自然保護活動家のジェイン・グドール氏が死去、91歳 チンパンジー研究の世界的権威

白髪のデイム・ジェイン・グドールがチンパンジーの赤ちゃんを抱きしめ、頭にキスをしている

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チンパンジー研究の世界的権威で自然保護活動家のデイム・ジェイン・グドールが1日、老衰のため死去した。91歳だった。

グドール博士は、研究を通じて人間とチンパンジーがどれほど近縁かを明らかにしたほか、世界各地で保護活動にも精力的に取り組んだ。

ジェイン・グドール研究所の声明によると、グドール博士はアメリカでの講演ツアー中、訪問先のカリフォルニア州で老衰のため死去した。

同研究所は、グドール博士の発見は「科学に革命をもたらした」として、博士は「この自然界の保護と再生に取り組んだ不屈の擁護者」だったと称えた。

動画説明, 冒険心を最期まで……チンパンジー研究の世界的権威、ジェイン・グドール氏

国連は、グドール氏は「地球とそこに住むすべての生き物のため疲れを知らずに働き、人類と自然への並外れた遺産を残した」と述べ、その死を悼んだ。

環境保護団体「グリーンピース」は、グドール博士を「現代における真の自然保護の偉人の1人」と呼び、その死に「胸が張り裂ける思い」だと述べた。

グリーンピース・イギリス支部の共同エグゼクティブ・ディレクター、ウィル・マカラム氏は、「グドール博士の功績は科学だけにとどまらない。彼女は、自然保護とより良い世界への希望をもたらすの運動にきっかけになった。世界に広がったその運動も、彼女の功績だ」とした。

自然主義者クリス・パッカム氏はBBCに対し、グドール氏は自分にとってヒーローの1人で、「革命的」かつ「非凡な」人物だったと語った。

「今は地球上の生命を守るため、ヒーロー全員が最前線で戦う必要がある。その時にヒーローの1人を失うなんて悲劇だ」

白髪交じり髪をポニーテールにまとめたグドール博士が、タンザニアの森林で木のそばに座り、右手にペンを持ち、メモを取っている。前にはチンパンジーがいる

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グドール博士は1934年に英ロンドンで生まれた。「ドクター・ドリトル」や「ターザン」 などの本を読んで育ち、動物に魅了されていったと、生前に語っていた。

20代半ばの頃、ケニアにある友人の農場を訪れた際に、著名な霊長類学者ルイス・リーキー氏と出会った。学位を持たないグドール氏の可能性を見出したリーキー氏は1690年、グドール氏がタンザニアのジャングルで研究できるよう支援した。これが、グドール氏の初めての現地活動となった。

グドール氏は同年、人間以外の動物が道具を使う様子を世界で初めて記録した。同氏が「デイヴィッド・グレイビアード」と名付けた雄のチンパンジーが、棒を使ってシロアリを掘り出す様子を観察したのだった。

それまでは、道具を使う能力は人間にしかないと考えられていた。彼女の観察結果は長年の科学的思考を覆し、進化科学の未来を形作った。

彼女の研究は主要な学術誌に掲載されたほか、1965年には米誌「ナショナル・ジオグラフィック」の表紙を飾り、チンパンジーの感情やその社会性を世界に紹介した。

森の中でグドール博士が笑顔を浮かべ、チンパンジーを至近距離で観察している

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グドール氏は、チンパンジーが家族と強い絆を築くことや、縄張りをめぐって抗争に至ることもあると突き止めた。俳優オーソン・ウェルズ氏がナレーションを務めたテレビドキュメンタリーでは、グドール氏がチンパンジーの赤ちゃんと遊んだり、じゃれ合う姿が紹介された。

チンパンジーに名前を付け、「私の友達」と呼ぶなど、研究対象の動物と密接にかかわるグドール氏のアプローチは当時、主に男性の科学者たちから嘲笑された。それでもグドール氏は、学士号やほかの科学的訓練の経験もない中で、研究成果をもとに博士号を取得した。

現地での経験を経て、活動家としての道を歩み始めると、動物園や医学研究のために捕らわれているチンパンジーの解放に尽力。その後、生息地の破壊が拡大していることを受け、気候変動対策の必要性も訴えるようになった。

2024年のBBCのインタビューでは、「私たちは6度目の大絶滅の真っただ中にいる。(中略)自然を再生し、既存の森林を保護するために、私たちがもっと努力すれば、状況の改善につながる」と話していた。

晩年の活動について、何が自分のモチベーションになっているのか問われると、「人は自分たちの子どもに未来を残したいと望んでいるはずだ」と答えた。

グドール博士がチンパンジーの赤ちゃんの大きな顔写真を背に、壇上でマイクに向かって話をしている

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1977年に設立されたジェイン・グドール研究所は、チンパンジーの保護に取り組み、動物や環境に利益をもたらすことを目指すプロジェクトを支援している。

グドール氏は2003年にイギリスで「デイム」の称号を与えられ、2025年にはアメリカで大統領自由勲章を受章した。

仕事のために絶えず世界を飛び回っていることで知られ、2022年にはタイムズ紙に、1986年以降、同じベッドで3週間以上寝たことがないと語っている。

亡くなる直前まで活動を続け、1週間前にはニューヨークの講演会場でインタビューに応じていた。10月3日にはカリフォルニア州で登壇予定だった。この講演のチケットは完売していたという。

「先見の明のある人道主義者」

イギリス王室のサセックス公爵ハリー王子とメガン妃は、グドール博士を自然保護のために尽力した「不屈の擁護者」と称え、敬意を表した。

「DBE(大英帝国勲章デイム・コマンダー)を受けたジェイン・グドール博士は、先見の明のある人道主義者で、科学者で、地球の友人で、私たちの友人だった」と、サセックス公爵夫妻は声明で述べた。

俳優で環境活動家のレオナルド・ディカプリオ氏は、グドール氏を「地球の真のヒーロー」と形容。

「何十年にもわたり、ジェインは疲れ知らずのエネルギーで世界を駆けまわり、自然界の驚異を何世代にも伝えてきた」と、ディカプリオ氏は述べた。

「彼女は、思いやりを持ち、行動し、希望を持つよう、何百万もの人々にインスピレーションを与えた」

バラク・オバマ元米大統領は、「科学にかかわる何世代もの女性たちのためにドアを開いた」と、グドール氏をたたえた。

カナダのジャスティン・トルドー前首相は、「彼女の思いやり」は未来の保護活動の中で「生き続けるだろう」と語った。

グリーンピースのほか、「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」などさまざまな環境保護団体も、グドール博士の功績をたたえている。