逃げるかとどまるか、ハルツーム住民の苦渋の決断 スーダン

オリヴァー・スロウ、BBCニュース

Women walk along the street in south Khartoum

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画像説明, ハルツーム市内の状況を「ゴーストタウンのようだ」と話す住民もいる

スーダンの首都ハルツームで1週間以上、戦闘が続いたのを受け、ダリア・モハメド・アブデルモニエムさんとその家族は「身がよじれそうな思いで」市内の自宅を離れることを決めた。

一家は当初、4月19日に逃げる予定だったが、自宅近くで起きた戦闘で所有車が破壊された。その翌日、助けに来た親族の手を借りて、一家はハルツーム郊外に移動した。

その後も一家は決断を迫られた。エジプト国境まで1000キロの道のりを北上してさらにカイロへ向かうか、わずかに短い850キロのルートを北東へ進んで紅海沿岸のポート・スーダン市を目指すかのどちらかだった。

国軍と準軍事組織「迅速支援部隊(RSF)」の戦闘が全土に広がっているスーダンでは、どちらの道も危険が伴う。

「移動距離の長さからエジプトは諦めた。子供も高齢者もいる中で、意味がなかった」と、アブデルモニエムさんはBBCの取材で話した。

多くの人々がエジプトを目指しているため、国境で足止めされる懸念もあったという。一家は親族のいるポート・スーダンを目指すことにした。

ポート・スーダンにたどり着くまで26時間かかった。

アブデルモニエムさんによると、「バスの運転手が、どんな危険もおかしたくない、RSFの戦闘員には会いたくないと言って、大回りをしたので、長い時間がかかった」という。

RSFの戦闘員は回避できたものの、数時間ごとに国軍の検問所があった。

「自分たちは民間人だと言う必要があった。国軍は、私たちが家族であり、その中にRSFの戦闘員が隠れてないことを確認したがっていた」

一連の戦闘では3500人以上が負傷し、少なくとも400人が殺害されたとされるが、現実には死者数はもっと多いとみられる。それでもアブデルモニエムさんは、道中では良いこともあったと話す。特に、道路沿いに住んでいる人たちがバスに集まってきて、飲み物やお菓子をくれたり、旅の安全を祈ってくれたりしたのを覚えているという。

「この時期に得た前向きな思い出のひとつだ。そして、私たちの国が直面している戦いや苦しみと、私たちは何の関係もないと思い知らされた」

一家のバスは24日にポート・スーダンにたどりついた。そこは「非常に静か」だったと、アブデルモニエムさんは話す。

「ハルツームとは別の惑星のようだった。ここに問題があるとは思えなかった」

A view of the road between Khartoum and Port Sudan

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画像説明, ハルツームからポート・スーダンへ向かうバスの車窓からの景色
Presentational white space

しかし、アブデルモニエムさんたちの旅はまだ終わらない。アブデルモニエムさんは、向こう数週間、数カ月先には、戦闘がスーダンをさらに大きな混乱に引き込むと考えている。

スーダンはすでに「厳しい」食料や水、医薬品、燃料不足に陥っており、電力や通信へのアクセスも限られていると、国際救済委員会(IRC)のマディハ・ラザさんは話す。

「日用品の価格は、供給不足で大きく上がっている」とラザさんは指摘。人道支援活動も滞っていると述べた。

アブデルモニエムさんは、状況は「さらに深刻になる」とみている。母親を安全な国に連れて行き、スーダンが安全になってから戻ってこようと考えているという。

「難民にはなりたくない。帰ってきたい。なので自分のことは、一時的に退避している状態と呼びたい」

家を離れなければならないことについて尋ねると、アブデルモニエムさんは「経験した中でも最悪の部類に入る気分だ。最悪の敵にも味わってほしくない」と語った。

「いつ帰れるか分からないし、その時にまだ家があるかも分からない。誰にもこんな思いはしてほしくない。ひどい気分で、身がよじれそうだ」

「サバイバルモード」

首都ハルツームに戦闘が集中しているため、多くの住民が避難を選択しているものの、現時点でどれだけの人数かは分からない。

一方で、ハルツームにとどまると決めた人もいるが、これも簡単な決断ではない。

タグリード・アブディンさんは、自宅で戦闘音が聞こえるものの、ハルツームに残ると決めた一人だ。

アブディンさんは25日、とぎれとぎれの電話でBBCの取材に応じたが、途中で家の外から戦闘と爆撃の音が聞こえたため、取材を中断せざるを得なかった。数時間前には停戦が始まっているはずだった。こうした停戦破りは、戦闘開始から4度目だった。

アブディンさんは、外に出るより家にいる方が安全だと感じると言う。外では人々が「襲われ、盗まれ、もっとひどい目に合っている」という話を聞いたり、インターネット上の動画を見たりしたためだ。

また、兵士の遺体が道路に並べられている、略奪が横行しているといった報道も出ている。

「今は電気が通っているので、外に思い切って出るよりは家の方が安心だと感じる」とアブディンさんは話す。だが数日前、近くの集合住宅が戦闘で攻撃されたのを見て、この安心感も揺らいだという。

アブディンさんは家族の暮らしについて、「私たちはサバイバルモードになっている」と説明した。アブディンさんの家は現在も電気と水道が通っている。

「電気がこのまま通ってくれることを願っている」

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Presentational white space

バスの料金は高騰しており、ハルツームを離れるのが困難になっている。

アブディンさんによると、戦闘開始前に20ドルだったバス区間が、今では300ドルになった。また、エジプト国境に行ったとしても、夫や10代の息子の査証(ビザ)への懸念があるという。

「私たちにとっては『荷物をまとめてすぐ逃げる』場面ではなかった。そういうことができた人たちもいたかもしれないが、私たちは違った」

アブディンさんは、戦っている人たちに「民間人を巻き込むな」というメッセージを発信したいと話した。

「何かしらの合意に達したり、外部から圧力があったりする場合は、スーダン国民の命と安全が保障されなくてはならない」