米マウイ島、火災後も観光客が多数滞在 反感高まるも経済は依存

Chairs at Wailea Beach

画像提供, Holly Honderich/BBC

画像説明, 米マウイ島ワイレア・ビーチ

大規模な森林火災で多数の死者・行方不明者が出ている米ハワイ州マウイ島で、当局の呼びかけに背くかのように、多数の観光客が滞在を続けたり、新たに訪問したりしている。島民からは怒りの声が上がっているが、複雑な事情もある。

高級ホテルが立ち並ぶマウイ島のワイレア・ビーチ。火災の被害がなかったこの場所では14日、宿泊客が晴れ渡った空の下で泳いだり、パラソルの下で白いタオルをかけた椅子に体を預けてくつろいだりしていた。

島内で森林火災が発生したのは、この6日前だった。炎は山から海岸部に広がり、ワイレア・ビーチの北48キロメートルにある町ラハイナを焼き尽くした。

マウイ郡当局は翌7日、観光客に対し、ラハイナおよび島全体からできるだけ早く離れるよう要請。ハワイ州観光局も、今後数週間は住民とコミュニティーの復興が最優先されると説明した。必要不可欠な場合を除き、島への渡航は控えるよう呼びかけられた。

多くの旅行者がこれに従った。火災直後に約4万6000人が島を出た。

しかし、逆の行動に出た人も数千人に上った。当局の要請を無視して島に残った人もいれば、火災後に飛行機でやってきた人もいた。

<関連記事>

Presentational white space

現地住民の中には怒りを覚えている人もいる。

「自分の故郷でこれが起きたら、それでも私たちに来てほしいと思うのか?」。チャック・エノモトさんは、そう問う。「私たちはまず、自分たちの面倒をみなくてはならない」。

別の住民は、「3日前に私たちの仲間が死んだのと同じ海」で観光客が泳いでいたと、BBCに話した。ラハイナから約18キロメートル離れた海では11日、シュノーケリングのツアーが実施されていたため、この住民はそのことに言及したとみられる。シュノーケリングの会社はその後、謝罪した。

動画説明, 「私たちの仲間が死んだばかりの海で観光客が泳いでいる」 マウイ火災
Presentational white space

経済依存の現実

だが、観光客にノーを突き付けるのは単純なことではない。マウイ島の経済は観光に依存している。マウイ経済開発委員会は、島で生み出されるお金の約5分の4は「観光業」によるものだとし、観光客を「経済のエンジン」と呼んでいる。

「ここではある意味、観光客を嫌いになるように育つ」と若いホテル従業員は話す。「でも、島で働くならそれしかない。観光か、さもなければ建設だ」。

Daniel Kalahiki in his food truck
画像説明, ダニエル・カラヒキさんは、ラハイナの危機を拡大させないために観光客は「必要だ」と話す
Presentational white space

経営者の一部は、観光客への反感が高まることで、マウイ島がさらに傷つく恐れがあると懸念する。

「心配なのは、『マウイは閉鎖された』とか『マウイに来るな』といった発信が続けば、わずかに残ったビジネスまでなくなってしまうことだ」。同島ワイルクでキッチンカーを保有するダニエル・カラヒキさんは、そう話す。火災以来、売上は半減しているという。

同島ワイレアにはゴルフコースが広がり、高級ホテルとつながっている。これらのホテルでは、愛想のいいスタッフたちがサーフィンを教え、プールサイドで食事を提供している。ハンバーガーは29ドル(約4200円)する。

The view at Wailea Beach

画像提供, Holly Honderich/BBC

画像説明, ワイレア・ビーチはリッチな観光客に人気が高い

スタッフによれば、宿泊客の多くは島西部の危機に同情的だという。フォーシーズンズで働くブリタニー・パウンダーさん(34)は、ラハイナで予定していた乗馬やジップライン(長いワイヤーを滑車で滑り降りる遊び)がキャンセルになったと、不満を漏らす客もいたと話した。

パウンダーさんによると、火災が発生した次の日、米カリフォルニアからの宿泊客に、ラハイナのレストランの予約はまだ大丈夫かと聞かれたという。パウンダーさんは、「大丈夫ではありません」と答えたという。

ラハイナでは、不動産業者が土地所有者に近づき、購入を持ちかけているとのうわさが広まっている。

現地住民の中には、ラハイナが、海沿いに高層の建物と高級ブランド店が並ぶホノルルのワイキキになってしまうと心配する人もいる。

前出のエノモトさんは、「新たなワイキキはいらない」と言った。「だが避けられない」。