イスラエルがシリア首都など空爆、南部で少数派の衝突続くなか 米国は終結への「具体的措置」で合意と

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イスラエル軍は16日、シリアの首都ダマスカスにある国防省および南部地域に展開している政府軍に対して空爆を行った。シリア南部のスワイダ県では、ドゥルーズ派の民兵とベドウィン系住民の間で衝突が起きており、4日目に入っている。
同県では13日に衝突が始まり、これまでに300人以上が死亡したと報告されている。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「我々のドゥルーズの兄弟を救い、政権のギャングを排除するために行動している」と述べた。
これに対しシリア外務省は、イスラエルによる攻撃を「裏切りの侵略」と非難した。
アメリカのマルコ・ルビオ国務長官は、シリア南部での暴力を「非常に懸念している」と述べた上で、数時間以内に終息するだろうとの見方を示した。
ルビオ国務長官は16日夜、Xに「この憂慮すべき、恐ろしい状況を今夜終わらせるための具体的な措置に合意した」と投稿した。
シリア外務省は、「現在の危機を平和的に解決するために、アメリカおよびアラブ諸国が行った努力を歓迎する」との声明を発表した。
シリアの国営SANA通信によると、シリア軍はスワイダ市からの撤退を開始した。
同通信は、軍が「非合法武装集団の追跡を完了した」ことを受けて、シリア政府とスワイダの宗教指導者との合意に基づき、同市からの撤収を進めていると伝えている。
一方、イスラエル政府は停戦に向けた動きについて、現時点でコメントを出していない。
イスラエル軍は14日、シリアの治安部隊がスワイダに展開したのを受けて、攻撃を開始した。シリア軍がスワイダに展開したのは、反体制勢力がバッシャール・アル・アサド前大統領を打倒した2024年12月以降で初めて。

ドゥルーズ派を含むシリアの少数派の住民は、イスラム教シーア派の分派にあたり、独自の信仰体系とアイデンティティーを持っている。アフメド・アル・シャラア暫定大統領率いるスンニ派政権は少数派の保護を約束しているが、住民らは依然として不信感を抱いている。
こうした不安は、過去8カ月間に複数回発生した宗派間の暴力によってさらに高まっている。5月には、ダマスカスおよびスワイダでドゥルーズ派、治安部隊、そしてイスラム主義戦闘員との間で衝突が起き、数十人が死亡したと報じられている。
この戦闘を受けて、政府はドゥルーズ派民兵との間で、スワイダ県における地元治安部隊を、ドゥルーズ派から採用することで合意した。
スワイダで300人以上が死亡と監視団体
一方、イスラエルのネタニヤフ首相は、同国内およびイスラエルが占領するゴラン高原に住むドゥルーズ派との深い結びつきを理由に、シリアにおけるドゥルーズ派の被害を防ぐと強調している。
イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は16日午後、「ダマスカスへの警告」は終わったとソーシャルメディアに投稿。イスラエル軍が「ドゥルーズ派を攻撃した勢力を完全に撤退させるまで、スワイダでの作戦を力強く継続する」と述べた。
カッツ国防相はその後、「痛烈な打撃が始まった」という文章と共に、ダマスカス中心部のウマイヤド広場にあるシリア国防省の入り口付近にイスラエルの空爆が命中した瞬間、生放送中のテレビ司会者が机の下に身を隠す様子を映した映像を投稿した。
ロンドンを拠点とするシリア人映画監督のファディ・アル・ハラビ氏は現在ダマスカスを訪問中で、イスラエルの戦闘機が接近する音を近くで聞いたと語った。
アル・ハラビ氏はBBCに対し、「人々の顔には恐怖が浮かんでいた。誰もが通りに飛び出し、どこに逃げればいいのか分からなかった。突然、空爆が始まり、国防省を含む最も混雑した地域が標的となった」と述べた。
イスラエル軍は、ダマスカスにある大統領府の「周辺の軍事目標」に加え、スワイダへ向かっていた重機関銃や武器を搭載した装甲車、シリア南部にある発射拠点や武器貯蔵施設を攻撃したと発表した。
これに対しシリア外務省は、今回の空爆がダマスカスおよびスワイダにある政府機関や民間施設を標的とし、「複数の罪のない民間人」が殺されたと非難した。
また、「この露骨な攻撃は、イスラエルという存在が意図的に緊張をあおり、混乱を広げ、シリアの安全と安定を損なう政策の一環であり、国連憲章および国際人道法に対する明白な違反である」と付け加えた。
一方、イギリスに拠点を置く「シリア人権監視団(SOHR)」は、スワイダ市内の人道状況が急速に悪化していると報告した。
SOHRは複数の情報筋の話として、市内各地で衝突が続いており、戦車が国立病院を攻撃したことで、戦闘による負傷者が多数治療を受けていた病院内にパニックが広がったと伝えている。また、水や医療物資の深刻な不足も報告されている。
その後、シリア保健省は、政府軍が病院に突入した結果、「非合法武装集団が撤退した後」に「数十体の遺体」を発見したと、国営SANA通信を通じて発表した。
スワイダ市中心部にいたというホサム氏は、BBCに対し、民間人が砲撃や狙撃による攻撃を受けている様子を目撃したと語った。
ホサム氏は、「きょう、街中で隣人を失った。狙撃兵の一人が彼を撃った。救急車を呼んで病院に運ぼうとしたが、できなかった」と述べた。
SOHRによると、スワイダ県では13日以降、300人以上が死亡したという。このうちドゥルーズ派の戦闘員は69人、民間人は40人で、民間人のうち27人は内務省および国防省の部隊によって即座に殺害されたという。
また、政府軍の兵士165人以上とベドウィンの戦闘員18人も衝突の中で死亡したほか、イスラエルの空爆によって政府軍兵士10人が死亡したという。
BBCはSOHRの発表した死者数について、独自に確認できていない。

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スワイダ県で発生したベドウィンとドゥルーズ派民兵との戦闘は、今月11日にダマスカスへ向かう幹線道路上でドゥルーズ派の商人が誘拐されたことが発端とされている。
13日には、ドゥルーズ派の戦闘員がスワイダ市内のベドウィン住民が多く暮らす地区を包囲し、その後制圧したと報じられている。衝突はすぐにスワイダ県内の他地域にも拡大し、ベドウィンが周辺のドゥルーズ派の町や村を攻撃したとされている。
これを受けて、シリア内務省は、内務省および国防省の部隊が治安回復のために介入すると発表。「関係当局の不在の中で、この危険な事態の激化が起きている」と述べた。
イスラエルのネタニヤフ首相は先に、スワイダを含む南部3県の完全な非武装化を要求。また、アル・シャラア大統領が率いるスンニ派イスラム主義組織「ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS、「シャーム解放機構」の意味)を脅威と見なしていると述べた。HTSは、かつてアルカイダ系組織であり、現在も国連およびイギリスはテロ組織に指定しているが、アメリカはすでに指定を解除している。
イスラエル軍は、アサド政権の崩壊以降、シリア国内の軍事資産を破壊するために数百回にわたる空爆を実施してきた。
また、占領下にあるゴラン高原とシリアの間に設けられた国連監視下の非武装緩衝地帯に加え、隣接する複数の地域およびヘルモン山の山頂にも部隊を展開している。











