NASAの探査機「インサイト」、火星着陸に成功 内部構造を調査へ
ジョナサン・エイモス BBC科学担当編集委員(パサディナ)

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米航空宇宙局(NASA)の新型探査機「インサイト」が日本時間27日午前4時50分すぎ、火星に着陸した。インサイトは、火星の大気圏突入後、急減速や姿勢制御などを7分間で完了させる劇的な準備作業を成功させた。
着陸は日本時間27日午前4時53分ちょうどに確認された。米カリフォルニア州にあるNASAのジェット推進研究所では、研究員らが着陸の進捗(しんちょく)を知らせる通信を不安な面持ちで見守っていたが、インサイトが地表に無事降下したことが明らかになると歓声が上がった。
NASAのジェイムズ・ブライデンスタイン長官は、「素晴らしい日だ」と着陸を称賛した。ドナルド・トランプ大統領からも祝福の電話をもらったと、報道陣に語った。ジェット推進研究所のマイク・ワトキンス所長は、着陸成功によって「科学を行うには、勇気を持ち、探検者でいなくてはならないことを」誰もが思い出すはずだと述べた。
インサイトの任務は、火星の内部構造の調査。内部構造の詳細な調査は、成功すれば地球以外の惑星で初となる。


インサイトは現在、火星の赤道に近い広大な平原「エリシウム平原」にいる。NASAは着陸前、エリシウム平原を「火星最大の駐車場」と名づけていた。
到着から数分後、インサイトはエリシウム平原の風景を撮影した最初の画像を地球に速やかに送信した。魚眼レンズ撮影のようにも見える画像は、不鮮明ながら探査機周辺の風景を写していた。
画像は探査機の下部に取り付けられたレンズキャップ付きカメラで撮影された。大気圏降下中に付着したごみが画像の大半を覆っているものの、小さな岩、探査機の脚1本、地平線上の空が確認できる。
インサイトはより良い画質の画像を、数日中に撮影する予定。
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着陸の瞬間
NASAの探査機としては2012年以来となるインサイトの火星表面への接近は、過去の火星着陸と同様に、緊張に満ちた作業だった。
段階ごと、数メートルごとに、探査機は進捗を報告した。
インサイトは高速の弾丸より速く大気圏に突入し、軟着陸を果たすため、断熱シールド、パラシュート、逆推進ロケットエンジンを組み合わせて使った。
厳しい環境の火星表面でインサイトが今後の活動を続けるために鍵となるのが、ソーラーパネルの展開だ。パネルは突入に向けて格納されていた。
零度以下が続く火星の環境下で探査機が内部装置を作動させ、暖め続けるためには、発電開始が絶対に欠かせない。
これらの懸念が解決されて初めて、NASAはインサイトの科学的任務について考え始められる。
インサイト計画ではすでに、探査機と共に火星に送られた、書類かばん大の小型衛星2機が大きな役割を果たしたことが、大成果となっている。
マルコAとマルコBと呼ばれる小型宇宙船2機は、インサイトが発信した信号を、探査機の火星表面到着まで中継した。この衛星2機は費用が2000万ドル(約22億7000万円)未満で、その技術は将来の惑星間計画で確実に大きな役割を果たすことになる。
小型衛星2機は自分たちの能力を強調するかのように、火星の写真を撮影した。
マルコ開発の主任エンジニア、アンディ・クレシュ氏は、「マルコは、インサイトによる大気圏突入、降下、着陸(EDL)過程の間、全てのデータを送り返すことに成功した。火星から約7600キロ離れた場所から撮影した画像を、EDL過程の約10分から15分後に」と説明した。

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インサイトの任務はこれまでと何が違うのか
今回の任務は、火星の内部構造を把握する調査としては初めてのものになる。核から地殻まで、火星の成り立ちを知りたいと研究者たちは期待している。目標達成のため、インサイトは3つの重要な実験を行う。
1つ目の実験では、フランスと英国が共同開発した地震計を用いる。この地震計は「火震」の様子を調べるため、火星表面に下ろされる。計測された振動は、地層がどこにあるのか、そしてその地層は何で出来ているのかを明らかにする。
ドイツが主導する「モグラ」装置による実験は、火星の地温を測るため、地面に最長5メートルの穴を掘る。この実験は、火星が今もどれだけ活発に活動しているのかを知る手がかりをもたらす。
3つ目の実験では、無線通信を使い、火星の地軸の揺らぎを極めて正確に測定する。
計画の副主任科学者スザンヌ・スムレカー氏は、比喩を用いて実験を説明する。「生卵と調理された卵を回転させると、異なる揺れ方をする。内部における液体の割合が違うからだ。現在、火星の核が液体なのか固体なのか、核がどれぐらいの大きさなのかを、我々はよく知らない。インサイトが情報を与えてくれるだろう」。
調査の意義
地球の内部構造については、科学者の間ではすでによく知られている。また、45億年以上前の太陽系誕生時に、地球の構造がどう生まれたのかをうまく説明するモデルもいくつかある。しかし地球は1つのデータ点に過ぎない。岩石惑星が作られ、時の経過につれて発達してきたのかのありうる過程について、火星は研究者に異なる視点を与えてくれるだろう。
インサイト計画の主任科学者ブルース・バネルト氏は、「休暇で出かけて日焼けできる地球のような場所と、数秒のうちに焼死してしまう金星のような場所、あるいは凍死してしまう火星のような場所がなぜ違うのか。それは、惑星の発達過程における細かな違いが作り出す差異だと我々は考えている」と述べた。









