ジャニーズ事務所会見、藤島社長が辞任 ジャニー喜多川氏の性加害認める

Julie Fujishima (R) resigns in sex abuse scandal, names Japanese star Noriyuki Higashiyama (L) as new chief of J-pop talent agency

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画像説明, 記者会見で謝罪する藤島前社長と東山新社長(7日、都内)

日本ポップ界のスターを数多く生み出した故ジャニー喜多川氏が、創業したジャニーズ事務所の所属タレントに性加害を繰り返していたとされる問題で、同事務所が7日、記者会見を開いた。藤島ジュリー景子社長が辞任を発表し、喜多川氏による性加害を初めて認めて謝罪した。

この問題をめぐっては8月29日、事務所側が設置した外部の専門家による「再発防止特別チーム」が調査報告書を発表。喜多川氏が60年にわたるキャリアの中で「長期間」性加害を行っていたことが認められると指摘し、藤島氏の社長辞任や被害者への救済措置などを提言していた。

喜多川氏の姪(めい)にあたる藤島氏は記者会見で、「事務所としても、個人としても、性加害はあったと認識している。被害者の皆さんに心からおわび申し上げる」と述べた。

一方で、被害者の救済措置に取り組むため、今後も当面は代表取締役にとどまるとした。事務所の全株式も引き続き保持する考えを示した。

後任の社長には、同事務所の所属タレント、東山紀之氏(56)が就任する。東山氏も会見で喜多川氏の性加害を謝罪。経営に専念するために年内でタレント活動を引退すると述べた。

東山氏はジャニーズ事務所の初期にスカウトされたタレントの一人。喜多川氏による性加害については、「うわさとしては聞いていたが、私自身は被害を受けたことはない。受けている現場に立ち会ったことはなく、先輩たちからも後輩たちからも相談を受けることはなく、うわさには聞いていたが、自分から行動を起こすことはなかった。今後は反省を込めて対応していきたい」とした。さらに、「信頼を取り戻すのは大変なことだが、人生をかけて取り組んでいく」と述べた。

喜多川氏の名前を冠した社名の変更については、それを求める声があることは認識しているとしたが、すぐに変えることはないと、東山氏は述べた。

記者会見で、藤島氏らは事務所の構造改革についも触れた。同事務所が今後、変化を実施していくと広く見られているが、その変化がどのようなものか、所属タレントがどのように管理され、保護されるのかは分からない状態となっている。

長年にわたり華やかな名声の代名詞だったジャニーズ事務所の、ブランドとしての将来についても、多大な疑問が複数指摘されている。

当事者の会の反応

一部の日本メディアは、この会見の中継を見る「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の様子を伝えた。複数の被害者が、険しい表情を浮かべてジャニーズ事務所の会見映像を見ていた。

Johnny"s Sexual Assault Victims Association representative Junya Hiramoto (R) speaks during a press conference at the Japan National Press Club in Tokyo, Japan, 07 September 2023.

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画像説明, ジャニーズ事務所の会見後、別の会場で記者会見する「ジャニーズ性加害問題当事者の会」(7日、都内)

藤島氏の会見後、当事者の会は別の会場で記者会見を開いた。代表を務める平本淳也氏は、藤島氏が登壇したことを評価。「ほとんど下を見ずに、自身の言葉で発言していた救済のメッセージは、私たちにストレートに伝わった」と述べた。

会員の大島幸広氏は、「事務所側から認めてもらって心からの謝罪をしてもらいたいと言ってきたが、今日の会見では認めて心からの謝罪をしてもらったと思う。傷が消えるわけではないが、100のうち10くらいは楽になったと思う」と語った。

中村一也氏は、被害者であることは恥じることではないと語った。

「当初、自分は泣き寝入り状態だったが、行動すれば、見えなかった景色が見える。下を向いて歩くよりは、前を向いて勇気ある行動をしてほしいと思う」

ワインスティーン事件と同等の規模と影響

喜多川氏の問題は、その規模と業界への影響において、レイプや性的暴行で有罪判決を受けたハリウッドの元大物映画プロデューサー、ハーヴィー・ワインスティーン受刑者のスキャンダルに匹敵する。

喜多川氏は、日本のエンターテインメント業界で最も影響力のある一人だった。多くの少年がスターを目指して事務所に入った。

BBCが今年3月に放送したドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」は、喜多川氏の性的要求に応えなければデビューできないと恐れる被害者たちの心境を伝えた。ドキュメンタリーでは「合宿所」と呼ばれた喜多川氏の複数の自宅で、デビュー前のジャニーズ Jr.たちが、多くの場合ほかの少年がいるなかで、性的暴行を受ける様子や、性的搾取がパターン化して横行した様子が、繰り返し語られる。

生前から喜多川氏による性的搾取の疑惑がうわさされ、1999年には週刊文春による連続報道もあったが、事務所は改善策を取らず、逆に名誉毀損で週刊文春を訴えた。この民事裁判の第二審で東京高裁は2003年、文春の報道について、「セクハラ行為」に関する記事はその重要な部分において真実であることの証明があったと認めた(2004年に最高裁で確定)。しかし、喜多川氏の行動が、刑事事件として立件されることはなかった。

日本の大半の主要メディアは、事務所と文春の裁判についてもほとんど伝えず、一連の疑惑にも長年触れてこなかった。このため、日本のマスコミ全体が隠ぺいに加担したとの批判も出ている。

喜多川氏は2019年に87歳で死去するまで、少年のスカウトとレッスンを続けた。その葬儀は国家的な行事で、当時の安倍晋三首相からも弔電が届いた。

Kitagawa

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今年3月にBBCが喜多川氏の性加害について報道すると、それをきっかけに、カウアン・オカモト氏をはじめ複数の男性が虐待を受けたと名乗り出た。続いて、ジャニーズ所属タレントを応援する複数のファンが、第三者による全面的な検証・調査などを求める署名に1万6125筆を集め、事務所に提出したと発表した。

こうしたなかでジャニーズ事務所は5月、謝罪動画と関連の文書を自社サイトに掲載した。

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座長の林眞琴前検事総長、精神科医の飛鳥井望医師、臨床心理士の齋藤梓博士からなる再発防止特別チームは、藤島氏以外にも、被害を訴えた23人を含む計41人に聞き取りを行った。

その結果、「古くは1950年代に性加害を行って以降、ジャニーズ事務所においては、1970年代前半から2010年代半ばまでの間、多数のジャニーズ Jr.に対し(中略)性加害を長期間にわたり繰り返していた」ことが認められたという。

8月末に発表された報告書では、同族経営が「ジャニーズ事務所におけるガバナンス不全の最大の原因の一つ」だと指摘。藤島氏の社長辞任を提言した。

藤島氏は当初、こうした第三者調査にも反対していた。5月の謝罪動画では被害者に謝罪したものの、性加害の事実を認めるには至らず、被害も認識していなかったと述べていた。

しかし報告書では、取締役に就任したころには疑惑を認識していたと認められるとし、「性加害の事実について積極的な調査をするなどの対応はとらなかった」とした。

国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会も8月上旬、喜多川氏が数百人の少年を虐待していたとの調査報告を発表。日本のエンターテインメント界には性的捕食者が処罰されることなく行動できる労働環境があると指摘した。