アイルランドで妊娠中絶禁止めぐる住民投票、5月実施へ

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アイルランド政府は29日、人工妊娠中絶を事実上禁止する現行憲法について、住民投票を5月末に実施することで合意した。
住民投票では、中絶を事実上禁止した1983年の憲法修正条項を廃止するかどうかが問われる。
アイルランドでは現在、女性の生命が危険な場合のみ中絶が認められているが、強姦や近親相姦、胎児異常の場合は認められていない。
リオ・バラッカー首相は、自分は憲法改正のために運動すると明らかにした。
住民投票ではいわゆる「憲法修正第8条」と呼ばれる憲法第40条3項3を維持するか、廃止するかが問われる。
1983年の住民投票で成立した修正第8条は、「まだ生まれていない者の生存権を認め」ている。これによって、女性と胎児の生存権は同等だとみなされる。

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5月の住民投票に先駆けて、保健相が新法案を作成する。法案では、妊娠12週間までの中絶は無制限に認め、特別な場合に限っては12週間以後も可能とする。
アイルランド議会が審議した後、具体的な投票日を決める。
「白黒はっきりしていない」
女性の中絶権を求める人たちは、長年にわたり法改正を求めてきた。昨年には、議会の超党派委員会と市民集会の双方が、修正第8条の撤廃を推奨した。
バラッカー首相は、「これはアイルランド人にとって、難しい決断になると分かっている」と述べた。
「これは非常に個人的かつプライベートな問題で、ほとんどの人にとっては白黒がはっきりしている話ではない。妊婦の権利と、胎児ないしは生まれていない者の権利の間で、どうバランスをとるかという、グレーな問題だ」
かつて保健相も務めたバラッカー首相は、アイルランドでは毎年、数千人の女性が中絶のために外国へ渡ったり、インターネットで注文したピルを自宅で飲んでいることを認めた。
バラッカー首相は、「ここ数週間で多くの人、主に男性が、自分たちが体験した個人的な道のりについて語った。しかし、何より悲しく孤独な旅をするのは、何千人というアイルランドの女性たちだ。妊娠を終えるために外国へ行く、女性たちの悲しみと孤独を忘れてはならない。そんな旅はしなくてもいいはずだ」とツイートした。
首相はさらに、現在アイルランドで受けられるで中絶は「安全でないし、きちんと規制もされていないし、違法だ」と指摘。「こんなことは起こらなくてもいいし、変えられる。変える力は、私たちの手にある」と強調した。
英保健省の統計によると、2016年にイングランドやウェールズの施設で中絶手術を受けた女性のうち、3265人がアイルランド在住だった。
アイルランド女性協議会(NWCI)は29日の発表を歓迎した。
オーラ・オコナー会長は「妊娠はどれも事情が違うし、妊娠に関する決定はどれも非常に個人的なものだ。アイルランドの女性や女の子たちは、尊厳を認められる権利がある。プライバシーや家族、そして家庭を守られる権利がある」と表明した。


アイルランドにおける人工中絶
現在アイルランドではほぼ全面的に、人工中絶は禁止されている。
強姦や近親相姦、あるいは胎児に異常がある場合でも、中絶は認められていない。そのため、毎年数千人の女性が中絶のために外国に渡っている。
1983年の住民投票で成立した憲法修正第8条は、「まだ生まれていない者の生存権を認め」、胎児と女性の権利を同等に位置づけた。しかし近年では、この条項への批判が強く、母体を守るための法改正が導入されてきた。
中絶容認を求める動きは2012年に加速した。インド人のサビタ・ハラパナバールさんがゴールウェイ大学病院で流産しかかっていたところ、中絶手術を拒否され死亡したことがきっかけとなった。

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その翌年、合併症で女性の命に危険が迫っていたり、女性が自殺する可能性が高いと医師が判断した場合、中絶が認められる法改正が成立した。
ハラパナバールさんが死亡した20年前の1992年には、強姦被害を受けた14歳の少女が中絶手術を受けるためにイングランドへ渡航しようとしたところ、渡航を阻止された。
少女の匿名を守るため「事件X」と呼ばれたこの裁判は、アイルランドの最高裁が渡航禁止命令を覆して終わった。
その後の国民投票で、修正第8条は外国への渡航を禁止するものではないという、追加修正が認められた。






