ハリケーン、温暖化の影響で上陸後も勢力維持 被害増大も
マット・マグラス環境担当編集委員

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北大西洋で発生するハリケーンが、地球温暖化の影響で、上陸後もかつてよりはるかに強い勢力を維持していると、科学者たちが指摘している。この研究内容は学術誌「ネイチャー」に11日に掲載された。
専門家たちはこれまで、ハリケーンの勢力は上陸するとすぐに弱まると考えていた。
しかし過去50年で、ハリケーンが沿岸部で消滅するまでにかかる時間が約2倍になった。
研究者たちは気候変動がハリケーンにより多くのエネルギーを与えており、上陸後の勢力の維持につながっているとしている。
この研究に関わった科学者たちは、今後数年間で、ハリケーンがさらに内陸部で、より大きなダメージを与える可能性が高いと指摘している。
北大西洋では9日に今年29個目となるハリケーン「シータ」が発生。2005年の28個を上回り、過去最多となった。
近年、これまでよりはるかに長く勢力を維持し、より多くの被害を及ぼす熱帯低気圧が上陸していると指摘している。
2017年には全米第4の都市、テキサス州ヒューストン上空にハリケーン「ハーヴィー」が数日間にわたって停滞し、1270ミリの降水量をもたらした。ハリケーンの観測史上最大の降水量だった。
研究者たちは、こうしたハリケーンが乾燥した陸地を移動する際に急速に減衰するのを、気候変動が妨げていると示唆している。

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ハリケーンは熱帯の暖かい海からの水分をエネルギー源とし、強風を引き起こす。
気候変動によって海上の空気中の水分量が増えることで、海上でのハリケーンの勢力が増大する。
しかしいったん上陸してしまえば海からの水分を巻き上げられなくなり、ハリケーンは急速に減衰あるいは消滅するはずだ。
ところが今回の研究で、もはやそうではないことが示された。
「より温暖な気候では、ハリケーンの減衰速度が遅くなることが示されている」と、今回の研究を主導した、沖縄科学技術大学院大学のピナキ・チャクラボルティ教授は述べた。
「北大西洋で発生して上陸するハリケーンの場合、減衰するまでの時間が過去50年でほぼ2倍になっている」
「我々の分析で、この根本的な原因が気候変動にあることが示されている」

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科学者たちは1960年代後半、ハリケーンが通常、上陸から1日で勢力の75%を失っていたことを突き止めた。
しかし今日では、その減衰率は50%程度にすぎない。
ハリケーンが勢力を維持する鍵は、進路上に暖かく湿った空気があることだと、研究者たちは考えている。
つまり、乾燥した陸の上空でも、暖かく湿った空気がハリケーンの活動を維持する補助燃料タンクのような役割を果たしているのだ。世界の温暖化が進むにつれ、熱帯低気圧はより長い時間活動を続け、内陸部により多くの被害をもたらす可能性が高くなる。
「ハリケーンが上陸前、海上を通過する際により多くの水分を蓄えることによって減衰速度が遅くなっていることも、我々のシミュレーションを使った研究で明らかになっている」と、チャクラボルティ教授は述べた。
「残念なことに、温暖化が続けばハリケーンの減衰速度も遅くなり続けること。そしてその結果、さらに内陸部がこれまで以上に激しい暴風雨に見舞われることになることも、我々の研究で分かっている」










