火星で初めて液体の水を確認、地下に「湖」か

メアリー・ホルトン科学記者、BBCニュース

動画説明, 火星に生命はいる? 鍵となる4つの出来事

欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」が、火星に液体の水が存在している証拠を見つけた。米科学誌「サイエンス」で25日発表された

火星の極冠の下に、幅20キロの湖があるとみられている。

これまでの調査では、火星の地表に断続的に液体の水が流れていたとみられる痕跡が見つかっていたが、現在の火星に水の存在を示す証拠が見つかったのは今回が初めて。

米航空宇宙局(NASA)の火星探査車「キュリオシティー」が探索した湖底の跡から、過去の火星表面に水があったことがうかがえていた。

しかし、薄い大気の影響で火星の地表温度は下がり、大半の水分は氷になった。

科学者たちはかねてより、火星上に液体の水がないか調べてきたが、決定的な証拠は得られていなかった。それだけに、今回の発見はきわめて興味深いものとなっている。

地球外生命の可能性を探る人にとっても興味深い発見だが、まだ生物が存在する可能性が高まったと言える段階ではない。

湖の存在は、火星軌道上を周回している欧州宇宙機関 (ESA)の「マーズ・エクスプレス」に搭載されたレーダー装置、「マーシス」によって明らかになった。

A white layer of ice in a swirl shape, on the dusty landscape of Mars

画像提供, NASA/JPL/Malin Space Science Systems

画像説明, 火星の湖は南極付近の氷の下にあるとみられている

研究を主導するイタリア国立宇宙物理学研究所のロベルト・オロゼイ教授は、「それほど大きな湖ではないかもしれない」と話した。

マーシスは水の層の厚さを推定することはできなかったが、研究チームは最低1メートルの深さがあるとみている。

「深さがそれだけあるからこそ、まとまった水だと言うことができる。地球の氷河で見られるような、岩と氷の間に貯まった溶けた水ではなく、湖がある」

Illustration of Mars Express probing the surface of Mars. Superimposed above are the radar findings, showing the thin layers of the South Polar Layered Deposit, with one small area in bright blue

画像提供, ESA/INAF

画像説明, 火星の表面を探査するマーズ・エクスプレスと、マーシスによるレーダー解析を重ね合わせたイメージ図

今回の発見は?

マーシスのようなレーダー装置は、送った信号の反射から火星の地表やすぐ下の地中を調査している。

レーダー上部の長く続く白い線は南極層状堆積物(SPLD)と呼ばれるもので、氷と土がパイ生地状になっている。

調査チームはこのSPLDの下、氷から1.5キロほど地下に珍しいものを見つけた。

「地表の反射よりも強い、明るい青色の反射が確認できる。これが我々にとっては水の存在を示す何よりの証拠だ」とオロゼイ教授は説明した。

The white ice cap of the South Polar Layered Deposit with radar data superimposed. Each band changes colour according to the intensity of the signal - a clear area of blue is visible.

画像提供, USGS Astrogeology Science Center, Arizona State Un

画像説明, マーシスのデータと観測地を重ねたイメージ図。濃い青色の部分に水があると考えられている

火星に生命がある可能性は?

今のところ、はっきりしていることは何もない。

英オープン大学のマニッシュ・パテル博士は「火星表面は我々の知る限りの生命の生存に適していないことが、以前から分かっている。そのため、火星の生命探査は地中に向かっている」と話した。

「地中なら有害な宇宙線からも十分に守られ、重力や温度も生命に適した水準に向上する。何よりも重要なのは、生命に不可欠な液体の水が存在できることだ」

地球外生命体の可能性を研究する宇宙生物学にとって、水の存在は鍵となる。

ただし、水がある可能性が示されたとはいえ、水があるからと言ってそれ以上の何が確認されたわけでもない。

パテル博士はBBCニュースに対し、「実際に生命の存在を突き止めたとは言えないが、今回の発見で、火星のどこを探査したらいいかが分かった。まるで宝の地図だが、宝の位置を差すXマークはほかにもたくさんあるはずだ」と述べた。

A green lake with salt residues around the edges

画像提供, Science Photo Library

画像説明, 宇宙生物学者は地球の塩湖などの厳しい環境を調査し、火星でどのように生命が生き延びているかを理解しようとしている

水温や含有物も、火星に存在するかもしれない生命にとっては大きな問題となる。

研究チームは、水が上層の氷と触れる部分の温度は零下10度~零下30度だと予測している。このような寒い状況で液体の状態を保てる場合、水には大量の塩分が含まれている可能性が高い。

英セントアンドリュース大学の宇宙生物学者、クレア・カズンズ博士は、「この水が非常に冷たくて濃い塩水だという可能性は高い。その場合、生命にとってはかなり過酷な環境だ」と説明する。

次の段階は?

今回の発見は、火星に生命がいる、あるいはいた可能性に興味のある人にとって、実に魅惑的なものだ。しかしまずは、湖の特徴を今後の調査で確定する必要がある。

オープン大学のマット・バルム博士は、「この先は、似たような信号を探すために測量を繰り返すし、そしてできれば、この信号が何を意味するのか、他の可能性を全て精査し、その上でできれば(水以外の可能性を)排除する必要がある」と話した。

「それができれば、この湖に向かって火星表面を掘削するという野心的な新ミッションにつながるかもしれない。ちょうど地球の南極で氷河の下にある湖を見つけた時のように」

Satellite image of a flat region of ice, surrounded by more textured terrain

画像提供, Science Photo Library

画像説明, 火星で発見された地中の湖は、南極の氷底湖ボストーク湖と比較される。ボストーク湖は南極の地中4キロのところに存在する

南極の氷底湖ボストーク湖では、ロシアの科学者がバクテリアの存在が確認できたと発表している。しかし、火星での掘削探査は確かに野心的なプロジェクトとなるかもしれない。

「火星に到達し、これが確かに湖だという決定的な証拠を手に入れるのは簡単な仕事ではない」とオロゼイ教授は話す。

「厚さ1.5キロの氷を掘削できるロボットを飛ばす必要がある。その技術は今はないので、そのための技術開発が必要になる」