ガザの保健危機は「何世代にもわたって続く」 WHOトップがBBCに語る

画像提供, EPA
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は22日、パレスチナ・ガザ地区が「今後何世代にもわたって」続く保健上の「壊滅的状況」に直面していると警告した。
テドロス氏は、BBCのラジオ番組「トゥデイ」に出演。ガザの住民が抱える複雑なニーズに対応し始めるためには、支援の大幅な増加が必要だと述べた。
イスラエルは、10月10日にガザ地区のイスラム組織ハマスとの停戦が発効して以降、より多くの医療物資やその他の援助物資のガザへの搬入を認めている。しかしテドロス氏は、現時点での物資の量は、ガザの医療体制を再建するには不十分だと指摘した。
ガザでは先週末に暴力が再燃し、アメリカは自国が仲介した停戦合意の維持に努めている。
アメリカ政府はこの合意を、ガザへの援助物資の増加や、イスラエルとハマスの双方の「干渉なし」に物資を配布することを含む、20項目からなる和平計画の第1段階だと説明している。
テドロス氏は番組の中で停戦合意を歓迎すると述べたが、その後、支援の増加は予想よりも少なかったと語った。
現地の状況について問われたテドロス氏は、ガザの住民が飢饉(ききん)や「圧倒的な」負傷、崩壊した医療体制、水と衛生インフラの破壊によって引き起こされた感染症の流行を経験していると述べた。
「そのうえ、人道支援へのアクセスが制限されている。これは非常に致命的な組み合わせで、状況を壊滅的かつ言葉では言い表せないものにしている」
また、ガザの長期的な保健状況の見通しについて問われると、「飢饉に加えて、蔓延(まんえん)しているメンタルヘルス(こころの健康)の問題を合わせて考えると、この状況は今後、何世代にもわたる危機だ」と述べた。
国連のトム・フレッチャー事務次長(人道問題担当)は先に、援助団体が「飢餓危機の流れを変えつつある」と述べたが、「はるかに多くの支援」が必要だとも語っていた。
国連世界食糧計画(WFP)は21日、今月10日以降に計6700トン以上の食料を積んだトラックがガザに入ったが、1日あたり2000トンという目標には大きく届いていないと発表した。
テドロス氏は、イスラエル当局に援助と広範な紛争を「切り離す」よう求めている。同氏は、ガザには1日600台の援助トラックが到着する必要があるが、実際には平均200〜300台にとどまっていると述べた。
物資搬入に「条件を付けるべきではない」

画像提供, Reuters
イスラエルは19日、ハマスの武装勢力による攻撃でイスラエル兵2人が死亡したと発表した後、援助物資の搬入を一時停止した。ハマスは当時、衝突については把握していなかったと述べている。
イスラエル軍はその後、ガザ全域で一連の空爆を行い、数十人のパレスチナ人を殺害した。
国際社会からの強い圧力を受け、物資の搬入は翌日に再開された。
テドロス氏は、支援を「兵器化」すべきではないと述べ、イスラエルに対し、援助物資の搬入に条件を課さないよう求めた。条件には、ガザに残された人質の遺体の返還も含まれており、これは停戦期間中の主要な争点となっている。
ハマスは遺体の返還に応じる姿勢を示しているが、これまでに28体のうち15体しか引き渡しておらず、残りについては収容できていないと説明している。
ハマスは先週、生存しているイスラエル人の人質20人を解放した。これを受けてイスラエルは、刑務所に収容していたパレスチナ人の囚人およそ2000人を釈放した。
テドロス氏は「トゥデイ」に対し、「(物資への)完全なアクセスが確保されるべきであり、いかなる条件も課されるべきではない。特に、生存していた人質がすべて解放され、遺体の多くが引き渡された後に、追加の制限があるとは予想していなかった」と述べた。
アメリカが果たすべき役割について問われたテドロス氏は、「アメリカが和平合意を仲介した以上、すべての当事者が確実にそれを順守するようにする責任がある」と語った。
イスラエルは現在、南東部のケレム・シャローム検問所と中部のキスフィム検問所の2カ所を開いているが、支援団体からは、イスラエルが管理するすべての検問所の再開を求める声が上がり続けている。
テドロス氏は、「ガザに十分な支援を届けるには、利用できるすべての検問所が必要だ」と述べた。そして、イスラエルに対し、これまで登録を拒否されていた支援団体の再入域を認めるよう求めた上で、「現地で支援を届けられる団体なしに、支援体制の拡充は不可能だ」と語った。
医療体制の再建に危機感

画像提供, Reuters
テドロス氏はまた、ガザの医療体制の再建を目的とした物資が、イスラエル当局によって軍事転用の可能性があるとして、ガザとの境界で押収されていると述べた。
「仮設病院を建設するには、テント用の布地と支柱が必要だ。支柱が二重用途の可能性があるという理由で取り上げられれば、テントは設置できない」
テドロス氏によると、数千人のパレスチナ人が週1回の航空機による医療搬送を待っているが、イスラエルの宗教的祝日により、過去2週間は搬送便が運航されていないという。これまでに700人が医療搬送を待つ間に死亡しており、搬送便の拡大が求められていると、テドロス氏は明らかにした。
イスラエルは、2023年10月7日のハマス主導の攻撃に対する報復として、ガザで軍事作戦を開始した。この攻撃では、ハマス側が約1200人を殺害し、251人を人質として連れ去った。
ハマスが運営するガザの保健省によると、それ以降のイスラエルによる攻撃で、ガザでは少なくとも6万8229人が殺されている。
国連が支援する総合的食料安全保障レベル分類(IPC)は8月、ガザで飢饉が発生したと結論づけたが、イスラエルはこの調査結果に異議を唱え、「飢餓は存在しない」と主張している。
国連は以前、ガザの再建には700億ドル(約10兆6600億円)が必要だと試算している。テドロス氏は今回、そのうちの約10%が深刻に損傷した医療体制の再建に充てられるべきだと述べた。
そのうえで、「我々は長い間、平和こそが最良の薬だと言い続けてきた」と語った。
「現在の停戦は非常にもろく、合意後も数回破られたことで、命を落とした人がいる」
「非常に悲しいのは、多くの人々が和平合意を喜び、街頭で歓声を上げていたことだ。想像してほしい。戦争が終わったと告げられた後、その中の何人かが命を落としていることを」











