強さを理解できないだろう」などと述べた。
スージー・ワイルズ首席補佐官は、昨年の大統領選挙でカーク氏が若者にトランプ氏への投票を呼びかけていたことを踏まえ、「チャーリーは単に支援してくれただけでなく、勝利の決め手となった。それは間違いない」と述べた。
ヴァンス副大統領は、「U-S-A、U-S-A」というかけ声が沸き起こるなか、「彼がいなければ、私たちはここにいなかっただろう」とスピーチ。カーク氏の政治的レガシーを「ここからは私たちが引き継ぐ」と述べた。
このほか、マルコ・ルビオ国務長官、ピート・ヘグセス国防長官、ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健長官らがステージ上でスピーチした。
会場では、トランプ氏と公に対立した富豪イーロン・マスク氏が、トランプ氏の隣に座り、握手をし談笑する場面も見られた。
政治的分断の露呈
党派色が強いこの式典は、カーク氏の死がアメリカの極端な政治的分断を露呈させたことを反映していた。右派の多くは、左派が政治的暴力をあおっていると非難している。
トランプ政権は、「急進左派」への締め付けを強めようとしている。これに対しては、政府の権限乱用との非難が噴出している。カーク氏の死が、市民の自由を侵害する口実に利用されているとの主張も出ている。
カーク氏殺害容疑で訴追されたロビンソン容疑者に対しては、検察が死刑が求める方針を示している。殺害の動機については、当局はまだ明らかにしていない。
カーク氏は18歳の時に、大学のキャンパスで保守思想を広める学生団体「ターニング・ポイントUSA」を共同設立した。
各地のキャンパスで討論会を開催し、挑発的なスタイルで知られるようになった。やじる聴衆の前で、学生をマイクの前に招き、自分の右派キリスト教的世界観に異議を唱えさせた。
こうしたやり取りの動画が拡散され、Xでは500万人以上、TikTokで700万人以上のフォロワーを獲得していた。これが、トランプ氏への若年票へとつながった。
若い保守層を活気づける一方、人種や犯罪に関する発言がリベラル派の激しい反発を招くことも多かった。カーク氏は銃を持つ権利を強く支持し、人工妊娠中絶には強く反対し、トランスジェンダーの人々権利を批判した。新型コロナウイルスに関する虚偽の主張も拡散していた。











