暗黒物質がない銀河、発見の可能性=米加共同研究
メアリー・ホルトン BBCニュース科学担当記者

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天の川と同サイズの珍しい透明な銀河が、天体物理学者たちを新たな論点へと駆り立てている。
その対象、「NGC1052-DF2」という覚えやすい名前の銀河は、暗黒物質を有していないように見える。
もしこれが事実であれば、初めて発見された通常物質だけで構成された銀河となる。暗黒物質は今のところ、我々が宇宙だと理解しているものの構造に不可欠だと考えられている。
研究のレター論文は28日、科学誌ネイチャーのウェブサイトで公開された。

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幽霊のような光
論文の著者たちは当初、暗黒物質がない銀河を探そうとは考えておらず、暗く大きな銀河により近づいた画像を撮影しようとしていた。
撮影しようとしていた銀河は、我々が良く知っている渦巻き運河と大きさは近いが、星の数が少ないものだ。
研究論文の筆頭著者であるピエテル・ファン・ドックム教授は、NGC1052-DF2をはじめて発見した時の様子をこう語る。「画像を凝視して、ただただ驚嘆した。空に差した幽霊のような光だった」。
この銀河には星がとてもわずかしかないが、その多くは珍しい光り方をする星団になっている。研究チームがこの星団の挙動を調べたところ、この星団が銀河の全質量を占めているように見えることを発見した。
暗黒物質が存在できる空間は残されていなかった。

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これはほとんどの銀河にはない状態だ。
「1つの銀河には通常物質の約5倍の暗黒物質がある」と英サリー大学の物理学者、ミシェル・コリンズ博士は語る。博士は今回の研究には参加していない。
「銀河の外側へ向かうと、星は少なくなり暗黒物質が多くなる。暗黒物質の輪は銀河内の星よりもかなり広範囲に広がっている」と博士は付け加えた。
片方だけでは存在できない
暗黒物質は一般の物質より大きな質量を持つだけでなく、銀河の形成に必要なガスも含んでいると考えられている。
「そのため、この銀河は通常とは別の方法で形成されたと考えられる。別の大きな銀河に流れ込んでいく、あるいはそこから吹き出してくるガスとの相互作用で形成されたのかもしれない」と米ノースカロライナ州立大学の天体物理学者キャサリン・マック博士は語った。

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「これは銀河に限った話ではない」とファン・ドックム博士は説明する。「実際、宇宙の基本構造が暗黒物質の足場となり、その上に他の全てが貼り付けられている」。
一方、マック博士がこの銀河の性質でもっとも刺激されるのは、現在までに広く理論化はされていたものの、直接観測されたことはなかった暗黒物質を、現実に調べられる可能性を持っている点だ。
もし暗黒物質が、通常物質が持つ重力のまだ説明されていない作用にすぎないのであれば、その作用はこの銀河で見えるはずだ。「実在しているかどうかは別にして、暗黒物質が通常物質とは別の実体ある物質でなければつじつまが合わない」とマック博士は付け加えた。
研究チームが近く、この明るい星団により近づいた画像が含まれる研究論文を発表する。NGC1052-DF2が持つ秘密をさらに解明するかもしれない。
暗黒物質
しかし、暗黒物質理論の根本的な変更が必要になるには、この銀河や類似物質についてさらなる研究が待たれる。

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「新しいことについて初めて発表するときには、常に注意深くいなければならない」とファン・ドッカム博士は語る。「もちろん、この銀河は確かに、バリオン(通常物質)の銀河に一番近い候補ではあるが」。
コリンズ博士は、現在示されている証拠を基に、この銀河が暗黒物質の輪を持たないと結論付けることに慎重だ。
コリンズ博士は、今回の銀河のような普通でない、未解明の特徴を持つ銀河が他にも存在する可能性はあるものの、それを適切に観測するには技術の進歩が必要だと語る。
「私たちは、NGC1052-DF2とある程度似た特質を持つ銀河を近くに見つけているが、それらはNGC1052-DF2よりずっとおぼろげで、ずっと小さい」とコリンズ博士はBBCニュースに語った。
ダラム大学の物理学者、リチャード・マッセイ博士も同意する。「この研究には純粋に非常な感銘を受けたし、この結果をもって、より賢明に、より長い期間、このような銀河を観察すべきだ言うだろう。しかし、ここから暗黒物質について確固とした結論を出すには至らない」





