【解説】 プーチン氏への圧力高まる、ワグネルの騒動でロシアはさらに不安定に
スティーヴ・ローゼンバーグ、ロシア編集長(モスクワ)

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大混乱の週末の後、私はやっと、なぜロシアの国章が双頭の鷲なのか、なぜ2つの頭が反対方向を向いているのかを理解し始めた。
雇い兵組織「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏はまず、ロシア軍に対する反乱を「とことんやる」準備ができていると宣言した。しかし突然Uターンし、部隊に野営地に戻るよう指示した。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はテレビ演説の中で、この反逆を「犯罪行為、重罪、裏切り、武装蜂起、恐喝あるいはテロ行為」と呼んだ。しかし数時間後には、プリゴジン氏との合意の中で、プリゴジン氏とワグネルへの刑事訴追は中止されたことが明らかになった。
「重罪」はどこかへ行ってしまった。
プーチン氏の態度の錯綜(さくそう)に多くの人が驚き、多くの人がプーチン氏への見方をあらため始めている。
ロシア紙ニェザヴィーシマヤ・ガゼータの社主兼主幹のコンスタンティン・レムチュコフ氏は、「プーチン氏は確実に、前より弱く見えている」と話した。
「誰それは犯罪者だと宣言したその日のうちに、その日の夜に、自分の報道官に反対のことを言わせるなど、『いやいや、その誰それは刑法に違反してない』と言わせるなど、あり得ない」

ロシアのアンドレイ・ネチェフ元経済開発担当相も同じ意見だ。
ネチェフ氏はソーシャルメディアへの投稿で、「もはや法律は無力だ。たとえどんな重罪でも、政治的配慮から裁かれなくなった。その日の朝に裏切り者と言われても、夜には許され、不起訴になる」と書いた。
「ロシアは明らかに、大きな変化の瀬戸際にある」
大きな変化? それは大胆な予測だ。しかし、もし変化が訪れるなら、今回のワグネルの反乱がきっかけになるのだろうか? 取引は成立し、反乱は中止されたかもしれない。しかし、ロシア軍の総司令官でもあるプーチン氏にとって、自分の政権下で反乱が起きたという事実は恥ずかしいものだ。
プーチン氏の現在の大統領任期が来年で終わることも、忘れてはいけない。
「あらゆるエリート層が2024年大統領選について考え始めている」と、レムチュコフ氏は予測する。「この軍事クーデターが起きるまでウラジーミル・プーチンを頼りにしてきたが、今後もそうするべきなのか、自問自答するだろう」。
「あるいは、もっと現代的な方法で問題に対処できる新しい人を考えるべきなのか、と」
大統領にだれか「新しい人を」など、ロシアのエリート層が日ごろからおおっぴらに話題にする内容では決してない。だからといって、クレムリン(大統領府)の主が近々交代するというわけでもない。プーチン氏が23年間、権力を維持した末に完成させたものがあるとするなら、それは政治的生き残りの技術だ。
だが、ウクライナを全面侵攻するというプーチン氏の昨年の決定を機に、彼の国内はさまざまな形で不安定になった。経済的問題から領内へのドローン攻撃。ウクライナ国境地域での砲撃から破壊工作員による国境侵犯。そして今回の、ワグネルによる軍事反乱だ。
こうした出来事のすべてが、ロシア大統領への圧力を高めている。
だが、プーチン氏が自らの過ちを認めると期待してはいけない。間違いや誤算を認めるのは、彼のやり方ではない。
では、プーチン氏の次の一手は何なのだろう? そのヒントは、ロシア国営テレビの日曜夜の看板ニュース番組にあった。ワグネル蜂起の報道で、同番組の司会者は、プーチンの過去のインタビューの抜粋を放送した。
「あなたは許せる人物ですか?」
「ええ、でも全てではない」
「許せないことは?」
「裏切りです」
プリゴジン氏は、この放送を見ていただろうか。










